第3章 復讐の決着
第70話 ライトの恋愛相談
〜〜ライト視点〜〜
シスターペリーヌの教会では、変装したチェスラ姫が泣きながら焼きたてのパイを食べていた。
「あううう。このアプールパイ、美味しいですってばぁあああ。あううう」
この子が姫だなんて意外だよな。
変装してるせいか、なんか喋り方が独特だ。
しかし、お腹が満腹になると涙は止まってみんなに頭を下げ始めた。
「皆様。こんな美味しいパイをご馳走してくださってありがとうございますってば」
孤児たちはそんな彼女を慰める。
「お姉ちゃん。辛いことがあってもさ。この教会はシスターペリーヌがいるしね。いつでも相談に来ていいんだよ。ハツミお姉ちゃんもいるしね。まぁ、ハツミお姉ちゃんはちょっと、おっちょこちょいだけどね」
「おっちょこちょいは余計っす。もうパイを焼いてあげないっすよ!」
「ええ、それは困るってよぉ!」
「「「 あはははは! 」」」
チェスラも笑っていた。
「シスターペリーヌ。ここは素晴らしい場所ですね。孤児が伸び伸びと育っています」
「チェスエラさん……。落ち着くとなんだか別人のようになりますね」
「え? あ、そ、そんなことないですってば! い、一般論を述べただけです。私は彼氏の相談に来た一般人ですってば」
「こんな場所で悩み事を言ってしまってのいいのですか?」
「全然、構わないですってば。シスターの知り合いなら私の相談を聞いて欲しいですってば」
そんなわけで、彼女はペラペラと自分の悩み事を語り始めた。
「私は村娘なんですけどね。ある金持ちの息子と婚約したんですよ──」
あ、これは嘘ね。
彼女は王室の姫君だから、金持ちってのは貴族のことだろう。
「──その人がどうにも合わなくて……。なんだか怖くて……。何を考えているかわからなくて会話ができないんですよ」
恋愛相談か。
要するに、彼氏がよくわからない。なんか怖いから会話できない。ってのが悩みらしい。
さて、そんな時はどうするのか?
ここでは2人が回答者になるよな。シスターペリーヌとハツミだ。
まぁ、彼女たちは美少女だし、男からはモテるだろうからな、それなりには相談に乗れるだろう。
しかし、2人は俺の顔をジッと見つめていた。
「なに? なんか顔についてる?」
「
「そうですね。私もそういうのはわかりません。修道女の修行は恋愛禁止でしたからね」
「え? だ、だからなに?」
「ミギエちゃんは美少女ですもん。たしか、150歳でしたっけ? それだけ生きていれば色々あったっしょ?」
「それは興味ありますね。ミギエさんの恋愛話。もし良かったら、チェスエラさんの悩みを聞いてあげてもらえませんか?」
「……………」
童貞にそれ聞く?
突然、俺の右手が俺の耳にピタッとくっついた。
ボソボソと話す。
『
いやいや。
だから、童貞だってば。
好きな人としか、そういう関係にならない、と貫いて来てるんだよ。
しかし、みんなは俺のことをキラキラした目で見つめていた。
右手のデストラさえもキラキラした目で見つめている。
えええ……。
これ、回答せんといけないパターン?
美少女エルフのミギエに化けている弊害か……。
ええい、なら言ってやるよ。
「ビシっと言うことかな」
適当だが……。
一同は目を瞬かした。
「ビシッとっすか?」
「そ。ビシッとね。なにごとも下手に出ていると舐められるからね。だからビシッと言ってやるんだよ。『何考えてるの?』ってね」
シスターは手を叩く。
「毅然とした態度を示すわけですね!」
あ、うん。まぁ、そういうことにしておこう。
しかし、チェスラは両手を握って震えていた。
「な、なるほどです! 毅然とした態度ですってば! 私、なんだか勇気が湧いて来ましたわ!」
……うん。結果オーライかな。
「流石ミギエちゃんっす。恋愛マスターっすね」
「ミギエさん、すごいです。私では到底、出てこなかった回答です!」
は、ははは……。
「ミギエさん。ありがとうございますってば。このご恩は一生忘れませんわ」
「大袈裟だな」
「そんなことありませんわ。ミギエさんは恋愛経験が豊富なお姉様って感じがしまっすてば」
いや、童貞です。
そんなわけでお茶会は終わった。
チェスラは笑顔で帰っていく。
そういえば彼女の彼氏がわからなかったな。
ちょっと聞いてみるか。
エルフシステム始動。
『誰か、チェスラ姫の婚約者を知っている者はいないか?』
『……申し訳ありません。誰も知らないようです』
やっぱりか。
王城にはエルフシステムのエルフが侵入していないから、城内のことはわからないんだ。
チャスラの婚約者か……。公式に発表されていないところを見ると王室だけの内情っぽいけど。
王城にエルフを就職させてもいいがな。
エルフの国エンフィールのことを知りたいゴルドンからすれば、格好のネタであるのは間違いないんだ。
エルフを危険に晒さないためにも、王城にエルフを近づけることはできないな。
そうなると、俺が王城に潜入して調べてもいいがな。
その前にやることをやっておこうか。
天光の牙は残り4人。
その内の1人をやる。
『ライトよ。今夜、
「……はぁ? いきなりなんだよ?」
『もう下手には出ぬぞ! 抱け! 抱くのじゃ!!』
「断る」
『んなーー! ビシッと言うたのに〜〜!』
早速実行してるのか……。
『結構、恥ずかしかったんじゃぞ!
「知らん」
『んなーー! ライトの意地悪ぅ!』
☆
〜〜三人称視点〜〜
そこは王都の自警団の練習場だった。
その中では、自警団の兵士たちが汗を流しながら剣の素振りをしている。
自警団長である聖騎士ジャスティは力強く手を叩いた。
「みんな、がんばってぇ。友情だよ友情ぉ! 友情パワーで強くなるからね。素振り1万回追加だよ!」
この時、彼は気がついていなかった。
練習場の門番をしていた見張り兵が、睡眠魔法によって眠らされていたことを。
出入門の前には黒ずくめの男が1人立つ。その手には見張り兵が所持していたであろう目覚め草を持つ。
右手を開くと、目覚め草はパラパラと風に飛ばされて行った。
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