第2話風呂でおっさんのことを考える

私は湯船に肩まで浸かりながら、先ほどの男について考えていた。


「落ち着け…。あの男は誰だ?」

記憶を総動員して思い出そうとしたが、まったく見当がつかない。


まず、昨日のことを整理しよう。昨日は会社の先輩にかなり飲まされて、フラフラになって…。ベンチか何かに座って…。その後、誰かに話しかけられ、肩を担がれてどこかに連れて行かれそうになるのを必死で振りほどいた。そこから先は…。


「痛っ!」

左肩を少し動かしただけで、激しい痛みが走った。見ると、肩は赤く腫れていた。

「え、何これ?」

振りほどいたときに転倒した記憶がうっすらと蘇る。そこから先は…。


「ああ、もう!わからないことを考えても仕方がない!とりあえずお風呂から上がったら、あの男に聞けばいい。何かされたら大声を出すなり、警察に連絡すればいいんだ。」

私は顔にお湯をかけ、考えるのをやめた。


そういえば、いつもシャワーで済ませていたから湯船に浸かるのは久しぶりだ…。気持ちいい。


先ほどまでの恐怖が、まるで嘘のように和らいでいく。



お風呂から上がり、脱衣所に出ると、洗濯機の上にタオルがきれいに畳まれて置かれていた。その横には、私が普段着ている高校時代からのヨレヨレのジャージもきれいに畳まれていた。


「え…?何これ、怖い…。あの男が用意したの?」

こんなこと、彼氏にも実家の母親にもしてもらったことがない。


っていうか、なんで私の部屋着がわかるの?ストーカー?


やばい!とりあえずスマホで警察に連絡できるようにしなきゃ!って、スマホ、ベッドに置き忘れてる!


再び強い恐怖感に襲われた。


まずは、着替えて、スマホを確保しよう。そしていつでも警察に連絡できるようにするんだ。昨日何があったかはその後でいい!まずは命を守る行動からだ!


そう自分に言い聞かせ、脱衣所で素早く着替えて居間に向かった。


すると、そこには居間の真ん中にエプロン姿で正座しているごつい男がいた。


「え…?エプロン?」

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