第6話:洗濯
◇
『属性なし』どころか『全属性を使える』ことが分かった時点で、俺はどんなパーティでも入れるのに、当初の予定通りミリアを仲間に加えた理由。
それは、もはやこのポテンシャルがあれば誰かの下につく必要がないからだ。
俺が冒険者になる目的は、憧れと魔物の駆逐。前者は冒険者になった時点で達成するし、後者はクランの一員か独立したパーティにいるかは関係ない。
『属性なし』だと思っていた時とは真逆のベクトルでクランという組織が俺にとって必要なくなったということだ。
しかも、ミリアは原作のゲーム世界では元勇者パーティの一員だったほどに強い冒険者。
こいつが俺に力を貸してくれるなら、戦力的には十分だ。
さて、そろそろここから離れたいのだが——
「ミリア……服が汚れているな。洗濯しておこう」
ミリアは汚い奴隷商店の中にいた時の格好のままなので、全身が泥や埃で汚れてしまっている。
十分に風呂にも入れていないようなので、そっちの面でも清潔にしてやりたい。
服は適当なものを買えばいいのだが、今のままでは服を買いに行く服がないという状況だからな。
さて。
俺は、回復術師なので回復魔法を得意とするが、他の魔法が一切使えないわけではない。
なので——
『
水魔法で泡を発生させ、ミリアの身体を包み込む。
一瞬にして汚れを落とす生活魔法だ。
そして。
『
火魔法と風魔法の組み合わせ。水分を蒸発させつつ、風によりパサパサにならないように調整。
——ということができるというわけだ。
「少しはサッパリしたか?」
「レインすごいです……! こんなに一瞬で綺麗になっちゃいました‼︎」
ミリアは満足してくれているようだ。
「そ、それにしてもレイン……この魔法はどうやったのですか? 水魔法に火魔法に風魔法……三属性扱えないとできないと思うのですが」
そう言えば、まだミリアには俺が全属性を扱えることを説明していなかったな。
この世界では、普通は一つの属性しか扱えないので、理解が難しいのは当然だ。
「俺は、火・水・地・風・聖・闇の六属性全部を使えるんだ」
「ええええええええええっ⁉︎ ほ、本当なんですか⁉︎」
「目の前で見ただろ?」
「そ、それはそうですけど……!」
確かに現実離れした話だが、事実なのでこれ以外に説明のしようがない。
「でも、全属性が使えるほどの回復術師なのに、どうしてこんなところに……? いくらでも強いクランから誘いがありそうです」
「まあ、それは話が長くなるんだが……」
ミリアとは長い付き合いになるはずなので、隠しておく必要もない。
俺は、『黒霧の刃』から内定取消をされたことからの一連の流れを説明したのだった。
「な、なるほどです……。レインもすごく苦労しているのですね」
「まあ、でもある意味……内定取消してくれて助かったよ」
「……? どういうことですか?」
「俺は、ゲーム……夢でこの世界のシナリオを知ってるって言っただろ? だから、分かるんだ。『黒霧の刃』の末路が」
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