お題【病を癒すお面】、【邪悪な入り江】、【すがめる】
「ここが邪悪な入り江と呼ばれてるのを知らないの?」
ようやく見つけた人魚は、波間から顔を出してそう言った。
「知っている。それでも」
病を癒すお面を探しにきた。妹のために。時間はあまりない。
「ふうん」
人魚は目をすがめて俺を見た後、波間から飛び上がった。
「手に入れられるなら、どうぞ」
俺は腕を掴まれ、海に引き摺り込まれた。息が空気の塊になって水面に向かう。
それでも、俺は、お面を。
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