第38話 眼帯のナイレウス②【復讐6人目】
〜〜ナイレウス視点〜〜
ついている。
まさか、エルフの国エンフィールから依頼があるとはな。
今、エンフィールと王都との貿易は破談が続いている。その内部調査と、仲を取り持つことができれば、僕の価値は確実に上がるだろう。
今は、ヒダリオが婚約した時期だからね。
王都が財政難だと、ヒダリオの結婚は破談する。わざわざ伯爵の息子を王子にさせる意味はないからな。
天光の牙の躍進には、ヒダリオの結婚が絶対だ。
そのためにも、財源になり得るエンフィールとの関係が打って付けなのさ。
あそこには金が発掘される鉱山がある。王都の財政を支えるためにも、なんとしてもエンフィールとの仲を取り持ちたい。
さて、担当する冒険者だが、打ってつけが1人いるな──。
「え? 僕がギルマスとクエストに参加するんですか?」
エルフのミギト。
こいつは使える冒険者だ。
なにせ、うちでは登録したばかりのG級冒険者。依頼料が最も安い。にも関わらず、その実力は100匹のゴブリンを倒し、ゴブリンボスまで倒したというからな。しかも、エンフィール出身というオマケ付き。こいつの為に発生したクエスト依頼といっても過言ではないだろう。
「しかし、僕が役に立つのでしょうか? なにせ、僕はまだ登録したてのG級冒険者ですからね」
「なぁに、仕事といっても簡単さ。王都で作ったポーションをエンフィールに運ぶだけの簡単な内容。君には荷物を運ぶ手伝いと、エンフィール周辺の道案内をして欲しいんだ」
「なるほど。戦闘じゃないんですね。何人くらいで行くのでしょうか?」
「君と僕。2人だけだね」
「え!? ギ、ギルマスと2人だけですか!?」
「安心してくれたまえ。僕はS級冒険者だ。実力でいえば君より遥かに上。荷物の護衛なら完璧に遂行できるよ。それに、君だって腕が立つしね。僕たちなら簡単なクエストさ。2人だけなのは、冒険者を投入する人件費を抑えておきたいだけさ。2人いれば十分にできる内容だと思う」
まぁ、これは建前だ。
本当はもう少し人手が欲しいんだけどね。エンフィールの内部調査はボク1人でやりたい。仲間が増えると動けなくなるからな。
天光の牙がエンフィールを狙っているなんてことは他人に知られたくないのさ。
「うーーん。2人かぁ」
「不安かい? 報酬は弾むよ。100万コズンでどうだい?」
「そ、そんなにくれるのですか? じゃ、じゃあやってみようかな」
「うん。じゃあ決まりだ」
ククク。
たかだか100万コズンで王都を支配できるのなら安いもんさ。
G級冒険者ならば、飛びつくほどの高額報酬だ。
今回の件。大剣使いのゴルドンさんに報告したら、前報酬として1000万コズンも貰ってしまった。
エンフィールの内部情報を仕入れることができれば、追加でもう1000万コズンも貰える。
それと、強力な魔道具、
簡単な仕事だよ。なんとしてもエンフィールの情報を手に入れてやる。
「じゃあ、マルシェさんのパーティーも参加させてもらっていいですか?」
なんだと!?
赤髪の剣士マルシェ。
たしか彼女は、ゴブリンボスが出たこの前のクエストでパーティーリーダーをしていた者だな。
C級冒険者の雑魚だ。ハッキリ言って邪魔だな。
「待ちたまえよ。話しを聞いていなかったのかい? このクエストは人件費削減の意味があるんだよ。余計な出費は避けたいんだ」
「ええ。ですから、僕がもらう100万コズンをメンバーに分配したいと思います。5人で分けても1人、20万コズンですからね。C級冒険者なら十分な報酬になりますよ。それに、彼女たちは気の良い人たちです。荷物の運搬が楽になりますよ」
「う、うぅむ……」
ちぃいい。
高い報酬が裏目に出たか。
まぁいい。
ミギトからエンフィールの内情を聞き出すのは道中の会話からと、2人きりになってからだな。
マルシェたちは口封じに殺してしまうか。
ククク。強いモンスターに襲われたことにすれば、クエストの事故扱いになるさ。
大事なのはエンフィールの内情を知ることだ。
バカな奴め。
君のせいで犠牲者が増えてしまうよ。
マルシェたちが死ぬのは君のせいさ、ミギト。
☆
〜〜ライト視点〜〜
ちょっろーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
エンフィールからギルドに出すクエスト依頼とか、あるわけねぇじゃん。
あそこは、王城の差し金であるズックの盗賊団が襲来したんだ。そのせいで滅びかけたんだからな。
いわば敵国だ。表面上はまだ友好国という関係だがな。ズックの件はとっくにエンフィールにはバレてんだよ。
そんな国の中にあるギルドに、エンフィールがクエスト依頼なんか出すわけないだろ。
このクエストは、俺の指示でエンフィールの女王ノーラから依頼を出してもらったんだよ。
目的はナイレウスに復讐をするためだ。エンフィールの情報が欲しい天光の牙なら絶対に食いついてくる状況だと思った。案の定、速攻で食いついてきたな。
バカな魚だ。撒き餌にくらいついたことにも気がつかないなんてな。
たっぷりと料理してやるよ。
道中ならば、いくらでも2人きりになれるだろうからな。
マルシェさんたちを誘ったのは、アリバイ工作だ。
ナイレウスになにかあれば、ギルド内で俺が疑われてしまうからな。
どうせ奴のことだ。邪魔者のマルシェさんたちを殺害しよう考えているだろうけどさ。そうはいくか。彼女たちには指一本触れさせないよ。俺の無実を証明してくれる貴重な存在なんだからな。
ナイレウスが大剣使いのゴルドンと通通なのは知っている。
この件が通っているのは当然の成り行きだろう。
だが、それも計算通り。
いわば、これは戦線布告。
ギルドの冒険者に疑惑の人物がいるというな。
怯えて待ってろ。
1人ずつだ。
確実にな。
おまえたちの右腕を斬り落としてやるよ。
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