第14話  果たし状!

「結論から言うと……」

「はい」

「崔さんはヤバイ人なんですね」

「ヤベー奴です」

「ということは、神崎さんもヤバイ人なんですね?」


 レイナが笑った。


「いえ、それが違うんですよ…」

「どう違うんですか?」

「僕の方が年上で大人です」

「そんなに中身が変わるんですか?」

「変わりますよ」

「そうなんですか?」

「僕に比べたら今の崔は青二才ですから」

「どう変わったんですか?」

「ヤバくなくなりました」

「そうなんですか?」

「そうなんですよ。今の崔は勢いだけですからね」

「今の神崎さんは?」

「より深い愛を持っています」

「そんなの見た目じゃわからないですよ」


 レイナはずっと笑っている。


 僕はずっと答えに困っている。


「とにかく違うんです。今の僕は無害です」

「崔さんは有害ですか?」

「有害でしょう?」

「わかりました、気をつけます」

「わかってませんね」

「はい、本当はわかっていません」

「DNAも違うんですよ」

「どういうことですか?」

「崔は武士の末裔ですが、神崎家は忍者の末裔です」

「そうなんですか?」

「だからボディーガードという仕事も出来るんです!」

「じゃあ、何か忍術を見せてください」


 僕はまだ忍術は出来ない。


「ここで忍術を披露すると部屋が汚れますので」


 と言って逃げた。


「なるほど、それでは仕方がないですね」

「忍者の末裔って、なんだか格好いいでしょう?」

「そうですね、まあ、確かに…」

「とにかく、崔と付き合うのは反対です」

「結論はそこなんですね」

「そうです。崔と付き合うくらいなら僕と付き合ってください」

「じゃあ、他に素敵な人を見つければいいんですね」

「いや、それはヤキモチ焼いてしまいますね」

「じゃあ、どうしたらいいんですか?」

「僕にもわかりません」

「でも、崔さんはダメなんですね?」

「はい、それはもう絶対ダメです」

「わかりました。気をつけます」

「絶対ですよ」

「はい」


 とにかく事前の説得は成功したようだ。

 僕は少しホッとした。



 僕は自宅に帰った。

 テーブルの上に手紙が置いてあった。


 “果たし状”


 レイナ絡みかもしれない。

 読んだ。


 決着をつけたいから国道沿いの空き地に来い、とだけあった。


 僕はまた車に乗った。

 国道沿いの空き地へ。

 地図からするとかなり田舎の空き地だ。

 この時間だ、人通りも無いだろう。

 僕は緊張した。


 懐には懐中電灯付きの警棒を1本。

 車で約1時間、僕は指定された空き地に着いた。

 車から降りる。


 もうすぐ朝日がのぼるだろう。


 僕は神経を張り詰め、五感を鋭く研ぎ澄まして車の脇に立って待った。


 何も起こらない。


 “?”


 一歩、踏み出した。



 地面が爆発した。







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