第七話 遊園地へレッツゴー!

 バスで博物館を出て、数分後。

「ついた―――!」

 私は天高く手を上げて、叫んだ。空はちょっと曇りだけど、気分は晴れ晴れ!暑くなる季節だから、曇りがちょうどいいっ。

 今日は、学年校外学習で、遊園地に来ているんだ!

ちょっとだけ遊園地の裏側を見せてもらって、今からは遊べる!

 班のメンバーはさっちゃんに、私をかずねと呼ぶ一太と賢人、そしてタピオカこと武岡浩太たけおかこうたさん。楽しみだなぁ。

 そう言えば歩翔君に

――「三人いないと邪楽は倒せない、常に注意しておけ」

 と言われたんだった。気を引き締めないと!

 一年三組の担任、宇神先生に人数報告をして遊びに向かう。

 すると通りすがりの梛に手を振られた。 周りには見たことが無い鳥がいる。

「さぁ行きましょう」

 タピオカさんが正した声で言う。

「お~、コーヒーカップだ!」

 賢人がコーヒーカップ乗り場に駆け寄る。 

遊園地に来るのは久しぶり。 私はワクワクしながら列に並んだ。

――♩♬♬

 明るい音楽がより心をはずませる。待っている人が少ないからきっと次に乗れる!

 そう思った通りすぐに、コーヒーカップに案内された。楽しみ!

『それではティータイムスタートです!』

――♩♫

 係員さんの声に合わせてコーヒーカップが動き出す。

 うわーっと言いながらグルグル回す。 小学生に戻った気分だ!

――♩♬

 心がリズムに合わせて揺れる。やっぱり音楽は楽しさを引きたてられるねと思った直後。

――♩……ジッ…

 音楽がだんだん消えてきた。

 さっき見たときはこんなこと無かったのに……。

 どうしてだろう?機械の故障とか?だんだん目が回ってきた……。

『ティータイムは終了です!また会いに来てね』

 カチャリとコーヒーカップが動かなくなる。楽しかった……けど頭がクラクラしている。

 私は皆と一緒に歩きだした。


〇┃⌒〇┃⌒


 次に乗ったのはジェットコースター とても速くて思わず叫んじゃった。

 そして今並んでいるアトラクションは観覧車。乗ったことが無い私が提案したんだ。

「乗るのこれで二回目ー」

「ワシも乗ったことある~」

 賢人がおじさん臭く言った。何で自分の事を”ワシ”って呼ぶんだろう?あ、でもすぐに賢人だって分かりやすくなる!作者も助かるね!

 「お次のお客様ー」

「はいっ。お客様でーす!」

 私の声にさっちゃんとタピオカさんが笑いだす。

 何か変なこと言ったかな? まぁいっか。観覧車、楽しみだ――!

 ゴンドラの鍵が閉められ、上に向かって上がっていく。

 空がだんだん近くなってきた。 鳥になった気分だ。

 ジャンプしたくなったけれど、ポスターに『ゴンドラの中で飛び跳ねたりしないでね』と書いてあったので、ギリギリ飛び跳ねなかった。ふぅ、セーフ!

 「よく見ると広いわぁ」

「そうですね」

 私は下を見下ろす。お、思っていたよりも高い!さっき通った道がお菓子ののように細くなっていく。ジェットコースターも豆粒サイズだ!

 フルーツクレープ屋さんも小さくなる。この社会はどこに行ってもフルーツ。私は頭に手を置く。フルーツ嫌いの私が暮らしにくい社会だ。

 ……うん?

 人々がいっぱい集まっている場所がある。 あれは……パレード会場!?

 時計を急いで見る。 二時五十五分!? あと五分しかないよ!

「皆、パレードの時間!」

「えっ!?」

「嘘やん!」

 四人が間抜けな表情になる。

 どうしよう、見たかったマーチング!

 観覧車はあと半周。観覧車は景色もきれいで楽しい。でも、他のアトラクションよりも長い……。私は観覧車が終わる半周をそわそわしながら待った。

 

〇┃⌒〇┃⌒

 

 私は全速力で走り出した。息が切れて、疲れが体の底から湧いてくる。でも、マーチングが見たい!

「わ…わお…ん……」

「待っ………て」

 その声が後ろから聞こえてくる気がするけど、気にしない!つ、着いた―――!

 疲れが足元の陰に溶けて行く。ここからはパレードを楽しもうっ!

『やぁ、こんにちは!』

 遊園地内のキャラクターが歩いてくる。 誰?それよりマーチングが見たい!

 私は期待で胸を弾ませ、パレードを見る。

「怖い、目開けすぎ」

 タピオカさんに怒られた。そんなに怖かった?

 ……そんなことよりマーチング!瞬きを繰り返し、またパレードに向き直る。

 早く来ないかな。パレードに釘付けになり、一歩前に踏み出してしまった。

「すみませーん。この線からは出ないでください」

「ごめんなさい!」

 さっと足をひっこめる。

 「先輩!」

 私を注意した係員さんの方に、新人らしき係員さんが駆けよる。切羽詰まっている。そして、小さな声でつぶやいた。

「マーチング用の楽器がありません!誰かに盗まれてしまったようですっ」

「何!?」

 近くにいた私は係員さんの言葉に息を飲んだ。

 確か……。邪楽の格上シニアは、楽器を消す!

 邪楽の仕業かもしれない。歩翔君と梛に伝えよう!……でもどうやって?

 そう思った時、ブレスレットが緑色に光り出した。

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