魔王の娘と召喚された使い魔の話

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第1話

 やあ。初めまして。

 僕の名前はリカ。そこにいらっしゃる魔王様の娘だよ。君をここへ召喚したのは僕。ほら、その足元のそれ、魔法陣があるだろう?

 これを使って召喚された者は、僕の命令に従う決まりになっている。従わない場合は、その時点で死んでしまうから、気をつけてね。


 ......理不尽だって、責めないんだね。まだ、状況が飲み込めていないのかな?

 まあいいや、そういうことだから、よろしく頼むよ。

 ......えっ、何? そんなに目をきらきらさせて。まるで産まれたての仔犬みたい。

 うん、僕の名前はリカだよ。.....趣味? そうだね、森でお散歩したり、歌ったりすることかな。魔王の娘らしくないから、やめろと言われているけど。.....特技? ……そうだね、歌は上手いって言われるよ。あとは、魔法かな。これでも魔王の娘だからね。10歳までに上級魔法をすっかり覚えてしまったことなんかは、自慢してもいいんじゃないかな。.....今は何歳かって? 318歳だよ。18にしか見えない? 甘く見られたものだね。

 何?そんなにもじもじして。

 言いたいことがあるなら言ってごらん。

 .....結婚?

 ......え? 結婚してくれって?

 な、何を言い出すの。ちょっと待って、君の手、汗ばんでる。どうしたの。

 え? 一目惚れ......? え?

 君が好みかどうかなんてわからないよ、さっき初めて会ったのに。

 ちょっと待って、大丈夫? だいぶ息が荒いよ? お医者さんを呼んでくる.......いらないって?

 でも。

 君に死なれたりしたら困るんだ。

 あの魔法陣はいちどしか使えないからね。

 ....え? 運命?

 ずいぶん大それた言葉を使うんだね。おかしな子。

 これからの勇者軍との戦いに備えて、勉強しなきゃいけないことがたくさんあるよ。

 さあ、もうお行き。



 こんばんは。

 どうしたの、こんな夜更けに。

 眠れないの?

 おいで、少しだけ話でもしようか。

 勉強の成果が出ているね。君はよく働いてくれているよ。正直、ここまでやってくれるとは思わなかった。助かっているよ。


 .....そうだね、君は前いた世界で、「とらっく」に轢かれて、死んだと思ったらここへ召喚されていた、それは聞いたよ。君は「ひきこもり」で、家族からも煙たがられていたんだよね。それも聞いた。恋をしたことがない? それは初めて聞くね。僕を見て、恋の意味がわかったって? 不思議なことを言うんだね。

 ほらまた、顔を赤くして。

 落ち着いて。

 深呼吸して。

 あのね。

 君のそのピンクの髪は、僕が施した魔法の証。

 君はもうあっちの世界の人間じゃない。

 僕のかわいい使い魔だよ。

 あっちの世界のことは忘れていいんだ。

 わかったね? それじゃ、ゆっくりおやすみ。


 眠った? ……眠ったね。子どもみたい。


 あのね……。

 僕も、恋の意味がわかったよ。

 でも、君が起きている時には言えない。魔王の娘と使い魔が、結ばれていいわけないからね。

 苦しいよ。



 終わり

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