第7話

 おいらはせんじょーコウスイタイ。みんなからはコウって呼ばれてる。


 そんなおいらは、絶賛暴れまくっているたいようフレアたんとタッグを組んで、すんげぇえげつない雨を降らせているわけだが。


 なんの因果か、みんなのアイドル、おーろらたんが泣きながらやってくるじゃあないか。


「うわあ〜ん。コウく〜ん、たすけてぇ〜」


 のしっと、おいらの体にしがみつくおーろらたんは、予想以上の重量がある。なんでだっけか?


「どうした? 塩と砂糖入れ間違えたみたいな顔して」

「すん。ぼく、コウくんと結婚しようかな?」

「はっ。むりむりむりむり。おいらにはもれなくねったいテーキアツちゃんがついてくる。浮気はダメだ。絶対にっ」


 そうそう、うしろからしっかり気配を感じているぜ。テーキアツちゃんのあっつ〜い視線をな。


「そもそもおーろらたんにはアラシくんがいるじゃねぇよ?」

「そのアラシくんに嫌われちゃったんだもん。ちきゅうくんのせいで」

「マジかぁ。あいつ、言動が万年発情期だからな。で? まだアラシくんとは仲直りしてないのか?」


 うん、と可愛らしく泣きながらコクリと頷いた。


 どうしたものかと思いながらも、おれはおーろらたんに、ヒョウくんが残していった飴玉をひとつあげた。


「あれ? なんだかこれ、見た目よりおいしい。まるでぼくみたいっ!! ね? そう思うでしょ? コウくん」

「ん? ……あ、ああ」


 まずい。テーキアツちゃんは確実に怒っている。その証拠に。


『急激に発達した低気圧は、大型の台風に変わりそうです。ジッ――――。ですが、日本海上には現在発達中の爆弾低気圧が四つもできるということで。ここからは専門家の先生にお聞きしましょう。先生、季節外れの台風ですが、我々はどんなところに注意をすればよいのでしょうか?』


 ……まずいって。低気圧四つもできたら、また頭痛で寝込むことになるからっ。しかも爆弾低気圧。


「おーろらたん? もう一度しっかりアラシくんと話し合ったらどうだい?」

「コウくんまで、ぼくが男の娘だからってっ!!」

「おーーろーらたん。あたいのこと、覚えてるかなぁ?」


 出・た。テーキアツちゃんだ。


「うん。覚えてるよ。ヒステリー持ちのおばさんテーキアツちゃんだよね?」


 地雷を踏んだか。うむ。しかたあるまい。


「ぶしっ!!」


 ちょお〜待てぃ!! なんでおいらが飛び膝蹴り食らうんじゃ!? 


「はん。おーろらたん。あんた、見た目の美しさだけにとらわれて、心の美しさを追求してこなかったんでしょう? だからそうやってすぐ卑屈になる。あたいはねぇ、あんたみたいなのがだいっきらいなんだよ」


 はっ。テーキアツちゃんが、熱い涙を流している。青春だ。これが、これこそが青春そのものだっ!!


「けどまぁ、今回だけは見逃してあげる。ことの発端はちきゅうくんなんだよね?」

「うん。そうだけど……。あんまりやっつけたらかわいそうだよ? にんげんたちが」


 たしかに。


 そして明日はいよいよちきゅうくんがぎったぎったの、けっちょんけちょんにされる予定。


 次回、熱い思いを見逃すなぁ!!

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