【200字小説短編集】小さく灯る

お題【魔法の谷】、【危険な】、【世界】

少年は赤ん坊の頃に山に捨てられた。狼は少年を食い殺さずに魔法の谷に連れて行った。魔法の谷の精霊は、少年を育てた。ゆえに少年は魔法が使える。

少年はやがて青年になって、世界を見たくなった。

「危険なこともあるでしょう。魔法の使い方を誤らないように」

精霊はそう言って青年を送り出した。

青年は小ぶりなナイフを腰布に挿して、魔法の谷を旅立った。

それが、世界を救った英雄の、始まりの物語だ。