第7話  予感!

 日々が楽しくて仕方がない。

 ライブ会場の事件からレイナが以前より親しく接してくれるようになったのだ。

 車の中で話すのも楽しい。


 最近では喫茶店やバーなど飲食店などにも一緒に行くようになっていた。

 熱愛報道されそうだが僕はマネージャーということになっているので報道はされない。


 天国だ。


「ライブ会場の事件はまだ解決していないのですか?」

「そうなんですよ」

「でも、照明に触れることが出来る人って限られていますよね?」

「それが…照明担当が急に休んだので急遽呼んだ1日限りのバイトだったらしいんですよ」

「でも、初心者では照明には触れないですよね?」

「別の現場で何度か作業していたらしいです。派遣社員でした」 

「それなら何か派遣会社から情報を得られるのでは無いですか?」

「それがサッパリ。履歴書もデタラメ、親しくしていた者もいなかったらしいです」

「どういうことでしょうか?」

「あなたの照明係をするために派遣で腕を磨いていたのでしょう」

「あの1日のために? 信じられないくらい執拗ですね」

「そうですね、常人とは異なる雰囲気ですね」

「私、どうしましょう…怖い…」

「僕がいます」

「そうですね」

「僕が何度でも守ります」

「よろしくお願いします」

「いえいえ、心配はしないでください」

「神崎さんって優しいですね」

「相手によります」

「そうなんですか?」

「相手がレイナさんだから優しくいられるんです」

「どうしてですか?」

「大ファンだからです」

「ファンですか」

「違います、大ファンです」

「大にこだわるんですね」

「大は重要ですよ」

「わかりました」

「新曲、いいですね」

「もう聴いてくれたんですか?」

「はい、もう何十回も」

「ありがとうございます」

「実は僕、歌詞を書いたり小説を書いたりしているんです」

「素敵ですね」

「いつかレイナさんの曲の歌詞を書きたいです。僕の夢です」

「その日を待っています」

「その時はよろしくお願いします」

「はい」


 ずっと車を走らせていたい。

 ずっとレイナと話していたい。

 だけど、やがて目的地に着く。


 仕事終わり、僕は都内でも有名なフレンチレストランに車をまわすように言われた。


「今日の仕事は終わりじゃないんですか?」

「急用です」

「打ち合わせですか?」

「はい」

「今後のスケジュールについてとかですかね?」

「いえ。私の歌を映画の主題歌にしたいという方がいまして…」

「そうなんですか? よかったですね」

「今日、映画の制作が決まったから急遽お会いすることになったんです」

「お会いになるのは原作者の方ですか?」

「はい。他にも何人かいますが」

「またヒット曲が増えますね」

「どうでしょう」

「アニメ映画ですか?」

「はい。原作の小説が売れたので、アニメ化が決定らしいです」

「原作者は漫画家ではなく小説家なんですね」

「はい」

「僕と同じ事を考えている人がいるんですね」

「と、おっしゃいますと?」

「作家になって、自分の作品が映画化されるときの主題歌はレイナさん」

「そうですね。神崎さんが言っていた通りですね」

「でも、それって、原作者の方が相当レイナさんを気に入っているということですね」

「そうでしょうか?」

「そうですよ。きっと口説いてきますよ」

「そうでしょうか?」

「もし口説かれたらどうします?」

「まだお会いしてもいないのでわかりません」

「なるほど。そうですね」


 嫌な予感がした。

 嫌な予感は的中した。



 思わぬライバルが現れた。







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