第10話:準備完了
◇
俺は、商業地区にてミリアの服を新調し、その足で武器屋までやってきた。
「ちょ、ちょっと派手すぎないですか? 大丈夫ですか? 似合ってますか……?」
新調した服は白のローブなのだが、着替えて店を出た直後からミリアはソワソワしていた。
「うん。めちゃくちゃ可愛いしかっこいいと思う」
「か、可愛い……! そ、そうですか! それなら良かったです……」
頭から湯気が出るんじゃないかというくらい恥じらうミリア。
やれやれ。パーティメンバーが可愛すぎるというのも困ったものだな。
さて、そろそろ店に入るとしよう。
「わっ、武器がいっぱいですね」
「ここは王都の中でも品揃えが良い店らしい。噂通りだな」
店の中は日本の雑貨屋のような感じで、大量の武器が並んでいた。武器種によって並べられているエリアは異なるようで、俺たちは剣が並べられているエリアへ。
「いらっしゃいませ。どのようなものをお求めで?」
「この子が使う剣を。予算は五十万ジュエルで、なるべく良いものを頼む」
「承知しました。お探ししますね」
店員に要望を伝え、探してもらう。
ちなみに、この世界の貨幣価値はおおよそ一円=一ジュエルなので、五十万ジュエルは日本円換算で五十万円ほどということになる。
内定取消のおかげでまとまったお金を持っているのと、奴隷の購入費用が想定していたよりもかなり安く済んだおかげで良い武器が手に入りそうだ。
すると、ミリアが焦った様子で話しかけてきた。
「ご、五十万ってどういうことですか⁉︎」
「ん? ミリアなら最低でもこのくらいの性能はないと勿体ないだろ?」
「もちろん性能は良いほど嬉しいですけど……レインは、私がもし武器を持って逃げたらとかは考えないのですか?」
「え、持ち逃げするのか?」
「し、しませんけど! 例えばの話ですよ」
やれやれ。ミリアはゲームで見ていた通り、優しすぎるようだ。
こんなことを言って自分が得することは何一つないというのに……。
「そのくらいのリスクは織り込んでるし、何より俺はミリアを信頼してる。もし裏切られたとしても、悪いのは信用した俺だからな。ミリアが気にする必要はないよ」
こんなことを気にするより、効率を意識して最善の武器を選んだ方が何倍もいい。
ミリアのポテンシャルをしっかり引き出すことができれば、武器に投資したお金なんてすぐに回収できてしまうだろう。
と、それはともかく。
俺の要望を聞いて剣を探していた店員さんの足が止まった。
「こちらの剣などどうでしょう」
壁に飾られている銀色の剣。値札には、四十八万ジュエルと書かれている。
「手に取っても?」
「もちろんです」
店員さんはガタッと飾られていた剣を取り外し、ミリアに手渡してくれた。
ミリアは剣を持ち上げてみたり、軽く振ってみたりして剣の特性を確かめた。
基本的にどの武器も値段に比例して性能は高くなるが、その剣によって少しずつ特徴が異なる。重さや取り回しの良さなど。自分に合っているかどうかは重要な点だ。
「すごく良いと思います! 癖がないですし、少し重めで手に馴染みます!」
「よし、問題なさそうだな。これで決まりでいいか?」
「はい!」
こうして、無事にミリアの剣を入手することができた。
大半のお金を使い切ってしまったので、早く依頼をこなして稼がないとな。
まだ時刻は十三時……ギリギリいけるな。今から、冒険者ギルドへ行くとしよう。
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