第2話 プロのモノローグ、略してプロローグ
ヒトは神となった。
昔なんか大きな戦があって、その最中にヒトは"進化"だか"覚醒"だかして超能力、いわゆる"魔法"を使って世界に干渉できるようになったらしい。
ヒトは神になったなんて大仰に言ったが肉体の脆弱性も思考伝達スピードの限界も昔とは何ら変わっていない。
新人類を超能力者とでも、あるいは魔術師とでも呼べば良かったモノだが、カッコつけちゃった昔のヒトは自分たちを「神人類」、カミサマと呼称した。
そしてそれから幾ばくかの現在、A.S(アフターシンギュラリティ)20XX年。
基本的に死者は出なくなり人口が増え、神人たちはその能力と長い年月で培ったヒトとしての高い技術力を用い宇宙に進出。
居住地が増え、人々(神々)は様々な過去の地球にあった地域を再現した、"
僕が今住んでいるここは、"
国際法で戦略級と認定された魔法は禁じられて、派手なドンパチ魔法戦は起きない一般魔法と呼ばれる便利マジックだけが普及した平和な世界。
人々はそこで、ちょっと便利になった西暦2020年代くらいの生活を送っている。
…はず、だった。
***
「さっさとご飯を出すアルヨ!腹が減って脳機能が著しく低下しにけりに候でござるっ!!!」
あの後、日本語の怪しい自称強盗に家へ戻らされた僕は、脅されながら学校(僕は高3で受験生である)へ体調不良で休む旨を伝え、腹を空かせた怪人スク水ロリに出すためお湯をそそいでカップ麺を用意させられている。
「まだかまだかよまだなんですかぁ!?」
「ごめんなさいあと1分は待って下さいッ!ってかこの下り30秒前もしたッ!!」
昔は3分かかったらしい即席めんの準備時間も日神食品さんの企業努力のおかげで2分で食べられる世の中になった。素晴らしい。
あ、3分経った。
「はいどうぞ出来ました、日神さんのトムヤムクンヌードルですご賞味あれ!!!!」
手渡した瞬間に彼女は目にも止まらぬ速度で割り箸を割ってカップ麺にがっつき始める。
「いただきますなんでせうよずぞぞぞぞ!!辛ーい!すっぱーい!うんまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!!」
ふっ、どうやら強盗犯といえどトムヌーの旨さにやられたようだ。今のうちに通報し
「ご飯食べて元気出たよ、あっちょっと待って『しびれろ』!だから通報待ってよ!」
て、ててて、しびれて身体が動かない。魔法式の演算も集中できない!?
「私はね、メイドゴーレムのがぶり-L。
…メイドゴーレムだと、いかがわしい。
どこで買えるんですか萌えるにも程があります軍曹!!
「『
それが、私なの。」
…ぜんっぜんメイドロボじゃねぇぇぇぇ!!
怖ぇーよ!!物騒すぎる!!
冥土のメイドさんだなんて笑えない!!
「だからね、あと2カ月したら暴走して私は私じゃなくなっちゃうの。
そして私が地球を砕いたら、げんろーいんのおじさんたちの計画が始まるんだって。
それはきっと良くないことなの。
だからそれを止めなくちゃいけない。
だから一矢報いるためにかくまって欲しいんだよ!!うわぁぁん!!」
泣き出してしまった。
いたいけな少女になんてことをさせるつもりだ…元老院…やっぱりテメェらか…。
慰めてやりたいが、しびれたままで動けない。
「あ、ごめんね。『解』。」
「はぁっ、はぁ、どうも…」
一瞬でしびれが取れた。創られたゴーレムってことはそもそも国際法違反の神造人間なんだろうが、魔法適性高すぎでは。さっきから詠唱が速すぎて一度も反応できなかった。
とはいえ泣いてる少女を警戒して放っておくのは気が引ける。
「しっかしそんなペラペラと喋って良い内容なのか?僕ただの一般高校生だぞ?
あ、名前は"
「ぐすっ、え?あなたは湯沸かしkもががっ!?」
急いで黙らせる。
駄目だ、知られてたらしい。
僕の正体を。
「なにするの!?口に出すのは都合悪かった?ごめんね、でもあなたの通り名しか知らなくてできることは知らないの。
げんろーいんの人たちがよくあなたのことを罵ってたから…あなたなんでしょう?
逃亡した戦略級魔法保持者の戦神って。
どんな魔法なの!?見せて欲しいかも!」
ミリタリー好きなのか?僕の二つ名と経歴を聞いて創世魔法を見てみたくなったのかね。
はぁ、ため息を1つ。
そして彼女の両手で握ったままのカップ麺の容器を指さして、告げる。
「もう見せた。」
彼女がポカン、として聞き返す。
「え?」
「だから、もう見せた。」
はぁ、普段使いするには便利だがダサすぎるんだよな。
仕方ない、どんな魔法か教えてあげよう。
「水分子操作。
さっき君にカップ麺すぐ出したでしょ?
要するに、お湯が沸かせる魔法だよ。」
ぽけーっと口を開けたまま5秒固まってから、彼女は言った。
「思ってたのと違う……役立たず…?」
―そう。
それが通称"湯沸かし器"と揶揄される、元老院に反発しテロ行為を働く、とある神人の所持する戦略級魔法。
あまりの威力に普段使いがままならず、戦闘時にも行使できず、湯沸かし程度としてしか使えないが故に湯沸かしと揶揄されるその魔法。
その名も
"
そしてそれを行使する戦神、それが僕。
"神殺しの水龍"
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