8-7 奇跡の鏃
今ここにある
「だいぶヤバいシロモンやな。こんなんどうやって保管しとけばええんや?」
「
「なるほど。それならば
「え!?ちょっと、
どうも話が弓に行かない様なので
「最後まで聞け。この硬鞭は
「つまりね、慧心弓の神気のコピーが硬鞭の中にあるからそれを取り出して、新たな弓に宿らせれば慧心弓の複製弓が作れるかもってことだよ」
言葉の足りない八雲の説明を皓矢が補ったことで、永にも理解ができた。
「すごい!本当ですか!?」
「かつて慧心弓を雨都から借りた時にとった記録によれば、慧心弓はその神気の中に鵺の妖気を取り込んでいたらしい。だからこそ、慧心弓は鵺に対する武器として有効なのだ」
「なるほど。慧心弓のメカニズムとしては、毒には毒を持って制すってことかな。鵺の妖気を神気で
皓矢は嬉々として慧心弓の分析に思いを馳せている。しかし、すぐにハタとなって八雲に問うた。
「ただ、今は、中で妖気と神気の割合が逆になっていませんか?神気が妖気に
「そうだ。
「すげえじゃねえか、永、やったな!」
「う、うん……。でも、そんなことが本当にできるの?」
「問題は、そこだ」
永の不安を肯定するように、八雲は少し顔を曇らせる。そしてまず皓矢が見解を述べた。
「詳しく調べないとはっきりとは言えないけど、現在の硬鞭の中にある慧心弓の神気が少な過ぎる。おそらく、
「でも、妖気と神気を反転させたのは八雲さんですよね?逆の作業をすればいいのでは?」
鈴心の疑問は当然だったが、八雲はさらに難しい顔をしていた。
「確かにそうなのだが、
「あいつ、ほんとに碌でもないことしやがったな……」
永も悔しそうに歯噛みしていた。
「なんとかならんの?」
梢賢も救いを求めて皓矢を見た。皓矢は腕を組んで深く考える。
「硬鞭の中の神気を増幅できたらあるいは──」
「だがどうやって?」
「……」
八雲とともに黙ってしまった皓矢に、突如永が低く笑った。
「ふっふっふ。まだまだだな皓矢」
「急にどうしたハル坊?」
「いつ出そういつ出そう、もしかしてこいつの出番なんてないのかもしれないと思っていたけど、ついに来たね」
「何がだよ?」
とっておきの物をもったいぶるのは永の癖なのだが、蕾生もさすがに焦れた。
そうして永は更に大袈裟な動作でゆっくり桐の箱をポーチから取り出して掲げて見せる。
「ジャーン!この子達の事をお忘れですかあぁ!?」
「──あ」
それを見た皓矢は目を丸くしていた。鈴心も晴れやかな顔になって叫ぶ。
「そうか、
「何!?」
突然の新たな神具の登場に、八雲でさえも驚愕していた。
「そう、僕の可愛い二本の矢!その
「そうか、そいつに慧心弓と同じ力が宿ってるんやな!?」
梢賢も明るい声に戻っていた。永は勢いのままに桐の箱を皓矢に握らせる。
「ね?これ、使えるでしょ?」
「確かに。出来るかもしれない」
箱を開けて鏃を手に取る皓矢の瞳には、強い光が宿っていた。
「ふむ。鏃の神気で奥に隠れている神気を釣り上げることができれば──」
「スポーン!てか?やば、興奮するわ!」
すっかり安心した梢賢はもうふざけていた。
「光明が見えましたね、八雲さん」
「うむ、久々に腕が鳴るな。銀騎の、出来れば手伝ってはくれないか?」
「それはこちらからもお願いしたい所ですよ」
皓矢と八雲が互いに笑いかけながら言うと、鈴心もいっそう安心して声を弾ませた。
「お兄様!」
「バンザーイ!」
「バンザーイ!」
永と梢賢も手を上げて喜んでいる。その様子を蕾生は笑いながら見ていた。
やはり、事態はなんとかなるものだ。それはきっと永がずっと頑張っているからだと思った。
「では早速作業に取り掛かろう」
八雲が硬鞭を作業机に置くと、梢賢は突然大声で止めた。
「あああ、ちょっと待って!」
「どうした?」
「その前にスジ通さな!」
そう言うと、梢賢は硬鞭をひったくって作業場を飛び出した。
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