第60話 ライトとデストラのデート
デストラがよくわからんことを言い出した。
『
「なんで労う必要があるんだよ? 睡眠は十分にとっているだろうが」
『んもう。鈍い奴じゃなぁ。ライトはいつも気を張っておるではないか。たまには気晴らしが必要なのじゃ!
「俺は別に疲れてないけどな」
『まぁそういわずに。たまにはゆっくりと休日を過ごすのも悪くなかろう』
「…………」
こいつ……。
もしかして気を遣っているのかな?
トサホークの一件。
俺はずいぶんと怒っていたからな。
あんなに怒りを見せたのは初めてだったかもしれない。
あんな姿を見せたから、こいつなりに気を遣って……と、なるのは考えすぎかな?
『
「デート?」
俺の右手は魔神の少女へと変貌する。
『ほれ、どうじゃ?』
その格好は町娘が着ている純白のワンピースだった。
王都の女の子が着ている服を覚えたのかな?
なんというか清楚系……。
『えへへ。こういう格好。……好きじゃろ?』
う……。
悔しいが好きだ。
なんで俺の好みを知っているんだ?
まぁいい、
「もしかして並んで歩くのか?」
『当然じゃろうが。デートなんじゃから』
「王都に行くならエルフの少女、ミギエになるのがいっか」
『おい。そこはミギトじゃろうが』
「なんで?」
『
「魂在融合して右手になっているからな」
『そんなことが世間にバレては大変じゃろうが』
「まぁそうだな」
『じゃったらぁ。こうじゃっ!』
ガバッ!
と、俺の右腕を覆い隠すように抱きしめる。
「おいおい」
『ふふふ。これなら2人が繋がっておることがバレんじゃろ?』
まぁ、確かに。
プニプニ……。
胸が柔らかい。
『人間でいえば恋人同士ってやつじゃのぉ。ヌフフ。ミギエではおかしいのじゃ』
「うーーむ。しかし、ミギトはエルフだぞ?」
『
「しかし、魔神の姿はまずいんじゃないか?」
『魔神がこんなライト好みの清楚な格好をしておるか?』
「……まぁ、そうか。……え? 俺好みってなんだよ?」
『ふはは! まぁいいじゃろう! さぁ、王都の市場へレッツゴーなのじゃ!』
俺は、仕方なくデストラのいうとおりにすることにした。
まぁ、王都を散策するのは天光の牙の動向を見張るには打ってつけだからな。
ブラブラ歩いて、牙の悪業を世間に知らしめる方法でも考えればいっか。
しかし、落ち着かないな。
魔神デストラと腕を組んで王都の市場を歩くなんてさ。
できれば目立ちたくはないよな。
「うわぁ。素敵なカップルねぇ」
「美男美女だわぁ」
「あの子、めちゃくちゃ可愛いな」
「いいなぁ……。あんな可愛い子連れてぇ」
「クソ。俺もエルフに生まれれば」
「あんなにくっついて……くぅ」
「エルフの男の子、かっこいいわぁ……」
「はぁ〜〜。絵になるカップルだ。ため息出るな」
「あの子、可愛すぎだろ」
「おっぱいデカ……」
「眩しいぜ」
「エロ可愛い……」
なんか目立っている。
ミギトはイケメンだからな。
それに、デストラだって、黙っていれば絶世の美少女なんだ。
こりゃ、目立つのは当然か……。
「おいライ……、じゃなかったミギト! 肉の串焼きがあるのじゃ! 買うのじゃ!」
「はいはい」
買った串焼きは1本だった。
2本買えばいいのに……。
「はい。あーーん♡」
デストラは俺に向かって串焼きを食べさせてくれた。
結局、これがやりたかったんだろう。
「モグモグ」
「ふふふ。美味しい?」
「ん。まぁまぁだな」
「んもう。
……楽しそうでなにより。
「あーー! ミギト君だぁあああ!!」
げ……!
それはツインテールの僧侶の少女。
以前、クエストを一緒にしたことがある女の子。
僧侶のファンナだ。
「え!? ちょ、え!? ミ、ミギト君。その人は彼女さんですか!?」
ああ、一番会いたくない人間に会ってしまった……。
僧侶のファンナは大きな瞳をパチクリとさせていた。
「え!? そ、その可愛い女の子は……。ミ、ミギト君の彼女さんですか!?」
デストラは大きく息を吸って、
「よく聞け女。
俺は急いで口を塞いだ。
「えーーと。彼女は妹なんだ。ははは」
「んなーー! なんじゃそりゃーー!
うぉおおい!
俺は急いでデストラに耳打ちをする。
「バカ! なんでミギトが結婚している設定なんだよ! ギルドでは1人暮らしで通っているんだぞ!」
「だって、そっちの方がいいじゃろうが!」
「根拠がないだろうが!」
「作ればいいじゃろうが!!」
「アホ! 妹がエンフィールから来たって設定にした方が面倒は少ないだろが!」
「うううう。不本意なのじゃ。では、せめて姉の設定にならぬか?」
「ダメだ。もう妹と言ってしまったからな」
「うううむ」
「とにかく、合わせろ! いいな!?」
「うううう。い、妹か……」
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