第72話 聖騎士ジャスティ②【復讐9人目】
〜〜ライト視点〜〜
俺はジャスティのことを思い出していた。
3年前。
こいつは俺に友情について教えてくれた。
『ライト。僕たちは仲間なんだ。仲間には友情があってね。僕たちは友情の力で結ばれているんだよ』
はっきり言ってちょっと胡散臭い。
しかし、意外にも、こいつは優しかった。
モンスターのバトルの時は、俺が傷つかないように守ってくれたりさ。
なにかと助けてくれたのを覚えている。
『友情』という言葉に心を打たれたわけではないんだけどれど、なんというか、心地いいものはあった。
でも結局、俺が魔神封印の切り札だったから、あんな態度だったんだろうけどさ。
こいつの友情とは一体なんだったのだろうか?
俺はジャスティを木属性の蔦で捕縛していた。
その横には彼の部下である訓練兵たちがいる。彼らもジャスティと同じように蔦でグルグル巻きにして動けない。
全員の睡眠魔法を解除すると、みんなは不安げな様子を見せる。
まぁ、そりゃそうか。ほとんど詰んだ状態だからな。このまま木属性で体を縛り上げれば瞬時に全身の骨はボロボロ。血反吐を吐いて死ぬことになる。
それにこいつらの両腕は動かないからな。首を斬り飛ばすことだって簡単だ。まぁ、こんな状態になったら顔は青ざめるわな。
さて、自己紹介といきましょうか。
「みんな目を覚ましたようだな。ジャスティは俺のことを知っているけどさ。おまえたちは知らないだろ?」
兵士たちはブルブルと震えるだけ。
会話にならないから続けよう。
「俺の名はライト・バンジャンス。おまえたちが上司の命令で躍起になって探している人物さ」
どよめきが起こる。
どうやら、俺は人気者らしい。
「俺は極悪人の指名手配だ。英雄である天光の牙を裏切った不届き者。俺が捕まれば殺されるだろう。でもさ。逆をいえば、俺がおまえたちを殺すということにもなるよな?」
「「「 !? 」」」
「だってそうだろ? 俺は殺されようとしているんだぞ? ってことは、俺がおまえたちを殺しても文句言えないよな?」
「「「 ううう…… 」」」
兵士たちは涙目になっていた。
ブルブルと震えて自分の死を悟る。
「まぁ、安心して聞いてくれ。殺すならとっくに殺しているからさ。ズックの盗賊団知ってる? デーモンスター。構成員は108人もいるんだけどさ。あいつらを抹殺したのは俺なんだ」
兵士たちは震え上がっていた。
「まぁ、急にそんなことを言われても信じられないよな? ちょっと証拠を見せるな」
俺は剣を抜き。
ブゥウウウン! っと空振りした。
すると、その斬撃は訓練場の壁を破壊する。
「ひぃいいい……!!」
「す、すげぇ……」
「マジか……」
「か、空振りで……」
「し、信じられん……」
「お、終わった……」
ふむ。
「まぁ、素の攻撃力はこんな感じ。あと、魔法なんだけどさ」
と、上空に大きな火球を出現させた。
「あ、これ。
「「「 ひ、ひぃいいいいいいい……!! 」」」
爆発させればこんな場所は一撃で消滅だろう。
「あ、大丈夫。くどいけど、殺すならもうやってるからさ」
と、火球を消滅させた。
「俺の実力はわかってくれたかな?」
兵士たちはコクンコクンと頷く。
うんうん。理解力が高くて嬉しいな。
「で! なんで、俺が天光の牙の裏切り者になってるかって話なんだけどさ」
「お、おまえたち聞くんじゃない!! 奴の話は嘘だ! 僕を信じろ!!」
うるさいなぁ。
「
「あぐっ!」
うん。ジャスティには、ちょっと黙っていてもらおうか。
「俺は魔封紅血族って特殊な一族でさ。その血は魔神の力を封じることができるらしい。天光の牙は、その血に目をつけてね。俺の右腕を斬り落としてさ。生き血を使って
「ブ、
「お! 君は博識だな! 正解!!」
とはいえ、全員が半信半疑って感じか。
「まぁ、急に言われても信じられないよな。でもさ。おかしいと思わない? 一国を滅ぼして来た魔神デストラだよ? そんな魔神を、たった12人のA級冒険者で倒せると思う??」
「し、しかし……。牙の面々は実力者ばかりです」
「んーーーー。じゃあさ。魔神が討伐されていなかった、としたらどうする?」
「そ、そんな……。王城には魔神の首が保管されております。英雄である牙たちは魔神の首を斬り落としたのです」
突然、俺の右手がタコのようにウニョウニョと動く。それは瞬く間に美少女の姿へと変貌した。
『それは
「「「 !? 」」」
『
兵士たちは半信半疑だ。
まぁ、魔神がこんな可愛い女の子だとは思わんわな。
俺も初めてデストラを見た時は驚いたもんだよ。
『やれやれ。
デストラは槍の
すると、訓練場は石に変わり始める。
「「「 ひぃいいいいい! 石化だぁあああ!! 」」」
それは凍っていく湖のように、ジワジワと、デストラを中心に石化していく。
やがて、訓練場の壁一面を石化で覆うと、その力は兵士の足元も石にしていった。
「ぎゃああああああああ!」
「俺の足が石にぃいいいい!!」
「ひぃいいいいいいいいい!!」
「助けてでぇええええええ!!」
下半身が完全に石に変わったころ。
デストラはもう一度、トン! と槍の石突で地面を叩く。
すると、瞬時にして石化は解除。パラパラと砂になって消滅した。
『
「奴隷の件は忘れてくれ。こいつは単なる右手だからさ」
『うなーー!
俺はデストラを右手に戻した。
「まぁ、こんな風に、俺は魔神を右手にしているんだ。どうやら、魔封紅血族の血が魔神の力を抑えて魂在融合をさせてくれたようだな」
「「「 ……………… 」」」
「世間がこのことを知ったらどうなる? 天光の牙は違法魔法を使い、魔神は生存していた。天光の牙が躍起になって俺を殺そうとするのは当然だと思わないか?」
「し、信じられん……」
「本当か?」
「しかし、力は本物だったぞ」
「ううむ……」
「とても嘘とは思えんが……」
俺は兵士たちの木属性魔法を解いた。
「え!?」
「どうして!?」
「なに!?」
「なぜ!?」
まぁ、混乱するのも無理はない。
だが、こいつらには罪はないんだ。
結局、俺と同じ。
「おまえたちも牙の連中に利用されていたんだよ」
「「「 !? 」」」
「要するに、そこにいるジャスティにな」
さて、
「ゲームをしようか」
「「「 !? 」」」
「簡単なルールさ。条件は2つだけ。1つ、俺を倒す。そうすれば王都の英雄になれるかもしれないな。もちろん、向かって来た者は殺す。一切の容赦はしない」
「「「 ひぃえぇ…… 」」」
「最後の2つ目は、逃げる、だ」
「「「 に、逃げる!? 」」」
「そ。逃げる。逃げた者は殺さない」
「「「 ………………… 」」」
「まぁ、そう怪しむなって。さっきも言ったけどさ。おまえたちも俺と同じなんだって。結局、ジャスティに騙されていたんだよ。俺たちは……いや、王都民は、牙の連中に騙された被害者なんだよ」
「「「 ………………… 」」」
さて、こいつの言い訳でも聞いてやるか。
パチン!
指を鳴らすと、ジャスティにかけられていた
「みんな騙されるんじゃない! こいつが言っていたことは全部、嘘だ!! こいつは極悪人だ! 全部虚言!! 嘘だらけ!! 100パーセント作り話!! 僕のいうことを信じるんだ! 僕が正義だ!!」
はいはい。
「んじゃ、ゲームスタートだ」
選択肢は2つ。
俺に戦いを挑むか、逃げるか?
さぁ、どうする?
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