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「二人だけでお話がしたいの。その銀色の月のイヤリングは外してもらえますか?」と自分の右耳を指さしながらひまわりは言った。

「……わかった。いいよ」とジラはいう。

『ジラ。任務中に私を外す(つまり、案内人を失って道に迷う)ことは契約に違反しています。外すことを拒否します』みちびきが言う。

「ごめん。内緒にしておいて」

 右耳の銀色の月の形をしたイヤリングを外しながら、小さく赤い舌を出してジラはいった。

 ひまわりはそっと、その美しい指である場所を指さした。その人差し指の先にはグランドピアノの横に置いてある小さな白いテーブルの上に、とても小さな箱があった。結婚指輪を入れておくような小さくて真っ白な箱だった。

 その白い箱を開けると、その中にジラは右耳から外した銀色のイヤリングをそっと入れてしまい込んだ。

「どうもありがとう」とにっこりと笑ってひまわりはいった。

 それからひまわりは自分の右耳につけていた金色の太陽の形をしたイヤリングを外すとその白い箱の中に入れて、そっと蓋をしめた。 

「ひまわり。私もあなたと二人だけで話がしたいと思っている。二人だけの内緒の話。そのために素直にあなたの言葉に従って契約に違反してまでイヤリングを外した。だからあなたも、もう逃げたり隠れたりしないで、このまま私とちゃんと話をしてくれるかな? 嘘偽りのない本当のあなたの話を」とジラはいった。

「もちろん。いいですよ」とひまわりはいった。

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