第97話 ヒダリオのアイテムショップ
俺はヒダリオが潜伏しているというアイテムショップに入ることにした。
こんな店に入ってなにを企んでいるんだか?
正面の扉が開く。
できるだけ静かに入ろう。
背中は壁に沿わせる。背後を取られたくないからな。
中は薄暗い。
でも、明るさはある。
窓がないからな。光苔のランプが店内の壁に設置されていて、あれが光源になっているんだ。
独特の香の臭いがする。
気の根っこが主成分なのか。妙に土臭い。
商品棚にはモンスターの骨や、毛皮。瓶詰めの薬草などが並ぶ。
カウンターは無人。
誰もいない……。というか店内に生物の気配がないな。
外にはエルフたちが待機して、ヒダリオの動向を監視している。
店内にいるのは間違いないんだがな。
動き回るのはまずいか……。
「
俺は右手から眼球を出して飛ばした。
脳内に眼球が見た映像が映し出される。
やはり、店内は無人らしい。
『ふぅむ。下に降りる階段が見えるのじゃ。どうやら、奥の部屋に地下室の入り口があるらしいの』
「なるほど。地下か」
しかし、降りるのはもっと建物の構造を理解してからだな。
『妙じゃな。暖炉で火を焚いた形跡がない。煙突の内部が綺麗すぎる』
「専用通路にしていたんだ」
『なぜじゃ? 正面の入り口があるじゃろうに??』
「
『用意周到じゃな。一体、地下でなにをやっておるんじゃろう?』
あんまり考えたくはないな。
どう考えても恐ろしげな発想になる。
チェスラが連れ去れられて4時間以上は経ってるだろう。
こんな場所でなにをしているんだ?
俺は奥の部屋に侵入した。
「台所か……」
使われている形跡がない。生活臭がしないな。
やはり、ヒダリオが潜伏するのに用意されていた場所なんだ。
そうなると妙だな。
鍵もかけずに不用心すぎる。
部屋に隅には扉があって、少し隙間が空いている。そこから地下に降りる階段が見えるが、その先は紫色の霧に覆われていてよく見えない。
『
つまり、階段を降りて、俺がその扉を開けなければいけないのか。
「よし、行くか」
『は、入るのかえ!?』
「当然だろ。進まなくちゃ、チェスラは助けられない」
『明らかに罠じゃぞ』
「わかってる。でも、行かなくちゃなにもわからないさ」
『うう……』
「なんだ? 怖いのか?」
『は!? そ、そんなわけなかろう!』
こういう薄暗い所は女の子は苦手なんだよな。
デストラってたまに女の子してるんだ。アリンロッテに似てるよ。
『ま、魔神に怖いものなどない!』
と、右手はガチガチと震えていた。
まぁ、俺だって緊張してるさ。
怖くないといったら嘘になる。
密室で、視界が悪いとな。
なにが飛び出して来るかわからない恐怖がある。
扉を開けると、紫色の霧がブワァアアっと噴き出た。
『き、気味が悪い霧じゃなぁ』
この霧からは若干の魔力を感じるな。
『感知系スキルなら入ればバレてしまうぞ?』
「だな」
『やはり罠じゃよ』
「うん。入ろう」
『正気か!?』
俺は階段を降りた。
地下室の扉までは10メートルといった所か。
それまではなにもないはず。
5メートルくらい進んだ時だろうか。
「な、なんだ!?」
『な、なんじゃこの感覚!?』
あ、足が重い……。
て、手が上がらない。
体が……動かないぞ!?
『なぜじゃ!?
「これはスキル効果だ」
『むぅう! 体の動きを止めるスキルか!』
「……いや」
この状態。
止まってるんじゃない。
「ゆっくり動いているんだ」
『なんじゃと!?』
「体の動作がスローになっているんだ」
紫色の霧の影響か!?
空気が体に絡みつく感じ。泥沼にはまったような。
例えるなら、透明のスライムが体にまとわりつく感じだ。
突然の声。
「やはり、来たか」
この声。
「ヒダリオか!?」
「ふん。ここに来るのはおまえくらいだと思っていたよ。ライト・バンジャンス」
間違いない。
この声はヒダリオだ。
この霧で感知していたな。
動きがスローになっているのもその影響か!?
「ククク。動けないだろう。
『ライト! 罠じゃ!』
簡単に侵入できたのは、このスローにさせる能力があったからか。
バタン……!
地下の扉が開く。
瞬間。走る音。
ダダダダダッ!
向かって来てる!
かなり速い!
ヒダリオの姿は霧でよく見えない。だが、凄まじい殺気は伝わる。
刹那。
霧を切り裂いて見えたのは剣の切先だった。
「死になよ!」
それは一直線に、俺の胸を貫く──。
カキン………!!
「なに!? 折れた!?」
剣は俺の胸に当たって折れて飛んでいってしまう。
「んぐ!? どうして!?」
残念だったな。
防御策は
自分の体を石化させて防御した。
「ちぃ! 石化の魔法か!」
動けなくても防御は可能。
しかも。
異空間から剣と槍が飛び出す。
俺の武器は空を飛べるからな。
石化していても攻撃だってできるんだ。
突き刺せ。
「なに!?」
2本の攻撃は空を切って壁を突き刺した。
ほぉ、瞬時に後ろに下がったか。
流石だな。並の冒険者ならこの速さについてこれない。今頃、俺の武器で串刺しになっているだろう。
「ライト・バンジャンス。どこまでも目障りな!」
「姫は返してもらう」
あと、おまえの右腕は必ず斬り落とす。
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