第5話 "惑星裁断神造人間"その力の一端。
……ぶくぶくぶくぶく…俗に言う、魔力切れを起こし水が操れない。
やっべ…少し焦る。
―あれ、沈む速度が遅くなった。
ずぼぼぼ!!!
「ぶがもぐぼばべばば!?」
急に見えない手に掴まれ、海から引き出されて放り出され、そのまま地面に叩きつけられる。
「がばぼっぐギャ」
なんだか固い感触に受け止められて、温もりが頬に触れる。
ってがぶちゃんの胸に抱かれてる!?恥ずかしいけど動けん!
「対ゴーレム戦なら起こしてよ!
私も活躍できるもん!!」
「起きなかったじゃん!!!
でもすまん、カッコつけちゃった…って、さらに増援!?」
周りの物陰からさっきの奴の量産型だろうか、一回り小さくなったシルエットがワラワラと出てくる。
「がぶちゃん、僕は良いからにげッあ"。」
***
ながるを気絶させて、そっと地面に降ろす。
「さぁーて、私は覚えてないけど流は傷付けさせる訳にはいかないんだよ。
壱号機との約束だからね。」
久しぶりの戦闘だ。
擬似演算でしかないはずの、心が昂ぶる。
「…
ひとつひとつ、主への思いを込めて呪を紡ぐ。
ジャガッ!!
その音をトリガーに、戦いが始まる。
「IWS-02"ジブリール"、御奉仕開始!!
『儀装』、『抜刀』。
『
***
「これは酷い…圧倒的な性能差だ。」
怪しい呪いを行う魔術師達が潜むと言われ、気味悪がられ人々の近付かないその区画。
七罪執政官地球執務所の、宮殿を思わせる大広間で円卓を囲んで座る彼らは、剣呑な面持ちで巨大なモニターを見つめる。
モニターには、似非メイド服を着た黒髪の少女がその眼を紅く輝かせ、3メートルはありそうな羽子板に似た大剣を軽々扱う様が映っている。
『次ィ、弾ちゃ~く、今ァ!!!』
そう彼女が声を上げる度、死角から跳ぶ彼女の攻撃に尽く量産型達が打ち倒される。
或る者はその刃で両断され、或る者はその幅広な側面で叩き潰される。
「"傲慢"の、諦めて直接交渉しろよ。
これじゃあまりに無謀だぜ?」
「…ふん、"強欲"貴様は黙っていろ。
おい、あの"くるみ割り人形"を調節したのは誰だ?」
"強欲"と呼ばれた男が答える。
「怠惰と俺だ。
どんな服装にするかで揉めて今のキメラファッションになっちまった。」
袖を切ってブレザーにしたベスト、その中に肩のみメイド服のような形をしたワイシャツを着て、短パンを履く腰はパレオのようなミニスカで覆われ、頭には茨の冠を思わせるヘッドギア。
そして何より目を引くのはその扱う武器。
柄は二股に分かれ下部に刃が付いた分銅のような石突があり、どこか錠前を思わせる。
そして薄刃でありながらも異常に幅広な羽子板のような刀身を持つ大剣。
護攻一体兵装、盾大剣"
「ったくゴツい武器に変な服とは、ムサクルシイ漢にメイドロボなんか造らせたらそーなるわ。」
「うるせぇ、"嫉妬"。
オマエにもお淑やかさなんてねーだろうよ、」
「そーだけどよぉ、」
"強欲"と"嫉妬"2人の執政官が与太話をしていると大扉が開いて、全身を白いパワードスーツに包んだ大男が広間に現れる。
「失礼致します。
"王の目"、"傲慢"殿に報告に参りました!」
「あっれ、極東で窓際族してるマス男じゃん。
やらかして飛ばされた気分はどぉ?」
「きッ、貴様ッ!!」
ガンッ!そこで"傲慢"の執政官が拳を卓に叩きつけ、"強欲"がシラケた顔をして場が静かになる。
「彼がマスドライバー担当だからマス男などとバカなことばかりほざきおって。
"王の目"よ、報告は私の執務室で聴かせて貰う。
もういい、我が師の愚行は私が蹴りを付ける!お前達は散れ!!」
ガンッと扉を蹴り開いて傲慢が王の目とと共に去る。
途端に室内の空気が代わる。
「ったく、最年少執政官サマは気が短くていけねぇ。
称号と本人の性質はカンケー無いがアイツは地で傲慢を行ってるな。」
そこでモニターの映像が一際派手に輝く。
十数体のとっくに弾切れを起こしたであろう量産型達から放たれた炎弾を全て、地に突き立てた"
そして目にも止まらぬ速さの踏み込みと返す刀で残る全ての
"強欲"と呼ばれた男がモニターの電源を切る。
と、同時に"嫉妬"と呼ばれていた女と無言で座っていた"暴食"の男の姿が掻き消える。
「なァ怠惰、俺達が創ったことになってるあアレ。
さっさと先代"強欲執政官"サマになんとかしてもらいてーモンだよなぁ。」
「…あぁ。」
強欲と怠惰、2人の執政官声が他に誰も居なくなった大広間に微かに響いた。
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