都合の悪い引き出し〜いつか使うかもしれないもの編〜
いつか使うかもしれないもの、それは取っておいても使わないものの別名である。ミニマリストたちが今すぐ捨てるべきものとして挙げるものでもある。あるいは捨てることが苦手属性の人間がなかなか捨てられないものとも言える。
例にもれず私もそうである。置き場に困っては引き出しにしまい込んで目をふさいできた。一つ一つはかさばるものでなくても、数が増えれば言わずもがな。
この何でも引き出しには、クーピー・クレヨン類、彫刻刀、折り紙、プロフィール帳、そして前回述べたガラケーや使い捨てカメラなど、我ながら統一性のないものを入れてきた。共通点といえばしまい場所に困るけど捨てられないもの、ということぐらいだ。
最近ようやく気づいたのだが、捨てられない人間(いや、私だけか?)のいつかは果てしない。いつか使うかもしれない、という可能性に対する想像がすぎる。その想像力はもっと別のものに使ったほうがよい。
たとえばクーピー・クレヨン類は、いつか大人のぬり絵をするかもしれないと思っていた。脳トレになったり、癒しになったりするらしい。さすがに小学校などで使っていたものは使いかけで色によっては短かったりと状態がよくなかったので捨てていたのだが、どこかで誰かにもらったきれいなものがいくつかあって、それは捨てられずにいたのだ。
また、彫刻刀セットは中学の美術の授業で買ったものだったが、彫刻やそういう系の彫ったりする趣味に目覚めるかもしれないと思っていた。まあまあ本気の話だ。昔そういうことをしていたわけでもないのに。
おわかりの通り、いつかは来ないだろう。宝くじで高額当選する確率のほうがまだ高い気がする。さすがの私も自分の趣味の広がらなさを感じて、全部手放した。今も必要だと思ったことはない。
折り紙は実はたまにラッピング代わりに使っていた。どこでもらったのか赤黄緑の三色のツルツルした紙のものや、三センチ四方の小さいもの、それから千代紙などがあった。
小さいサイズのものは使いようもないので比較的早く捨てたのだが、つるつるのものや千代紙は貼り合わせてブックカバー(かつラッピング)にして使うこともあったので手放せずにいた。いつか使うというか、まあまあ使っていたのだ。
とはいえ、ツルツル折り紙は枚数はよくわからないが高さが推定十センチほどあり、まあ使い切れる量ではない。使っていない黄色や緑から捨て、最終的に赤色のものを手放した。そして千代紙は、実はまだ手放していない。同じ柄を貼り合わせてブックカバーにすると、なかなか上品でかわいいのだ。おそらく二十枚ほどだし、かさばるものでもないし、とりあえずよしとしよう、と自分を甘やかしている。
そして私が二〇二四年手放せたことを褒めたいもの、プロフィール帳だ。私が小中学生の頃、友だちにプロフィール帳を書いてもらうのが流行っていた。名前住所などのほかに、趣味嗜好好きな人などあらゆるものを書いてもらう紙だ。
私がこれを手放せなかったのは、連絡を取りたくなることがあるかもしれないという「いつか使うかもしれない」という理由もあるにはあるのだが、それ以上に面倒だったというのが大きい。
プロフィール帳は住所氏名電話番号などが記載された、いわば個人情報のかたまりである。しかも、自分のではなく他人の個人情報だ。そのままポイっと捨てるのもなあと思ううちに早数年。それでも小学生の頃のものははがきの半分くらいのサイズだったので、切り刻んでごみに出した。それで力尽きて、もう二冊が残ったままになっていた。
シュレッダーがあればなあと思いつつ、そう簡単にものを増やす愚行はしない。ようやく思い立ってまずは一冊、ついでにもう一冊と立て続けに処分した。個人情報が読み取れないくらいビリビリに破るのは面倒ではあったが、なくなれば非常にすっきりした。
中身のなくなった都合の悪い引き出しには、整理しきれていない写真類を放り込んだ。写真の整理ってどうしたらよいのだろう。「何でこんな写真撮ったのかな」という謎の写真を最近ネガごと捨てたけれど。
都合の悪い引き出しとは、まだまだ向き合わなければならないようだ。
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