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「幽霊(ホロウ)の作りたかを知っていますか?」

 まるでクッキーやケーキの作りかたでも聞くようにして、ひまわりはいった。

 ジラは真っ白な部屋の中にあった小さな白いテーブルのところにある小さな白い椅子に座ってから、「知らないし、知りたくもない」と言った。

 するとひまわりはくすっと笑ってから、「それを調べるのが、あなたのスパイとしての仕事でしょ?」といった。(……それは、まあその通りだった)

「幽霊を作るためには、まず泥をこねて形を作ります。陶芸家の人たちが壺を作るようにして、ゆっくりと時間をかけて泥をこねます」と空中で泥をこねるような真似をするように手を動かしながらひまわりはいった。

「泥?」顔をしかめてジラはいう。

「はい。『綺麗な泥』と呼ばれているものです。その泥をこねて、あの子たちの形をまず作ります。その形は人の形をしていれば、細部はどんな形でも良いです。自分の好きな顔や好きな体を作ることができます。性別も自由です。でも、人の子供の形をしていなければだめです。そんな風に自分の好きな子供の形をこねます。大人のような大きな人はだめです。子供でないといけません。それが第一段階です」とひまわりはいった。

 ジラは黙ったまま、ひまわりの言葉を聞いている。

「ジラ、あなたならどんな形の子供の幽霊の泥をこねますか?」ひまわりがいう。

 ジラの答えは沈黙だった。ただ怒って吊り上がった瞳をして、ひまわりをにらみつけているだけだった。

「それから、その泥をある程度の期間、ある特殊な環境において保存します。その期間は、そうですね、だいたい半年くらいですかね。二、三ヶ月でも良いですが、半年は保存しておいきたいところです。それくらいあれば泥は充分、その形に馴染むことができます」

 ひまわりは言葉を続ける。

「ジラ。なにか、飲みますか?」

 両手を合わせて、思い出したように、ひまわりは言う。

「いらない」ジラは答える。

「では、私だけ」

 そういって、ひまわりはグランドピアノの椅子から立ち上がると、部屋の隅にあるガラス細工のような繊細で美しい形をしている棚のところに置いてあった薔薇色の液体(なんだか魔女の作った魔法の薬のようだった)の入っているガラスの小瓶を手に取ると、その横にあるガラスのコップの中に瓶のふたをとって、そそいだ。

 そのガラスの小瓶と液体の入ったガラスのコップをもって、ひまわりはグランドピアノの椅子のところに戻ると、小さな白いテーブルの上にそれらを置いて、椅子に座りなおした。

 ひまわりはジラに向かってにっこりと笑ってから、ガラスのコップを持つと、その薔薇色の液体を一口だけ優雅に口にした。

「美味しい」とひまわりは言った。

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