第74話 聖騎士ジャスティ④【復讐9人目】

 ジャスティは真っ赤な聖剣を構えた。


「ククク。聖剣 薔薇女神の剣ローズデアは、僕の正義の心に感銘を受けてね。僕たちは契約を交わし、晴れて聖騎士の称号を得たのさ」


 こんな奴のどこに正義を感じたのかは謎だな。


 俺は剣を抜いた。


「おまえと戦うとはなんだか感慨深いな。牙の中でも、おまえは飛び抜けて活躍していた。G級冒険者の俺からすれば遠い存在だったよ」


「ふん。当然だろ。僕はエリートなんだ。荷物持ちの雑魚冒険者とは違うのさ。僕が3年前と同じだと思うなよ。あの頃よりは遥かに強くなっている」


 確かにそうかもな。

 剣の構え方が以前より隙がない。


「魔神もろとも殺してやる! 死ね!!」


 さて、このなまくらでどこまでやれますかね。


カキンッ!


 受け太刀をすると、俺の剣は簡単に折れてしまった。


 ああ、やっぱり無理か。

 聖剣と普通の剣じゃ格が違いすぎるな。


「ヒャハハハ! 武器がなくなったなぁああああ! さぁ、どうするライトォオオオ!?」


 こうなると素手でもいいんだがな。

 魔法やスキルを駆使して戦うことになるか。

 しかし、それは味気ないよな。ジャスティは3年前より腕を上げてるんだもんな。

 剣技での勝負はこいつの望むところだろう。


 俺は亜空間から槍を取り出した。


「じゃあ、これでやろうか」


「ほぉ……。 魔神聖石槍グングニルか」


 魔神の愛槍。

 石化能力を自由に扱う伝説の武器さ。


「最強なのは、僕の 薔薇女神の剣ローズデアなのさぁああああ!!」


 聖剣の一閃。


 よいしょっと。


ガキィイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!


 うん。

 防御できますな。


「く!」


「斬れないみたいだな」


「得意げな顔しやがってぇええええええ!! 死ね死ね死ね──」


 それは聖剣の連撃。

 

 まぁ、全部受けるけどもさ。


「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!」


 いや、何回言うんだよ。


カンキンカンキンキンキンキンッ!!


 剣を受ける接触音が訓練場に響き渡る。


「おいエリート。いつまでも攻撃が当たらないな」


「ふ、ふざけるなぁああああああああああッ!」


 それはこっちのセリフなんだよ。

 友情とか正義とかさ。こいつが言うと本当にくだらない。


「僕は聖騎士なんだ! こんな雑魚の荷物持ちには負けない!!」


「はいはい。そこ隙だらけだぞ」


 俺は槍の石突でジャスティの腹を突いた。


ドンッ!


「ゴホォオッ!」


 奴は吹っ飛びついでに距離を取った。


「はぁ……はぁ……。ざ、雑魚の癖になかなかやるじゃないか。だ、だったら見せてやるよ……」


 ジャスティは精神を集中して魔力を溜める。それを聖剣に宿した。

 瞬間、薔薇の花びらが周囲に舞う。


「僕の一撃は正義の斬撃。 薔薇が舞う正義の一撃ローズジャスティスディカピテイト!!」


 真っ赤な斬撃が俺に向かって発射される。


 ふむ。

 斬撃スキルですか。

 だったら、こっちは魔法で対抗しよう。

 高速移動魔法。


加速アクセル!」


ギュゥウウンッ!!


 俺は斬撃を避けてジャスティの右側面に移動した。


「はい。うんじゃ。復讐決行で」


 狙いは聖剣を持っている右手。

 いや、その上部かな。


 えい!


 槍の一突き。


 それはジャスティの右腕を貫いた。


ズバッ!!


 普通の槍だったら刺さるくらいなんだけどさ。 魔神聖石槍グングニルレベルともなると一突きで腕を切断することくらいは簡単なんだよな。

 切断というか、骨の破裂というかだけど──。


「ぎゃぁあああああああッ!!」


 おお、綺麗に切断されたな。


「3年前……。俺はおまえたちに裏切られて腕を斬り落とされたんだ。だから、同じように右腕を斬ってやった。今、どんな気持ちだ?」


 奴の右腕からは鮮血がダラダラと流れ落ちる。


「あぐぅうううううう……!!」


「あの時……。おまえは笑っていたな。俺が助けを求めて泣き叫んでいるのをさ。笑いながら見ていたんだ。……なにが友情だよ。クソ野郎」


「うううううう………!!」


 さぁ、バトンタッチだな。


「デストラ。あとは任せた」


『ホホホ! わらわの出番じゃなぁああああ、聖騎士よぉおおおお』


 彼女は右手から魔神の美少女へと変貌する。


『3年前。わらわ 血の禁止魔技ブラッディアーツで手も足も出なくなった時……。お主はわらわの目を短剣で貫いて笑っておったな』


 突然。

 脳内にデストラのイメージが浮かび上がる。

 それはジャスティが短剣でデストラの目を貫いている映像だった。


『ヒャハハハ! 一度でいいからさ。こうやって可愛い女の子の顔をめちゃくちゃにしたかったんだよねぇえ!』


 酷ぇえええ……。

 デストラには超自己再生能力があるんだがな。その威力は 血の禁止魔技ブラッディアーツによって半分以下にさせられている。

 再生するにも相当な魔力を使うんだ。そんな彼女の目に短剣を突き刺すかよ。悪趣味にもほどがあるな。




『聖騎士よ。あの時の恨み……。忘れておらんぞ』




 そういってニヤリと笑った。


 ああ、自業自得だな。

 俺は完全にノータッチだ。


『目の次は胸じゃったな。おまえは嬉々としてわらわの乳房を抉り取っておった。その後は股か。短剣を突き刺して、部位をくり抜いて遊ぶ。本当に良い趣味をしておる』


「ち、ちが……違うんだよ。き、君は再生能力があるからさ。その再生力がどれほどのものか興味が湧いたんだよ」


『再生はしても痛みはあるのじゃぞ。あれは激痛だったわい。その証拠に顔を歪めて、大声で叫んでおったじゃろう?』


「は、ははは……。た、多少はやりすぎたと思っているよ。は、反省しているよ」


『ふむ。では、体で証明してもらおうかの』


 デストラは 魔神聖石槍グングニルで奴の股間を貫いた。


グサッ!


「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」


 ああ、これは痛いな。



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