第47話 占い師ベリベーラ③【復讐7人目】
〜〜ベリベーラ視点〜〜
い、痛い……。
右腕を斬られた。
「あううう……」
痙攣する
ク、クソが!
童貞のシスコン野郎の癖に
同じパーティーだった時のことを思い出すわ。
あんたは、ジロジロと
このむっつりスケベが!
それでいて
本当に情けない。頭の中は女のことでいっぱいの癖に!
ある日、誰かが彼を娼館に誘った。でも、ライトはこう言って断った。
『好きな人と、そういうことやりたいからさ……』
バッカじゃないの。
童貞なんか、娼婦と経験して捨てりゃあいいのよ。
その癖、なにかと『妹が、アリンロッテが』と、妹大好き発言ばかり。
おまえみたいな情けない男に誰が惚れんだよぉ。
見た目は平均点。でも、内面はシスコンで夢見る童貞。
G級冒険者の荷物持ち。権力も金もない。見た目は冴えない安物装備。
ふん! 情けない。
むっつりスケベの童貞シスコン男。本当にしょうもない野郎だわ。
あんたみたいな男に、
魔道具は『魔力封じのタロット』。
これは、対象の体に貼り付けるだけで魔力を封じることができる魔法のカードよ。
この魔道具を使えば、ライトの魔法を封じることが可能になる。
そして最後は、この薬瓶。
ククク。これは『超毒薬』。
触れるだけで体の肉を溶かす。
3年前の魔神デストラの討伐で使っていた毒液よりも、更に改良を加えた特別品さ。
魔力を封じれば魔法壁は使えない。
そこで『超毒薬』を使えば、肉を溶かして骨だけにすることができるのよ。
『おい占い師の女。
くっ。ライトの右腕が実体化している。
魔神デストラ……。
美しい見た目をしているじゃない。
若くて、ピチピチで……。
ふん! もう一度、溶かしてやるわよ。
おまえみたいな化け物が、
「あううううう……! 許してぇええええ!! どうか許してくださぁあああああい!」
まずは油断させる。だから、徹底的に謝罪するのよ。
このカードをデストラの体に貼り付けることができれば魔力を封じることが可能だわ。
この切断された右腕を回復させるのは、こいつらを骨にした後なのよ。
デストラは手の中に炎を燃やしていた。
『火炎魔法でジワジワと燃やしてやろうか? そうすれば
「ひぃいいいいいい! そんなぁあああ! どうかそれだけはぁあああああああ!!」
さぁ、ジワジワと近づくわよぉ。
「土下座をします! 土下座をしますから許してくださいぃいいいいいい!!」
『ふぅむ。その程度で
と、その四肢をライトの体に絡める。
「まぁ、俺の復讐は終わったからな。あとはおまえの判断に任すよ」
『こやつの顔を重点的に燃やしてやろうかのぉ? それとも大きな胸を抉り取ってやろうか?』
「ひぃいいいいいいいいいいいい! ご勘弁をぉおおおおおおお!! この通りです! どうかどうかぁあああああ!!」
と、何度も額を床に付ける。
ククク。油断させながら、さりげなく、体を近づけてやるわ。
さぁ、もう少し距離を縮めるわよぉ。
ライトを殺せばゴルドンさんに認められるわ。王城の関係者で金持ちの貴族でもいれば紹介してもらえるかもしれない。
『素敵な人との出会いあり』
ククク。
「どうかぁああああ! どうかお許しをぉおおおおおおおお!!」
あと、少し……。
ククク。見てなさいライト。
「これだけ反省してるなら許してやれば?」
『こやつは、
「酷いことするよな」
『じゃろぉ!
「まぁ、そこはノーコメントだけどな」
『んなーー!
「は? そんなこと今聞くことか?」
『今、聞きたいのじゃ!』
「ノーコメント」
『んもう! ライトの意地悪ぅうう!』
バカがぁあああ!!
イチャイチャして油断しやがってぇえ!!
このチャンス、もらったぁあああああああああああ!!
「なんだ、これ?」
「ギャハハハ! それは『魔力封じのタロット』よ!!
「へぇ。んじゃ、魔法が使えなくなるわけか」
「アハハハ! 油断したわねぇ!! これで魔法壁は使えない!!」
「魔神デストラが地に落ちたわね。こんな、むっつりスケベの童貞シスコン男のどこがいいのよ!! この超毒液を喰らぇええええええええええええ──って、あれ!?」
と、気がつけば眼前には誰もいない。
どこに消えたライト!?
「へぇ。これが超毒液」
う、後ろだと!?
それに超毒液が入った小瓶が奪われている!
あの一瞬で、小瓶を奪って後ろに回ったのか!?
「魔法なんて使わなくてもな。おまえからアイテムを奪って後ろに回るくらいは簡単だよ。身体能力の基本スペックが魔神クラスなんだからさ」
そ、そんな……!
このぉおお〜〜、
「むっつりスケベの童貞シスコン男の癖にぃいいいいいいいいいいい!!」
『ライトの良さがわからんとはな……占い師の女よ。
と、小瓶の蓋を開けて、その毒液を
「ぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああッ!!」
皮膚がぁあああああ!
肉が溶けるぅうううううううううう!!
『千年生きた
ああ……!
と、溶けていくぅううううううううう……!!
ジュワワアァアアアア……!!
☆
〜〜ライト視点〜〜
「お! 魔力封じのタロットが剥がれたぞ」
『この女が死んだから効果がなくなったんじゃろう』
やれやれ。
土下座して謝っていれば命は助かったかもしれないのにさ。
俺の足元には、ドロドロに溶けて骨になったベリベーラが横たわる。
哀れな女だ。
これで7人目。
天光の牙は残り5人。
「さて……」
と、眠っているハツミに目をやる。
彼女は職を探してこの娼館に来てしまったんだよな。
俺は彼女を抱きかかえた。
『どこに連れていくのじゃ?』
「……………」
『今日会ったばかりの女じゃぞ。放っておけば良かろう』
「そういうわけにもいかないさ。彼女が職を失ったのは、俺がグシェムンに復讐をしたからだ。就職先くらいは面倒みてやろうと思う」
『まったく。優しい男じゃのぉ』
「そんなんじゃないさ……」
牙への復讐は俺のエゴだからな。
巻き込まれた彼女は被害者の1人なんだ。
「ファイヤーボール」
俺は娼館に火を放った。
この場所を無くしておくのも俺の責任だよな。
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