第三話 ゆゆゆ、幽霊!?

「皆さん、マイナスとは……」

 小学生の時より難しいなぁ。テストで悪い点数を取らないようにしないと。

 私はフッと廊下を見た。ガラス部分から外の様子は見れるんだ。

 「えっ……!?」

 廊下に一人の少女が立っていた。白くて長い髪の毛が、一段と目立っている。 名前分からないから、白髪少女と呼ぼう。白髪少女はなんで、授業中に廊下にいるんだろう?

 今は、授業開始から二十分。授業中真っ只中なのに。私は首をひねる。

 「おい!符川!話を聞いてたか!?」

 「はいっ。マイナスは負の数、ゼロより小さい数」

 「何だ聞いてたのか」

 ふふふ。私は耳が良い。どんなによそ見していても、言っていることは分かっている。

 でも、しっかり先生の話は聞かないとね。と自分で自分を叱りながらも、もう一度廊下を見た。

 もう、白髪少女はいなくなっていた。お話してみたかったな。


〇┃⌒〇┃⌒


 「じゃね!」

 さっちゃんが私と遊ぶ計画を立て、走り去っていく。

 四字熟語で例えるなら『ちょっと相撲しよう』が似合う!

 ……え? 四字熟語じゃない…。どんな言葉だっけ。

 「ものすごい勢いで進むって意味の…えっと……」

 「猪突猛進のこと?」が正解を教えながら、やってくる。

 頭良いな~。でも「ちょっとすもうしようかな」とほぼ一緒の言葉だよね。惜しい私!

 「梛!校内を探索しようと思ってたんだけど、行かない?」と、何も予定の無い男女二十七人に聞いても誰も賛同してくれなかった計画を提案する。

 「いいよ」

ほっ。さすが親友!

 「なぎ、教室迷いやすいんだよね~」

 梛は自分の事を名前で呼ぶ。それが可愛いと支持を受けている。

 私も名前で呼ぼうかなと思いながら教室を出て実験室のある方向に向かう。

音が聞こえてきた。…………あれ?私、吹奏楽部に入った?

 「ああああ!」

 「どうしたの?」

 「入部届けって期限いつまで!?」

 「き、今日……」

  梛の答を最後まで聞かずに教室へ猪突猛進!引き出しから入部届けを取り出した。良かった、ぐしゃぐしゃじゃない!

 「走ったら先生に怒られて、入部届けどころじゃなくなるよ」

 梛の注意にお礼を言いながら、歩いている風に走れるギリギリのラインをせめて飛び出した。その時の私は「まるで相撲取りのようだった」と、あとで梛が教えてくれた。


 〇┃⌒〇┃⌒


 「良かった~~~~このままだったら、帰宅部だった~~~~~」

 梛がゆっくり歩く。

 ふと前をみると、吹奏楽部副部長の姫香さん!最近会ったら、よく話をしている。駆けだそうと一歩を踏み出した時、姫香さんの隣にいる人に気が付いた。あ…この人、授業中に廊下を歩いていた白髪少女だ!白いふわふわしたブラウスに……鬼のパンツ!?何そのコーデ!?

 「姫香先輩っ」

 「和音ちゃん、と梛さん」

  遠くから声をかけ、すぐさま近づく。

 「こんにちは」

 「こんにちは。梛さん上品だね。きれいな動作」

 「…………っ…。ありがとうございます」

 梛が急に苦しそうな表情をする。どうしたんだろう?

 「……どうしたんですか、黙らないでください先輩。あと、お隣の方も」

 「お隣の方?」 

 梛が話をそらす。

 「お知り合いですか?」と私も続く。

白髪少女ってずっと呼ぶのもあんまり良くない。名前だけでも知りたい! ついでに仲良くもなりたい!心を弾ませて、姫香さんの答えを待つ。

 「隣の方なんていないじゃない。梛さんと和音ちゃんと私だけ。梛さんも面白いわね」

 「えっ!?」

 私は口から驚きの声をこぼした。明らかに白髪少女いるよ?しっかりしただよ?姫香先輩の言葉を聞いても、白髪美女は表情を変えない。背中に寒気が走る 横をみると梛も表情を固まらせていた。

 「す、すみません!予定思いだしたので、戻ります!」

 「な、なな、なぎも急がないと……ごめんなさいっ」

 苦し紛れの言い訳をして、その場から逃げ出した。

できるだけ早く遠くに逃げようと決意して、三秒後。その願いが壊れた。

 「ま、ハアハア、待って……よ……」

 後ろから梛の声。振り返ると、梛はまだ20メートル先の角を曲がったばかりだった。

 そうでした。梛は、とっても運動音痴なんでした。

 梛の元にかけより、私はそろりと角から姫香さんの方を見る。

 すると白髪少女が姫香さんの頭に手を置いて、何やら行っていた。

 「和音ちゃん…ハア……足…」

 嫌な予感しか、しない! そう思いながらも白髪少女の足を見る。やっぱり!

 白髪少女の

 「「ゆゆゆ、幽霊!?」」

 シンクロして、皆に見られた。そのせいで、幽霊がこっちに向かって走ってきている!

 「「ギャァ―――――――!」」

 私は階段を駆け上る。足が遅い梛を気遣う余裕なんてない!

 怖い!嫌だ、ここで呪われるなんて!

 「符川―――」

 後ろから声がする。声の主は数学の先生だった。

 「階段を駆け上がらない!走らない!」

 「ごめんなさい!」

 梛が数秒遅れて、やってくる。梛は運動音痴すぎて、走ってると思われてない!?

 結局昼休みの終わりまで怒られ、昼休みは無くなった。


〇┃⌒〇┃⌒


 土曜日。この出来事をさっちゃんとゆずちゃん話すと、大声で笑われた。

 「ギャハハ!怒られたのは和音だけ!面白い!」

 「幽霊ってホントにいるの!?」

 うう、笑わないで!

 「まあまあ。和音ちゃん元気出して。これ、お菓子」

 梛がそう言ってチョコレートを渡してくれた。

 「あ、うちも!」

 「え?何かくれるの?」

 さっちゃんの声に思わず手を差し出す。

 そして乗せられたお菓子は、大嫌いなフルーツゼリー!

 「イヤ―――――!」

 私はゼリーを床に落とす。気持ち悪い!ゼリーは食べられるけど、フルーツは無理!

 「カップに入ってるやん!嫌なん?」

 「嫌!!」

 さっちゃんが笑っている時に考えることは、良くないことだ!

 「和音は何か持ってきた?」

 「デジタルカメラなら」

 入学祝で買ってもらったデジタルカメラを鞄から出そうとする。でも見当たらない。

 入れたからきっと鞄の奥底にあるはず。

――ドンガラがッシャ―ンッ。

 勢いよく鞄をひっくり返すと、『MY music ファイル』が出て来た。

風にあおられページがめくれると、信じられない状態になっていた。


 「音符が、無い!?」

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