第91話 大剣使いのゴルドン③【復讐10人目】

 俺はゴルドンと一対一で戦うことになった。


 俺の胸には真っ赤な魔法陣が張り付いている。

 これは 血の禁止魔技ブラッディアーツ

 おかげで魔神の力は封印されて使えなくなった。


 デストラは苦しそうだ。同時に不安にもなっている。

 なにせ、自分の命がかかっているからな。

 俺が殺されればこいつも死ぬことになる。


『ラ、ライト……。わ、わらわの力が使えぬのじゃぞ。せ、せめて……この陣を消す方法を……模索するのじゃ』


「いや。これでいいんだ」


『な、なんじゃと!?』


 魔神の力が使えないなら。

 3年前のあの頃と同じ条件だよ。


 俺はゴルドンにテストをされて、その時に勝ったんだ。

 

「あの時の条件は、俺が受け太刀をして、そのまま剣を持っていられたら勝ちだったけどさ。今回はそうじゃない。俺はおまえの右腕を斬り落とすことが勝利条件だ。おまえはそれを阻止すればいい」


「ハハハ! ふざけた条件を提示しよって。では、私がおまえを殺してもいいということだな?」


「……ああ」


「フン……。随分と余裕を見せるじゃないか。魔神の力は封印され、手に持っている剣は一般兵士の使うなまくらだ。そんな条件で私に勝てるとでも思っているのか? 言っておくがな。3年前のテストの時。私は本気ではなかったのだぞ。私が本気を出せば貴様を殺していたからだ。魔神討伐の前に貴様を殺しては意味がない。だから、手を抜いていたというわけさ」


「そうか……。だったら、今回は本気でやれるな」


「後悔させてやるよ」


 審判はハーマン・ヤルゼバラス。自警団の第3支部長だ。


「それでは、これより、ライトとゴルドンの決闘を始める! 勝敗はライトの希望を考慮して私が判定させてもらう!」


 4万人の兵士が注目する中。俺とゴルドンの決闘が始まった。


「一撃で決めてやるよ! 死ねライトォオオ!!」


 大剣の一閃。

 躱すのは距離をとった方がいい。

 斬撃の風圧は思いの他、防御側の体勢を崩すからな。


ブゥウウウウウウン!!


 うん。

 やはり、すさまじい風圧だ。


「ぬ! 躱しおったか!?」


 いや、前に出る予備動作だと思ってくれ。


 地面を後ろ足で蹴って奴の懐に入る。


「なに!?」


「よぉ」


 俺は剣の柄の先端を、ゴルドンの腹にぶっ込んだ。


ドスッ!!


「ぐぉおおッ!」


「安心しろよ。腹を斬ったりしないからさ」


「こ、このぉ……。ざ、雑魚のくせに!」


 ゴルドンは躍起になって大剣を振る。


 やれやれ。

 隙だらけだよ。


 俺は剣身で奴の手首を打った。


ガンッ!


「うぐッ!」


 思わず大剣から手を離してボロッと落とす。


「おいおい。武器を手放すなんて、王都の騎士団長としてあるまじき行為じゃないか?」


 ゴルドンはすかさず大剣を拾って、横一閃に斬り込んだ。


ブゥン!


 まぁ、大振りだからな。

 当たる予兆さえもないよ。


 俺はバックステップでそれを躱した。


「………ヌググ。い、いいだろう。見せてやるよ。ハァアアアアアアアアアアアア……!!」


 力を大剣に集中させている……。斬撃スキルか。

 この位置に撃つから……。走ろうか。






大地破壊強撃斬アースデストロイスラッシュ!」




 

 俺は駆け足で斬撃波動の外側に移動した。


ブォオオオオオオオオオオオンッ!!


 さすがに、こんななまくらで受け太刀をしたら斬られてしまう。いや、全身の体が粉微塵になるかもな。

 それほどまでに強烈な技だ。


 奴の斬撃は大地をえぐる。


 とはいえ、俺は波動の外側だからな。

 風圧だけを堪えればなんとでもなるさ。


 さて、


「後ろをとったぞ」


「なに!? バカな!?  加速アクセルの魔法は使えないはずなのに」


「ああ、だから、攻撃方向を事前に予測してさ。思い切り走ったんだ」


 んじゃ、俺の攻撃だ。


「よっと」


「ぬ!?」


カキン!


 あ、大剣で防御されたか。


 じゃあ、3連続の斬り込みだ。


「ぬおおッ!」


カキンカキンカキン。


 ふむ。防ぐか。

 

「がんばるね」


 んじゃ、もっと連続で。


「ぬぉおおおおおおおッ!!」


カキンカキンカキンカキンカキンカキン!!


「バ、バカな!? こ、こいつは魔神の力が使えないはずなのに!? ど、どうして!?」


「毎日さ。少しずつ。地道に努力していたんだ。トサホークに教えてもらったりしてな」


キンキンキンキンキンキンキンキンッ!!


「グォオオオオオオオオオオオオオオオ!!」


「3年前のテストの時さ」


 俺はおまえの大剣を払い飛ばしたけどさ。


「ふざけるなぁああああ!! 私が貴様ごときに負けるもんかぁああああああああ!!」


 ああ、その大振り。

 残念だったな。




右 腕 が ガ ラ 空 き だ よ !




 俺の剣はゴルドンの右腕を斬り落とした。




ザクン……!!




「ギャアアアアアアアアアアアアアッ!!」




 よく聞け、ゴルドン。


「3年前のテストの時な。手を抜いていたのはお前だけじゃないのさ」


「アググググググググ……!!」


 あの時はな。


「俺も手を抜いていたんだよ」


「わ、私の腕がぁあああ………!!」


「本気でやったら……。おまえを殺してしまうからな」


 パーティーの荷物持ちがリーダーを殺しては本末転倒なのさ。

 だから、手を抜いた。


 ハーマンは手を挙げた。


「勝負あり! 勝者、ライト・バンジャンス!!」


 場はざわめいた。


「すげぇえ……」

「騎士団長に勝っちまったぞ?」

「ほ、本当に魔神の力が封印されているのか?」

「魔神の力が封印されているから、素の実力で勝ったということか」

「し、信じられん……」

「つ、強い……」


 お……?

 胸の魔法陣が崩壊して剥がれていく。

 術者の腕が切断されたから 血の禁止魔技ブラッディアーツが解除されたのか。


『うむ。気分爽快じゃな』



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