第9話
一雄は、机の上で常に小説の構想を考えてはいるが、良子に小説のハッピーエンドの事をラインをしてから、その後の事が気にかかって。一雄は仕事の時と、散歩の時にも、スマホを身近に持ったままだ。
(良子ちゃんからラインがないっていう事は、俺が言った小説の結末は、ハッピーエンドになると言った事を、理解してくれたんかな。まっ、俺の小説を、最後まで読んでくれたら、分かる事やけど。けど、ばあちゃんの話しを書いてみて、まさか、それが実際に起こるとは。いくら俺が書いた話しとはいえ、マジで嘘みたいな話しやわ)
そんな事を考えている時、良子からラインが
「一雄さん、ご無沙汰してます。連絡遅れてすみません。一雄さんの小説の結末を読んで、まさか、ハッピーエンドにはならないと思ってましたけど、幼なじみが、私が先輩たちからのいじめを助けてくれて、こんなに幼なじみに勇気があったんだと思うと、心がキュンとしてしまいました。私は、小太郎が一雄さんを噛んで以来、一雄さんをずっと慕っていましたが、・・・すみません」
と。
一雄は、良子とのラインのやり取りに、少しはいい心持ちだったが、そこは大人の対応で
「短いあいだだったけど、小説のヒントにもなったから、良子ちゃんは、剣道と勉強を頑張ってね」
良子は、
「一雄さんと出会って、いい思い出ができたわ。そして、誘拐されそうになった時に、剣道をしてたから犯人をやっつける事が出来たし、そしてそして、幼なじみの守が、あんなに強い男だとは思わなかったんです」
一雄は、そのラインを見て
「ほんとうに良かったね。心から感動しました。これからも良子ちゃんが幸せになってくれる事を、祈ってるね」
と。
良子は、そのラインを見て、目頭が熱くなって、思わずティッシュを手に取った。その良子の行動を、小太郎が尻尾を振って見ている。
瑠美が
「どうなったの、小説の結末は」
良子は、全ては話しはしないが
「一雄さんとは、別れたの。というより私の一方的な気持ちだったんだけど」
「そうなの」
と、瑠美は胸を撫でおろし
「良かったわ。彼氏はやっぱり年相応でないと」
「うん」
次の日の部活の帰り、守が
「良子、一緒に帰らへんか」
と。良子は、しばらく考えて
「うん」
(いちばん身近な所に、大事はひとがいただなんて)
改めて、守の顔を見直した良子だった。
小説は事実より奇なり 赤根好古 @akane_yoshihuru
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