第13話 崔は僕だ!
「僕は崔梨遙の生まれ変わりなんです」
「は?」
勿論、呆れられた。
「といっても、僕が崔だったのはパラレルワードの世界、異世界のことです」
「どうしてこの世界に生まれてくることになったんですか?」
「僕の死はイレギュラーだったんです」
「イレギュラー?」
「死ぬべきではない時に死んだんです」
「それで?」
「神様みたいな人から神崎蓮としてこの世界で生きるように言われたんです」
「信じられないです」
「ですが、以前と比べると僕は変わったでしょう?」
「確かに或る日を境に変わりましたけど」
「僕には崔としての記憶と神崎としての記憶があるのです」
「そんなことがあるんですか?」
「こうして実際にあるんです」
「じゃあ、崔さんのことは全て知っているんですね」
「はい。ですが若干元の世界の僕と今の世界の崔と違いがあります。元の世界で僕はまだ作家としてデビューできていませんでした」
「崔さんは自分なのに私にアプローチしてくることが嫌なのですか?」
「僕であって僕ではありませんので」
「結論を言うと神崎さんは崔さんと私が親しくなることに反対なんですね」
「はい」
「では、別の男性だったらいいんですか?」
「それは……」
「どうしました?」
「別の男性と付き合うくらいなら崔の方がいいですね」
「それじゃあ私は誰とくっついたらいいんですか?」
レイナは笑っていた。
「……僕です」
「神崎さん、本気ですか?」
「……はい」
「私のこと好きなんですか?」
「はい!」
「急ですね」
「でも、ちゃんと仕事はしますよ」
「わかっています」
「僕はレイナさんの大ファンなんですが、いけませんか?」
「いえ、良いと思いますよ」
「とにかく崔には気をつけてください。タチが悪いですから」
「崔さんのことは全否定なんですね」
「心の隙間に入り込むのが上手いんです」
「心の隙間ですか?」
「はい、誰でも心に隙間がありますから。その隙間に気付いているか気付いていないかというだけの話で…」
「わかりました。気をつけます」
「本当に気をつけてください」
「ところで、神崎さんはどうして死んだんですか?」
「レイナさんのイベントで暴漢がいて取り押さえようとしたら殺されました」
「私のためにですか?」
「それが…予定では警備員が取り押さえるはずだったらしいんです」
「それで予定外の死ですか?」
「そうなんです」
「私のためにすみません」
「いえ、レイナさんのボディーガードに生まれ変われて幸せですよ」
「コーヒー、もう一杯いかがですか?」
「いただきます!」
夜は長い。
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