池名柚巳の幸甚

【  5月×日

  こんにちわ!ユズと申します!

 今は高校2年生で、図書委員の冴えないメガネっ子ーみたいな感じです。(笑)

 ちょっとばかりこれをお読みの皆さんに聞いていただきたいんですけども。

 実は…わたくし…

 好きな人が出来ました!!!!!

 と言いますのも、連日お伝えしている様に、同じクラスに「Mジマクン」という。

 美男子がおりまして。

 そのミステリアスな感じにわたくしは日頃から惹かれていたのですが…

 なんとなんと、この度の席替え、わたくしの後ろの席が「Mジマクン」なのです!

 その上、図書室で話す機会がございまして。

 優しい。

 そして物凄ぉく笑顔が素敵。

 …落ちました。

 カッコよすぎじゃ無いですか!!!!!

 という訳で、わたくしユズ、ようやく光ある青春を送ることができそうです。

 え?まだ付き合っても居ないだろって?

 …恋する乙女は偉大なんですよ?

 好きな人が居るというだけでも、恐ろしいまでの活力へと変換できるのです!

 あぁ…これからくり広げられるわたくしの恋物語…

 想像しただけで楽しみです…

 という訳なので。

 続報をお待ちあれ!

                              ユズ     】 

【  5月○日

  こんにちわ、ユズと申します。

 現在高2の図書委員で、冴えないメガネっ子でございます。

 …昨日、あそこまで嬉々としてブログを更新したのですが。

 本日HRにて転入生がやって来まして…。

 「Mジマクン」の隣の席になったのです。

 しかも滅茶苦茶に美少女。

 学校の案内も何故か「Mジマクン」が行くことに。

 しかも戻ってきた2人は…。

 恐ろしいまでに仲良くなってたんです…。

 …誰か殺してくださいぃぃぃぃぃ!

 では。今日は。この辺で。

 続報をお待ちあれ…

                              ユズ     】



「……。」

「……で、心当たりは?M。」

 六月初旬、放課後の教室内。俺、間縞まじま伊織いおりはとある少女の痛ーいブログを読まされていた。

「……これ何処で見つけてきたんだお前。」

 俺は思い切り顔を顰めながら、向かいの席で頬杖を突いてスマホの画面を見せてくるソイツに尋ねた。

「ふふ、ほんっとにたまたま。」

「つーかお前こういうの見るんだな。天野。」

 天野あまの凛子りこ。それが俺の眼前にいるこの馬鹿の名前だ。

「……しましま君?今君凄い失礼なこと考えなかった?」

「いや?」

ぱっと見清楚系のお嬢様みたいな面をしているが、中身は黒々しい一振りの刃物の様なヤバい奴だ。コイツに関わって1ヵ月ちょっとだが、俺は幾度とも無く面倒事に巻き込まれている。気に入らない先生への嫌がらせを俺に擦り付けかけたり、テストの答案を勝手に盗み見た濡れ衣を着せられかけたりと散々だ。最も面倒なのは、コイツが俺の前以外では素を絶対に曝け出さないという点だろう。一度だけ、その理由を尋ねたことがある。

『え?あぁ、そうだね。……しましま君が私に似てるからかな。』

 理解しがたい。誰がこんな狂人と似てるんだよ。

「ねぇ、しましま君。やっぱり失礼なこと考えたよね?」

「いやぁ?」

天野は俺に溜め息を付くと、スマホ画面を自分の方に向けてじっと見た。

「以外にモテるんだね君。」

「んなわけあるか。」

 大真面目な顔をしてとんでもないことを抜かす天野。モテてたら今頃お前となんぞ喋ってねぇよ。

「まぁ、その……心当たりはある。」

「しかないの間違いでしょ?」

「黙れ。」

 俺は、今天野が座っている椅子に貼られた名前シールを見つめる。

池名いけな 柚巳ゆずみ

今年初めて同じクラスになった女子で、肩につくぐらいの黒髪が綺麗に切りそろえられており、眼鏡っ娘の大人しいタイプだ。好きな本のジャンルが似通っていて、それで少し話したことはあるのだが惚れられるようなきっかけは思い出せない。

「……何ニヤついてんだよ。」

「いやぁ、君も真っ当に恋愛したりするんだなぁって。」

 俺は溜め息をつく。コイツと関わり始めてから、溜め息の回数がグンと増えた。

「おい、マジで余計なこと考えんなよ。」

「ふふ、余計な事ってなぁに?」

……はぁぁぁぁぁ。こんの性悪クズめが。

「もしかして、君。私の力を借りてこの子とラブラブランデブーしたいの?」

「やかましいわ。お前ならそれをしかねないって話だ。」

そんな軽口を叩く俺を楽しそうに見る天野。あぁ駄目だな、コイツ目がマジだ。

「くっ、ふははっ!面白そうだからやっちゃおうかな~。」

 コイツの口から「面白そう」とか、「退屈し無さそう」とかいう言葉が出てきた時は、自分の命を最優先に守る。という習慣が俺の中で既に出来上がっている。俺がゴクリと生唾を呑む音が耳に響いた。天野の目が鈍い光を放ちながら細まる。

「まぁ……乞うご期待ってとこだね。」


「はぁ……。」

 俺は溜め息を付きながら夜食のインスタントラーメンを作っていた。辛そうな匂いとチーズの溶ける良い匂いが混ざり合って俺の鼻孔をかすめる。

 ちなみに現在時刻、深夜23:00。俺のクソ姉貴が高校生の時ほざいていた力説へりくつを信じての暴挙だ。

『え?夜中にラーメンは太るぅ?わぁってねぇなぁ伊織ぃ。高校生は何食っても太らねぇんだよ?何、もしかして知らねぇの?』

知らねぇの?じゃねぇだろ馬鹿。テメェが瘦せすぎなだけだろうが、とかツッコミを入れながらコンロの火を消す。湯気がぶわっと上り、家で掛けている眼鏡が曇る。

「いただきます。」

 手鍋のまま机の上に移動させて、菜箸でそのままラーメンを啜る。寮生活とは言えど、古いアパートを改装して造ってあるために全室1人部屋だ。ありがたい。

  ずるっ ずるるっ

 俺が麵を啜る音だけが部屋に響く。この学校、寮生が物凄く少ない。俺が住んでいるのは2階で、俺以外の住民はというと連日遊びに歩いているらしく、ちゃんと顔を見ることは少ない。留年しまくっているという話だから、居なくなるのも時間の問題だと思う。1階には2人ほど住んでいるそうだが、ちゃんと顔を見た事は無い。両者とも今年から住み始めたようだ。見てくれこそ貧相なものの、部屋はリフォームされていて小ぎれいであり、月の家賃も俺がちまちま稼いでいるバイト代でどうにかなる。学生にとってこれ以上の好物件は無いのではと思うほどだ。

「……うめぇ。」

 まぁこれはもともとの癖でもあったのだが、1人暮らしをすると独り言が増える。友達と呼べるような奴も居ない俺だからかもしないが。

(あいつは友達とかいう感じの奴じゃねぇだろ。)

 脳裏に天野の顔がよぎってしまい、思い切りそれを手で払って消す。俺はふと、先ほど見たログを思い出してパソコンを開いた。

「――っと、ユズ。だっけか。」

 全くもってタイピングの速度が上がらない。むしろ落ちているようにも感じる。俺が記憶から呼び起こしたこの単語だけを、俺が暇つぶしでよく漁っているフリーブログサイトで検索した。このサイトは面白く、日記やコラムなどを書いて他の人に見せることができるという代物だ。俺からしてみるとただの黒歴史製造機だが、他人の恥辱を覗き見れるならそんなことはどうだって良い。

「……ヒット。」

 俺は抑揚の無い声で呟いた。「ユズ」というアカウントが1つだけあったのだ。震える手でマウスを操作し、アイコンをクリックする。プロフィール画面にとび、自己紹介文が目に入った瞬間に溜め息が零れる。

【 始めまして!ユズです!現在高2の図書委員でーす♡

  このログは完全に自己満足のために作りましたー!

  基本的に日記です!コメントも大歓迎なので待ってまーす♪ 】

そんな紹介文の上にコテコテの絵文字を交えたアカウント名が書かれていて、

【 ('▽'*)☆彡YUZU☆彡(*'▽') 】

俺は思わず俯いた。頭の中はぐちゃぐちゃしていて、俺の知っている池名柚巳と全く一致しない。とりあえず先程よりもガクガク震える手を持ち上げてマウスを操作し、ログを確認する。時間軸を5月にする。

「……つぅ。」

 俺は文面を流し見してまた俯いた。溜め息が口の隙間から流れる。問題のログがしっかり在るのだ。その日を境に俺に関するログは無いが、明らかに文面が暗い。一番新しい日付、すなわち今日のログをクリックした。

【  6月●日

  どうも、ユズです。 

 何だかとっても気持ちが暗いんです。 

 恋とは恐ろしいですね…

 Mジマクンと転入生さんのあの顔、距離感。 

 ただならぬものを感じます…

 とうとう体調を崩しちゃいました。

 熱も出てるので更新が遅くなるかもしれません…

 あーMジマクンがお見舞いにでも来てくれたら嬉しいのにぃぃぃぃぃ! 

 では、今日はこの辺で。

 続報をお待ちあれぇー

                              ユズ     】

何か、とてつもなく嫌な予感がする。そう思った瞬間テーブルに放っていたスマホが振動した。無料メッセージアプリが通知の受信を知らせてくる。

(……まさかと思うが。)

 俺は震えが収まりかけていた手をゆっくり伸ばしてスマホを手に取る。俺はスマホの画面を確認すると、反射的に画面を机に叩きつけて視界から抹消していた。

―『おめでとう』

―『ラブラブランデブーまっしぐらじゃないか』

「……あんの野郎……。」

 今回天野が何も手を出していないことは百も承知だが、どうもウザい。コイツマジで性悪すぎんだろ。

『頼むから1回死んで来てくれ。』

俺は勢いに任せて天野にメッセージを送る。少々語気がキツいがいつものことだ。

―『嫌だね♪』

そんなメッセージと共にニヤニヤと笑うウサギのスタンプ。俺はスマホを布団に投げつけるとパソコンに向き直る。俺の目はパソコンに移ったログの最後の方の1文に留まった。

「【Mジマクンがお見舞いにでも来てくれたら嬉しいのに】だと……。」

 ゆっくりとスマホに目を向ける。布団の上にはピクリともしない俺の携帯が画面を下にするようにして投げられたままだ。暫くじっと見つめていると、案の定スマホが振動した。

「……クソが。」

 そう喉の奥から絞り出すように呟くと、今日1番深い溜め息を吐いていた。


「えぇっと……、今日は池名さんがお休みみたいだから誰かぁ、手紙届けてくれる人は居ないかなぁ……?」

帰りのHR。俺の頭の中から完全に「池名柚巳」のログの件は消え失せていたが、担任のこの一言によって思い出すことになった。一気に顔から血の気が失せる。

「先生。私、池名さんの家と近いので行きます。」

 天野ぉぉぉぉぉ!!余計な事すんなぁぁぁぁぁ!こんな時に限って真っ先に手ぇ挙げやがったなコイツ……。

「あれぇ、そぉなんだね……。じゃあ天野さん、よろしくねぇ……。」

「はい。分かりました。」

 教壇へと歩み寄り、担任から手紙受け取る。その時一瞬だけ俺の方を見た。

(ほら、やっぱり面白くなった)

とでも言いたげな目でこちらを見る。マジで腹立つなコイツ。怒気を込めて、眉間に皺を寄せて睨み付けてみる。席に戻ってきた天野は小さな声で言った。

「さっさと帰ろうなんて馬鹿な真似、考えちゃいけないよ?」

貰った手紙で口元を隠しながらそう言う天野。隠れてはいるが絶対にニヤニヤ笑っているんだろう。俺はただ面倒そうに口を歪ませて天野から目を逸らした。

 絶対逃げきってやる。


  ピンポーン

 ……いやおかしい、おかしい。

何で俺コイツに捕まってんの?しかも既に家の前。

「……留守かな。」

 いや、ちょっと待ってくれよ。状況が呑めない。あれ、確か俺HR終わったらダッシュで寮に帰ったよな。天野の方1ミリも見ない様にして。

ん?つか、ここ寮だよな。1階だけど。

「ごめんくださーい。池名さーん?」

「……は?」

何言ってんだコイツ。ここは学校の寮。おんぼろ寮。確かに1階の住民は見た事ないけど。ここに池名さんが住んでるってのか?いや、いやいやいや。だったら普通気づくだろ。絶対。おかしいおかしっ

「げほっ、げほっ。は、い。どちら様でしょうか……?」

扉越しに聞き覚えのある声がする。俺はがっくりと肩を落とした。

「あ、こんにちは。池名さん。同じクラスの天野と言います。プリント届けに来ました。それと、間縞です。」

 勝手に俺の名前出すな馬鹿タレ。

「え、天野さん?げほっ、えほっ。それに、間縞くんまで……。げほっ、げほっ。ありがとう、ございます。」

 酷い咳だな。外に居ても鮮明に聞こえてくる。俺は堪らず声をかけた。

「あ、の。池名さん、何か必要な物、とかありますか?」

「へ⁉あ、いやその、えっと……。あ、あり、ます。」

 物凄く上ずった声でそう答える池名さん。え、マジでか。天野の方にゆっくりと顔だけ動かす。天野は目だけでこちらを向いていた。口角が弓の様に吊り上がっている。俺と目が合うと目を細めた。

「えと。げほっ、えほっ、スポドリ、を買ってきて、欲しいです。」

「スポドリね。他には?」

……ん?返答がない。扉に顔を近づけると荒い息遣いが聞こえる。少し間をおいて池名さんが小さな声で言った。

「……励まして、欲しいです。」

 ……!?!?!?!?

俺の頭の中が白くなっていく。天野の方から笑いを押し殺す様な声が聞こえるが、聞こえないフリをする。

「あ、じゃあ、えっと……。れ、連絡先!置いて行くから、後でメッセ送ってよ!」

勢いでそんなことを口走る。池名さんの息遣いが一瞬止まった。

「ほ、んとですか?」

「うん、本当。」

 扉越しではあるが、俺にははっきり分かった。今、池名さんは確かに笑っている。

「ありが、とう。」


―『こんばんわ、』

『あ、こんばんは。』

『体調どうですか?』

―『だいぶ良くなりました、ありがとうございます、』

『そうですか。なら良かった。』

 風呂上がりにスマホを見ると、さっき渡したアカウントにメッセージが来ていた。俺は素早く指を動かして返信を返す。

『ちゃんと物食べてますか?』

―『一応、ゼリーとかを、』

―『スポドリ、ありがとうございます、』

『明日当たり何か作って持っていきますよ。近いですし。』

 何の気なしにそう送ったのだが、かなり時間をおいて返信が返ってきた。

―『大丈夫です、ありがとう、うつしたら悪いですし、』

 まだ少し距離を感じるが別にいいか。と思っていた時に天野からメッセージが届いた。俺は顔を顰めながら通知を開く。送られてきたのは1枚のスクリーンショット画像だった。

(池名さんと天野のトーク画面?)

ズームして内容を読む。俺は最後まで読まずにスマホを机に叩きつけていた。


『体調は大丈夫ですか?』

―『結構良いです、ありがとう、』

『いえいえ、全然』

『私よりも間縞くんにお礼を言ってあげて欲しいですかね』

―『と言いますと、』

『いや、手紙届けたいって言ったのは間縞くんで』

『私は着いて行っただけなので』

―『え、』

『池名さんが心配だってずっと言ってましたよ』

『間縞くん』

―『そう、ですか』

―『なんか嬉しい、』

『それ聞いたら間縞くん喜びますよ』


 何がどうしたら、俺が池名さんを心配しまくる絵面になるんだよ。どうすんだこれ。あの距離感の謎、絶対これだろ。あーもう、あの野郎……。ちゃっかり優等生キャラだし、ふざけんな。

―『あの、間縞くん、』

 池名さん……。俺は通知に触らずにただ画面を眺める。ポンと通知が増えた。

―『私、』

―『間縞くんが好き、でした、』

……あれ、過去形なのか。

―『でも、今私が好きなのは、』

―『天野さんと、間縞くんだから、』

―『お2人、ずっと仲良くいてね、』

―『離脱します、』

……は?


 俺は次の日の朝、爽やかな1日の始まりを迎えた。一睡もせずに。

昨日の出来事を整理すると、やはり裏で天野が糸を引いていたことが発覚した。

『え?池名さん?あぁ、あの子カプに目覚めたらしくてさ。』

(―『今私が好きなのは、』)

『君と私をCPして妄想するのにハマったんだと。』

(―『天野さんと、間縞くんだから、』)

『もしかすると、君に対する恋愛感情はそもそもカプの推しに対する気持ちだったのかもね。』

(―『お2人、ずっと仲良くいてね、』)

『まぁ、何?君と私がキャッキャウフフしてる様に見えてたんじゃ無いかな。』

「おい天野、俺はテメェとキャッキャウフフなんか御免だからな。」

『そこだけ全力否定すること無いでしょ?』

学校への支度をしながら天野と電話をする。天野の口角は恐らく上がりっぱなしなのだろうなと思いつつ、溜め息をつく。

『そうそう、君に見せたいログがあるんだけど……。』

 4,5秒間が空いてから通知が現れる。俺は爪の先でそれをつついて開いた。それはログのスクリーンショット画像。

【  →最近のわたくしの推したちっ…

 こんにちわ!ユズです!

 実は、気づいたんです…

 わたくし、縞々クンが好きなんでは無く、

 縞々クンと転入生さんのカプが好きなんです!

 いやいや、熱でぶっ倒れてよく考えてみたんですね。

 そしたら、わたくしが縞々クンにときめいている時って、

 転入生さんと楽しそうにしている時なんだなぁって。

 ふふ、これだからカプ厨はやめられねぇ(・∀・)ニヤニヤ

 ではでは、続報をお待ちあれっ!

                              ユズ     】

……推し、たち?ということはあれか?池名さんの中で、俺と天野はデキてるっていう感じなのか?いや、絶対に嫌だ。無理だ。思わずスマホを投げるのも忘れてただ呆然と画面を見つめ続ける。

『あれ?おーい、しましまくーん?』

「……天野、お前、池名さんに誤解させてねぇだろうな。」

 静寂が訪れて、画面越しに爆笑する天野の声が聞こえた。

『くっははははっ、あーしましま君。誤解っていうのは何?君は何が何でも私とくっつきたくないと?』

「その通りだ。で、何か吹き込んだのか?正直に吐けこの野郎。」

『ふふ、笑わせないでよー。しましま君。』

 その一言に少しだけ安堵する。制服のネクタイをキュッと締めてスマホに手を伸ばした時に、天野が言った。

『そういや、柚巳ちゃんが同人誌描かせてくれってさ。次の休み空けといてよ?』

……同人誌?

『じゃ、また後でね。』

 そう言って電話が切られる。俺は動けないままだ。……え、同人誌って何。どういう事?頭がグチャグチャする。それから結論が出た。

「天野……殺す……。」

 俺は朝っぱらから物騒なことを無意識に呟きながら、学校へと向かった。

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