私のお眼鏡にかなってみよ
私の買い物のハードルは高い。いや、高くなった。
捨て活を始めて、ものを手放すことの大変さを実感するにつれ、買い物に対する目が厳しくなった。手放すことでものを減らせないなら、ものを増やさないようにするしかない。簡単に手放せないとなれば、当然迎え入れることも簡単であってよいはずがない。
安いからという理由でむやみに買えば満足のいかないものが増えていくだけだ。簡単に手放せない自分を知るからこそ、買うときの目は厳しくなった。
突然だが、私は今、財布が欲しい。今、というか、ずっと欲しいと思っている。
欲しいと思っているのは、三つ折りの小さな財布だ。小銭入れは外側にあるといい。畳んだまま、小銭を出せるのが便利だからだ。ブランドものでなくてもいいが、デザインは気に入ったものがいい。長く使うものだから。キャッシュレスの波で財布を持たない人もいると言うが、私は財布は使いたい。でも、バッグの中で場所をくわない小さなもので十分だ。
そんなことを思いながら、早数年。買おうと思えるものには出会えていない。
もともとは、二つ折りの財布を使っていた。長財布ではないとはいっても、これがバッグの中で幅を利かせている。時代はキャッシュレス。ほとんどバッグから出さない財布はパンパン。財布の意味とは。
そこで、財布を小さくしようと思い立った。免許証と数枚のカードが入るミニ財布。探したが、気に入ったものは見つからない。小さな財布への欲求は増すばかりだった。
そこで白羽の矢が立ったのが、今使っている三つ折りのミニ財布である。この財布、買ったものでも何でもなく、私が所有していたものだ。
いつかのファッション誌の付録である。例によって、いつか使うかもしれない、かわいいし、などと捨てずに取っていたのだ。
かつて気に入って使っていた二つ折りの財布だが、バッグの中で幅を利かせている状態がもう我慢ならない。気に入ったミニ財布が見つかるまで待てない。試しにこの付録のミニ財布を使ってみようではないか。
この財布を使ってみて使いにくければ、やはり二つ折りの財布にすればいい。実験的な気持ちもあった。
いざ取り入れてみると、三つ折り財布は非常によかった。何せ、バッグ内での使用スペースが非常に小さい。以前の半分ほどではないだろうか。
以前の財布のように小銭入れが二つに分かれていなかったり、入れられるカードの数が少ないという欠点はあるものの、そもそも財布を出す機会が少ない。スマホ決済で済んでしまうことも多く、財布を出してもクレジットカードを出すだけということも多い。逆に現金でとなれば、外側の小銭入れしか使わなかったりと、思った以上に快適だった。
今の財布がたとえ付録の仮の財布だとしても、二つ折りの財布の頃にはもう戻れそうにない。一応取っておいた二つ折りの財布は手放した。
今、私が困っているのは、お眼鏡にかなう財布が見つからないことである。理想の財布に出会えないゆえに、いまだ付録財布を使い続けている。
むやみなたらに買っていくつも気に入らないものを増やすよりは良いのだが、もはや剥げ始めている付録財布が駄目になるのが先か、理想の財布を手に入れるのが先か、内心少し焦る私なのである。
買い物の目が厳しくなった一方で、手放せずにいる付録が役に立ってしまうのも複雑だ。いつか使うかもしれないものに実際に日の目が当たってしまうので、捨てる力が養われないのだろうな。
実は財布に入りきらない保険証やポイントカードを、カードケースに入れていて、こちらもいつかの付録である。カード自体を減らすことも、いつかの付録を減らすことも、今後の議題になりそうだ。
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