第12話  コーヒータイム!

「問題なのは危機感です!」


 僕が言った。


 レイナの部屋。出されたコーヒーは熱くて猫舌なのでまだ飲めない。


「何に対する危機感ですか?」


 レイナは楽しそうに笑っている。


「厄介な奴に目をつけられたことに対する危機感です」

「崔さんは厄介な奴なんですか?」

「かなり!」

「そうなんですか?」

「レイナさん、今全く危機感をもっていないでしょう?」

「はい。特に…」

「そこ! そこが問題なんです」

「どこが問題なのですか?」

「奴は、相手に危機感を与えないところが厄介なんですよ」

「なるほど」

「相手の警戒心を解くことに長けていますからね」

「神崎さんは崔さんのことをよく知っているんですね」

「よく知っていますよ」

「どうしてしっているんですか?」

「それは…時が来れば答えます」

「内緒なんですか?」

「ええ、まだ…」

「でも名刺を2回渡されただけですよ」

「名刺の裏に何か書いてあるでしょう」

「書いてます」

「何と書いていますか?」

「“気が向いたらご連絡ください”」

「それはレイナさんがターゲットになった証明です」

「確かにアプローチされている気がしてきました」

「絶対に連絡をとってはいけませんよ」

「多分、連絡しませんけど」

「良かった」

「崔さんは悪人なんですか?」

「……悪人ではないと思います」

「女癖がわるいんですか?」

「そこは微妙なんです。好きな人がいない間はだらしなく遊びますが好きになったら一途です」

「私はどう思われているのでしょうか?」

「名刺に書き込みがあったからレイナさんのことを好きになったんでしょうね」

「じゃあ、問題無いじゃないですか」


 レイナが笑った。


「それが奴の必勝パターンなんです」

「パターン?」

「一途に猪突猛進するんです。好きな人を第一に優先するんです。すると女性が“こんなに愛されたの初めて”と言ってなびくんです」

「それで付き合うことになるんですか?」

「大体は……」

「それって問題無いですよね?」

「だから……嗚呼、なんと説明すればいいのかわかりません」

「私も何がいけないのかわかりません」

「でも奴はバツ2ですよ」

「2ですか?」

「2です!」

「それを聞くとちょっと身構えてしまいますね」

「そうでしょう?」

「でも、どうして神崎さんは私の心配をするんですか?」

「…僕がレイナさんのファンだからです。あんな奴とレイナさんをくっつけたくありません」

「じゃあ、神崎さんから見て私が誰と付き合ったらいいんですか」

「申し上げにくいんですけど」

「はい」

「僕!」


 レイナが笑った。


「でも、僕では力不足だとわかっていますので」

「神崎さん」

「はい」

「どうして神崎さんが崔さんについてそんなに詳しいのか知りたいです」

「それは…いずれ…」

「今、聞きたいです」


 僕は迷ってコーヒーを飲んだ。

 それから言った。



「わかりました、話しましょう」







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