第44話 違法な娼館に潜入する
〜〜ライト視点〜〜
さて、今回の復讐は?
実は目星がついてます。
シスターペリーヌの経営している孤児院の真ん前に、大きな館が建設されることになったんだけどさ。
その館の営業形態が問題なんだよなぁ。
女ばっかの酒場っていう体裁なんだけどもな。
結局、それは登記上のもんでさ。女が体で男を接待する場所。
要するに娼館なんだわ。
孤児たちが住んでる真ん前にだぜ?
ちょっと異常だよな。
んで、調べてみたらビンゴだった。
娼館の主人は女占い師、ベリベーラ。
こいつは天光の牙のメンバーだ。
見た目がかなり色っぽくてさ。
メンバーの中ではダントツの美貌を誇っていたな。
担当する役割は中々に独特で、薬の調合や鑑定魔法でアイテムの価値を調べていたな。
他にも、ダンジョンで飲み水を探したり、土の中に埋まっている素材を見つけたりさ。
占い師、って職業でも色々と活躍していたよ。
性格は高飛車で外見一番のルッキズム。
彼女にしてみれば、荷物持ちだった俺は冴えない男の筆頭格だったらしい。
なので、いつも俺のことは小馬鹿にしていたな。それでも、俺は仲間だと思っていたし、彼女も回復薬をくれたりしてさ。
それなりに良好な関係だったんだ。俺が妹想いなのも知っている。アリンロッテのために薬を調合してくれたこともあった。
なのにさ。結局、その優しさは、俺の血を魔神討伐で使うためのものだったんだ。
今でも思い出すよ。
俺が腕を斬り落とされたあの日。
ポーションを求めている俺に、満面の笑みを見せる彼女の顔をな。
ペリーヌの孤児院は、亡きボルボボン卿が残した福祉施設なんだけどもさ。
その成り行きに不満を持っている連中が結構いるわけなんだ。
税金を投入して建設された児童福祉施設だからね。『無駄な経費』だなんて、とんでも発言をする輩が少なからずいるわけだ。
よって、色々と嫌がらせを受けているらしい。
従業員を募集しても、王城のスパイみたいな変な人が来たり、暴力的な荒くれ者が来たりね。
人を雇うことすらままならない状況なんだ。
この建設途中の建物もその嫌がらせの一環というわけ。
ったく、碌な大人がおらんな。
王都の運営には大いに疑問が残るよ。
俺はエルフの女に姿を変えていた。
歳の頃は160歳といったところ。
鏡を見ると、中々に可愛い少女である。
『ふほ! ライトよ。エルフの姿も悪くないぞ』
と、デストラは魔神の姿に戻って、その四肢を俺の体に絡めた。
「どういう意味だよ?」
『初夜を迎えるのに、男も女もないということじゃよ。
「おい。胸を触るな淫乱処女。これはそういうんじゃねぇよ」
『潜入捜査ならばミギトのままでもよかろう?』
「娼館はまだ建設途中で運営はしていないんだ。今は人材募集中。なら、それなりの見た目を持ったエルフの女なら簡単に入れるよな」
俺は求人広告のビラを左手で取り出した。
『高収入……。若い女なら誰でもできる仕事……。ほぉ。お主は娼婦になるのかえ? だったらライトの処女は
「なんでそうなるんだよ。あくまでも潜入が目的だっての」
『なるほどの。求人で来たエルフの女が『腕斬り』という筋書きか。あの占い師の女が油断しそうじゃわい』
「ふふふ。あん時の恨みは忘れてねぇよ」
『
「お礼はしっかりと返さないとな」
『同感じゃ』
建物の入り口には女ばかりの列ができていた。
いずれも求人広告を見て集まった者ばかりだ。
その外見は様々で、明らかに意味がわかっている水商売風の女から、農作業の延長で作業服で来ている意味のわかっていない女まで、多種多様だった。
求人広告には売春のことは載ってないからな。
高収入、酒、占い、異性との会話。なんてキーワードである程度はわかるんだがな。
明らかにわかっていない女もいるようだ。
とはいえ。
面接では合格する者と不合格の者がハッキリと分かれていて、例え、農作業服の女でも、外見の良い者は合格にされていた。
おそらく、上手くそそのかして娼婦に仕立てる算段だろう。高給を盾にすればそういう不条理もまかり通ってしまうのが現実だ。
どちらにせよ、この流れなら大丈夫だろう。
俺はおそらく合格だ。
このエンフィールのエルフ。ミギエの姿ならな。
俺が列に並んでいると、横の女がソワソワと不安そうに震えていた。
「ふはぁ……。緊張するっす」
よく見ると爆乳だ。
緊張して震えているだけで、胸の肉がプルプル震えている。
目鼻立ちは整っていて、いわゆる美少女。
彼女レベルなら絶対に合格だな。
その女は俺を見て目を瞬いた。
「可愛いっすねぇ。エルフさんは別格って感じっす」
妙な喋り方だ。
しかし、この女、どこかで……。
この爆乳、そして顎のホクロ。
「あ!」
思わず声を出してしまう。
「ど、どうしたっすか?
「あ、いや。なんでもない……」
思い出した。
この女。商人のグシェムンが雇っていたメイドだ。
俺が奴の右腕を斬り落とした時、他の従者は全員
この女だけ、魔法のかかりが弱かったんだ。目が覚めて、主人のグシェムンを助けるかと思ったら、もう一回眠りについたんだ。
『ざまぁみろっす。……ふふふ』って言葉。今でも覚えているや。
「
なるほど。
没落した貴族に人を雇う余裕はないのか。
グシェムンは俺がやったからな。彼女が職を失った責任の一端は俺にもあるな。
「俺……。あ、いや……私はミギエだ」
「
「ああ、いいぞ」
「えへへ。なんかミギエちゃんって話しやすいっす。
俺とハツミは世間話をすることになった。
俺は適当にエンフィールの出身であることを話す。基本的に全部作り話だ。
彼女は明るくて感じのいい子だった。まぁ若干、素直すぎて世間知らずって感じはするがな。
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