第五話「不思議の国の」

 毎日のサイクルは思ったよりも早く馴染んだ。

 俺は朝もしくは昼過ぎにバイトに出て、夕方から夜まで仕事に勤しむ。

 帰ってからはパソコン、もしくはスマホで作品の執筆だ。


 元々家事なんてまともにやってはこなかったが、全くのゼロではない。

 着るものがなくれば洗濯はしてたし、食べるものがなくなれば食料も買ってたしな。

 掃除だって、気が向いた時にやっていた。


 けど、金髪少女が届いてからは楽なものだ。

 バイトと、執筆。それ以外の面倒事は全てやってくれるのだから。


 それに、飯も旨い。

 カップ麺やコンビニ弁当に飽きていたのもあるが、確かに旨かった。

 そして、食費も提示した額よりもかなり抑えられている。

 順調だった。

 この一ヶ月だけを見るなら、このままでもいいのでは? そう思ってしまうほどに。


 だが……。


「おい、大丈夫か?」

「なにか問題がありましたか?」


 そう弱々しく答える金髪少女にクマができていた。

 もちろん、女児パンツに付いているクマさんアップリケではない。

 不健康そうに、目の下にクマができているのだ。


 そんなに無理をさせるような事をさせている覚えはない。

 現に、任せているのは二人分の家事だけで、空いた時間はパソコンを使ってネットサーフィンをさせているくらいだ。

 因みにネットサーフィンは空いてる時間なにもしないでいるのも暇だろうし、一般常識の勉強がてら勧めただけで、別に強制をしているわけでもない。


「お前、顔色が悪いぞ。今日は先に風呂に入ってもう寝ろ?」

「いえ、シノさまより先にお湯を頂くわけには……」


 いつもこれだ。

 俺より先になにかする事を意地を張るようにして断る。

 飯も、風呂も、俺が終わった後に食べて、入る。


 最初は寝るのだって「シノさまより先におやすみになれません」の一点張りでなかなか寝てくれなかった。

 俺にはなりたいの執筆がある。筆が載っている時は朝までコースもある。

 それに付き合っていたら、体がもたないだろうから無理やり寝かせているのだ。

 どうやら譲れない一線があるらしい。


「わかった。もう俺が入る。その後なら問題ないだろ」

「お背中お流します!」

「いらん。一人で入れるようになったんだから一人で入れ」


 そう言ってパパッと終わらせる。

 烏の行水ってやつだ。


「空いたぞー」


 髪を適当に乾かしながら、お風呂を交代する。

 それを見届けてから、再び自分の創る物語に潜り込んだ。

 筆が軽い。

 時速千文字。

 プロやなりたいのベテランからしたら遅いのは知っている。

 決して俺は速筆ではない。

 でも、一年前の俺と比べれば断然速いし、安定してきた。

 ふふ、俺も日々成長しているのだよ。


 今日も夜が長くなりそうだ。



÷−÷−



 朝、俺は久しぶりに自力で起きた。

 前はスマホのアラームで、最近は金髪少女に起こしてもらっていたからだ。

 でも今日は自力で起きた。

 その意味、おわかりいただけるだろうか。

 スッキリした目覚めと体内時計でわかる寝坊にゾッと冷や汗が出る。


「やばシフトっ! 時間! 今何時だ!?」


 うちには時計がない。

 そこら辺に転がっているスマフォを拾って、時間を確認しようとタップするが、うんともすんっも言わない。

 バッテリー切れだ。

 っち、使えん奴め。


 スマフォをベッドに放り投げると、パソコンのスリープモードを解除する。


 時間は正午を回ろうとしていた。

 因みに俺のシフトは朝九時から。


「……オワオワリって感じだな」


 もう天を仰ぐしかなかった。

 あーあ。きっと、スマホには店長ちゃんからの着信履歴が並んでるんだろうな……。

 まぁいいか。店長ちゃんは怒っても可愛いし、確か今日はイケメン先輩も同じシフトだ。

 俺はイケメン先輩には絶対的な信頼をしている。きっとなんとかなってるはず。

 それはそうと、


「おい、なんで起こしてくれなかったんだ……よ?」


 目覚まし担当の少女に文句の一つでも言ってやろうとしたが、当の少女はうつ伏せに部屋の端で丸くなるようにして寝ていた。

 いや、これは寝ているというよりも……。


「お、おい!」

「ん……うぅ……」


 声をかけるが反応が鈍い。


 額に手を当てる。

 熱い! 気がする。

 ああ、クソっ! 普段こんなことしないから分からん!


「も、申し訳ありません。直ぐに朝食の用意を……」

「いや、そんなのいい! どこか悪いのか?」

「大丈夫……れす。ちょっとぼやぼやするだけで……」


 いやいや、全然大丈夫じゃないだろそれ!

 ぼやぼやってなんだ? 目眩……か?


 病院。

 そうだ。病院だ!


 いや、病院でいいのか?

 こいつは普通の人間じゃないんだぞ?

 ……ええい。素人の俺なんかより病院がいいに決まってる。


 慌ててスマホを拾う。

 救急車だ。

 一一九番……って、そうだった。バッテリーがねぇ!


「おい! 病院行くぞ! 立てるか!?」

「私は大丈夫で……」

「ああもうお前は喋るな。これは命令だ。俺の背中にしっかり捕まれ」


 這うようにして俺の背中に登ってくる。

 ああ、女の子が俺の背中に密着……。

 胸の感触がないのが残念だがこれはこれで……って馬鹿野郎! 今はそれどこじゃねぇ!


「落っこちるなよ!」


 俺は財布だけ持って、パジャマのまま近くの病院へ駆け込んだのだった。



÷−÷−



「寝不足と過労だね」

「過労……ですか?」


 お爺ちゃん先生は優しく言った。


 過労、過労か……。

 それを聞いてホッとする。

 大病なんかだったらどうしようかと思った。

 そうか、過労か……。


「最近の子はテレビゲームのやりすぎで、寝るのも忘れて頑張っちゃう子が多いからね」

「いえ、ゲームは特にやってないんですが……」


 ただ、心当たりはあった。

 様子がおかしいことは、随分前に気付いてはいた。

 多分あいつ、先に寝ろって言ったのに、ずっと……。


「今日は点滴打って、少しここで寝かせて行きなさい」

「よろしくお願いします」



+。:.゚ஐ⋆*♡・:*ೄ♪



 どうしましょう。

 失敗をしてしまいました。

 取り返しのつかない失敗です。


 シノさまを起こさないといけないのに。

 もうお仕事の時間なのに。

 朝ごはんを用意しなくちゃなのに。

 何一つできていないのに。


 目の前がぼやぼやします。

 体に力が入りません。

 まるで自分の体では無いみたいに、言うことを聞きません。

 私の体はどうなってしまったのでしょうか。


 シノさまの声が聞こえます。

 上手く聞き取れませんが、とても荒い声です。

 きっと、私を叱咤しているに違いありません。


 早く、

 早く謝らないと。

 謝って、許してもらわないと。

 でないと私は……。



+。:.゚ஐ⋆*♡・:*ೄ‧♪



 そこは鈍い光だけがある、小さな小さな部屋だった。


 大股で三歩も歩けば端についてしまう。

 物心ついてから、今の今まで、ここが私の知っている世界の全てでした。


 ここでは一日に一食。

 パンと、オレンジ色の野菜が一欠片入った色の薄いスープを頂きます。

 一日の中で一番至福のひと時です。

 口の中に微かな味が広がって、空腹感が緩和されるこの時が、私は好きでした。


 それ以外の時間は睡眠学習です。

 硬い何かで作られた無機物な看守から、何かしらの絵が描かれた魔法の紙を貰います。

 もらった紙を頭の下に引いて眠れば決まった夢を見ることができます。

 多分、そういった魔法のアイテムなのでしょう。

 夢で色々な事を学ぶのです。


 そんな日々をずっと過ごしていました。


 そんなある時、壁の外から大きな声が聞こえてきました。


「おい! そこに誰かいるんだろ! 返事しろ!」


 私は初めて他の人の声を聞きました。

 夢の中以外では初めてです。

 気持ちが高ぶりました。

 多分、この気持ちが感動というんだと思いました。


 私は慌てて返事をします。


「はい! います!」

「なんだぁ? 今回のお隣さんは随分とお利口さんな声だな」


 返事が返ってきました。

 私の言葉に、返事をしてくれたのです!


「こんにちは!」

「残念。今はこんばんはだ。あたしはエルミナ。お前は?」


 名前を聞かれています。

 でも、残念なことに私には名前がありません。


「すみません。私には名前がありません」

「あ? いや、出荷先のご主人様にまだ名前をもらってないって意味か?

 そうじゃねーよ。てめぇの親から貰った名前だよ」

「いえ、私は物心ついたここに居ましたので、名前はありません」

「マジかよ。お前、親に売られちまったのか」


 その言葉に、私は悲しくなりました。

 考えたことがないわけではありません。

 でも、両親の事は悲しくなるから、あまり考えないようにしていました。


「おいおい、泣くなよ」

「え?」


 驚きました。

 声は出していないのに、エルミナさんは私が泣いてることが分かったからです。


「どうして私が泣いてることがわかったんですか?」

「匂いだよ。あたしは獣人だからな。匂いと音には敏感なのさ」

「凄いですね!」

「そうだろう、そうだろう。もっと当ててやる。よし! なにか質問しろ」


 とても機嫌のいい声が返ってきました。

 そのおかげで、私の悲しい気持ちも忘れてしまいます。


 でも質問を考えないといけません。


「えっと、では私は男の子でしょうか? 女の子でしょうか?」

「なんだ、その質問。そんなん獣人じゃなくてもわかるわ。女……それも八歳の……こりゃ珍しい。エルフかよ。どうだ、あたったろ?」

「凄いです! ぴったりです!」

「そうだろう、そうだろう」


 本当は自分の歳を知らなかったけど、きっとエルミナさんが言うのなら、きっと私は八歳なんだ。


「エルミナさんはなんでも知ってるんですね!」

「あ? ああ。そうだな。あたしはなんでも知っている。ここの外にも三回も出たことがあるからな」



 その日から私は睡眠学習以外の時間はエルミナさんとお喋りをしました。

 お喋りは楽しいです。

 一人ぼっちじゃないのは嬉しいです。


 エルミナさんは三度出荷されて、三度返品されたそうで、外のことに詳しいです。

 私は色々な事をエルミナさんから教わりました。

 睡眠学習では習わない事です。


「いいか、外に出れたら死ぬ気で奉仕してご主人様のお気に入りになれ。死ぬ気でだぞ」


 エルミナさんは毎日、欠かさずに何度も念を押して言います。

 とても大切なことのようです。


「どうすればご主人様のお気に入りになれるのでしょうか」

「そんなのあたしに……そうだな。お気に入りになれた奴らは皆んなご主人様に従順だった。そして慎重だった」

「慎重、ですか?」

「そうだ。失敗は一回でもしちゃダメだ。どんなに完璧でも、一回失敗すれば捨てられる。そう言う奴は何度も見た。

 あと、そうだな。上手くやってた奴は気が利いていた。ご主人様に言われなくてもご主人様の望むことを進んでするんだ。

 そうやって、ライバルに差をつける。大抵のご主人様は一度に多くの奴隷を買うからな。気に入った奴隷以外はチェンジか返品だ」


 やっぱりエルミナさんの話はためになります。

 私ももし外に出ることができたのなら、きっとエルミナさんの話は役に立ってくれると思います。


「あと、これが一番重要だ。女の奴隷で一番重要なこと。それは交尾だ」

「こ、コウビ……ですか?」

「そうだ。どんなに醜くて気持ち悪い臭っせぇご主人様でも、嫌がらず、むしろ進んで体を捧げろ。

 そんで気に入られれば安いものだ。ガキができればなおいい。それで奴隷から妻になった奴もいたからな」


 エルミナさんは何度も言います。

 全てを捨ててでも、ご主人様に気にってもらえと。


「……でも、どうしてそこまでしないとダメなのでしょうか?」

「あたしのようになっちまうからだ」

 

 エルミナさんは静かに言いました。


「チャンスは多くて三回。三回返品されれば奈落行きだ」

「奈落、ですか?」


 奈落。

 今までの話には一度も出てこなかった単語でした。

 そして、その単語を口にした声は微かに震えているように聞こえました。


「そうだ。いいか。多くて、だ。早きゃ一回の返品で奈落行き。あたしはもう三回返品された。三回出荷されたってだけで、恵まれいたが……どうやら運は尽きたらしい」

「その、奈落ってどんなところなんですか?」


 私は思わず息を呑みます。


「異常性癖のお偉いさんのところさ。使えない奴隷はそこで安く買い取られる。

 あそこに行ったらもう生きて帰れない。まだ死んだ方がましってくらいに苦しむことになる。まさに奈落さ。

 そのご主人様は人が苦しむのを見ることがお好きでね。死なない程度に奴隷を痛ぶるのさ。

 爪を剥ぎ取るなんて生優しい。

 話を聞くところ……目ん玉をくり抜いて、それを食べさせるらしい。よく噛んで喰えってな」

「っひ」


 それからエルミナさんの話す拷問を超えた聞くに耐えない話に、私は耳を塞ぎます。

 恐ろしくて恐ろしくて、想像するだけで吐きそうになりました。


 その話がエルミナさんとの最後の会話になりました。


 エルミナさんは四度目の出荷がされたのです。


 それから一年。

 私はとうとうその時がしました。

 恐ろしい気持ちと、ほんの少しの期待を抱きながら。

 私はダンボールに詰められました。



÷−÷−



「目が覚めたか」


 ベッドに寝かせて四時間くらい。

 やたらうなされていて心配したが、きょとんとこっちを見る顔色はだいぶ良くなっている。

 まぁ大丈夫だろう。

 やっぱ点滴って効くんだな。


「し、シノさま! わたしっ……!」

「わっ、動くな! 点滴刺さってんだから。

 あと、お前には言ってやりたい事が山ほどあるが、家に帰るまで喋るな。外で様付けはマズい」


 飛び起きそうになった体を押さえて、喋るなと口元に人差し指を当てる。

 それを見て少しの間、ゆっくりと頷いてくれた。

 この子は頭がいい。

 世間知らずではあるが、バカではない。

 言うことは聞いてくれるだろう。



÷−÷−



「お会計ですが……、えっと本当に保険証は大丈夫ですか? 結構高くなっちゃいますが……」

「あー。すみません。こいつ日本に来たばかりで、保険証の手続き? とかまだなんですよ。今回はしょうがないですね。ははは……」


 看護婦の人が心配そうに会計の結果を見ている。

 こればかりには仕方ない。

 こうなる事は予想して予め下ろしてきている。


「そうですか……。では……」


 提示された金額に一瞬固まる。

 うっ、点滴高っけー……。

 一万円普通にこえてくるのかよ。


 ある程度覚悟はしていたが、かなりの痛手だ。

 まぁ、しゃーないわな。


 財布から諭吉さんを二枚取り出して出す。


「え……」


 斜め後ろから、乾いた声が聞こえる。

 こいつには諭吉さん一枚の価値を叩き込んだからな。

 一ヶ月諭吉さん三枚だけだと。

 となればそりゃもうビックリだろう。


 お釣りに数枚の英世さんを貰って、エルフ少女の手を捕まえる。


「ほれ、帰るぞ」

「は、い……」


 消えて無くなってしまいそうな掠れた声で返事が返ってくる。

 どうやらまだ本調子ではないらしい。



 帰り道。


「今日は一日寝てろってさ。お前、過労だってよ。過労わかるか? 頑張りすぎってことだ」

「すみ、ません……」


 相変わらず声が掠れている。

 掠れているって言うか、震えていた。


「おい、本当に大丈……」


 顔を見ると、瞳に涙をたっぷり溜め、口元を硬く一文字にして、ヒックヒックと泣くのを堪えている。


「……そんなに注射痛かったか?」

「違います。注射違います……」

「じゃあなんで泣いてんだよ」

「シノさまに、いっぱいご迷惑をおかけしてしまいました。一月に三万円なのに、わたしのせいで……」


 あー。そんなことか。

 いや、そんなことで片付けられる事では無いのか。こいつにとっては。

 確かに俺のお財布事情からしても結構痛いが。


「一ヶ月間。私はとてもとっても楽しかったです。なのに、最後に……とんだご迷惑を……今までお世話になりました……」


 上唇を噛んで泣くのを堪える少女の顔は歳相応に見えた。

 家事を完璧にこなすものだから忘れていたが、まだ九歳だったな。


「謝る時は顔をちゃんと見ろ」


 律儀に目を真っ赤にしながら、俺を見上げてくる。

 それと同時に、鞄から一枚のカードを取り出した。


「お前のだ。無くすなよ」


 渡したカードはさっき病院で貰ったものだ。

 初めての病院では診察券を作らないといけないからな。

 そして、診察券を作るにはどうしても記入しないといけないものがある。

 それを見て、少女の真っ赤にした目が大きく開く。


「……篠原、アリス?」

「別のが良かったか?」

「いえ、そうではなくて……」

「いつまでも、お前って呼ぶわけにもいかないしな。丁度一ヶ月経ったし、いい機会だろ」


 こいつは異世界……言い換えれば不思議の国からやってやってきた。

 そんでもって金髪と来たら、ってのは少しばかり安直だったろうか。


「……いいんですか? 私に名前をつけたらもうチェンジできませんよ?」

「そうだな」

「失敗して、お金いっぱい使っちゃったのにですか?」

「そうだな」


 未だに涙が止まらないアリスの目元を拭ってやる。


「なんで、ですか?」

「なんでか? そりゃ……、お前がいた方が面白そうだからだ」


 ぶっちゃけ、あまり深くは考えていない。

 一人の女の子を引き取るなんて、深く考えたところで無理に決まっているんだ。


「面白い、ですか?」

「そうだ。それに高校中退して、家飛び出して、一人フリーター生活。俺の方がよっぽど失敗してる。

 それで毎日同じ事の繰り返し。

 そんなところにお前が届いた。異世界からな。

 普通じゃあり得ねぇことが降って湧いてきた。

 まるで物語みたいな出来事だ。

 そんなもん、ライトノベル作家の俺としてはドンとこいだ」


 こんなもん、勢いだ。やけくそだ。


「いいかアリス。お前はもう篠原アリスだ。同じ苗字の家族だ。だからもう、奴隷みたいな事はするな。

 飯は一緒に食べるし、風呂も先に入っていいし、寝るのも先でいい」

「でも私は、シノさまにご購入されて……」

「そうだな。やる事はやってもらう。でも、無理はするな。楽しく生きろ。好きなものは好きって言えばいいし、嫌いなものは嫌いと言えばいい」


 そうさ。一度きりの人生だ。

 俺なんかと暮らしたいなら暮らせばいい。

 初めて空を見た時のように、これからいろんなものを見ればいい。

 そうやって、自分の好きなものを探して、

 好きなようにすればいい。


 俺のように好き勝手にやればいい。


 言ってやった。

 言ってやったぜ。


「でも……でも……」と泣くアリスの頭を優しく撫ぜてやる。


「よし! どうせならこれを物語に書くか!」

「これを、ですか?」

「ああ、異世界から女の子が宅配便で届けられる。そんな導入の物語。うん。なりたい系にぴったしだ」

「私がシノさまの物語に登場できるんですか?」

「そうだ。俺が主人公でアリスがヒロインだな。

 そうと決まれば早速執筆だ! ノンフィクションだからプロットもいらねぇや」

「私も! 私もお手伝いしてもいいですか?」

「ん? それもいいな。俺とアリスの物語だからな。アリスのパートはアリスに任せるか!」

「はい!」


 そんな話を始めれば、赤くしていた目に笑顔ができる。


「でも今日は寝てろよ。次倒れたらもうお金無いからな」


 こうして、改めて、

 一人暮らし、中卒、十八歳童貞、フリーター、ライトノベル作家志望の俺と、

 異世界発送、金髪エルフ少女のアリスとの何気ない日常が続くのだった。



◆◇◆◇


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