第4話  転生人生!

 どうしよう。毎日が楽しい。

 レイナと過ごす日常が幸せで仕方がない。

 レイナも次第に僕に打ち解けてくれるようになった。

 車の中の雑談が楽しい。


 握手会では、やはり僕は男共を睨みつける。

 レイナの事務所には悪質なファンレターが届き続けている。

 最初はカミソリだったらしい。次にナイフ。そして包丁…。

 これらが届き続けている間、僕はレイナのボディーガードを続けていられる。


 或る日、握手会でタチの悪いファンが現れた。

 レイナの手を握って放さないのだ。そして愛の言葉を発し続けている。

 レイナは完全に怯えていた。

 僕は近寄った。


「お客様、もうその辺でやめていただけませんか?」

「なんだよお前」

「はっきり言って迷惑です。ご退場ください」

「うるせえ」

「男が殴りかかってきた。僕はその腕をとって背負い投げで倒した。


 ちゃんと怪我をしないように優しく投げた。

 だが、男は恐怖を感じたらしい。すぐに逃げた。


「ありがとうございました」


 レイナにお礼を言われた。小声なのはいつものことだが、安堵したようで良かった。


「神崎さんって格好いいですね」


 車の中でレイナに言われた。


「どこがですか?」

「昼間、変な人を投げたのを見て格好いいと思いました」

「本当ですか? お役に立てたなら嬉しいです」

「助かりましたよ。私、怖かったですから」

「レイナさんを怖がらせるなんて許せませんよ」

「ありがとうございました」

「本当は投げられた側が痛い投げ方もあるんですけどね、痛くない投げ方で対応しました。痛い方の投げ方をしたらしばらく動けませんよ」

「神崎さんって優しいんですね」

「いえ、大事なイベント中でしたからあまりに騒ぎにしたくなかったのです」

「神崎さんに守ってもらえていると思うと安心です」

「ありがとうございます。でも、まあ、こういう仕事ですから強くないと出来ませんよ」

「流石、プロですね」

「イベントが無茶苦茶にならなくて良かったです」


 変な男が退散してから平和なイベントに戻ったのだ。


「もっと早く対応した方が良かったですかね」

「いえ、良いタイミングだったと思います」

「それなら良かったです」

「何かお礼がしたいです」

「仕事ですから、お気遣いは無用ですよ」

「それでも何かしたいんです」

「じゃあ、また写真とサインお願いします」

「はい、いくらでも」

「ありがとうございます」

「本当はお茶とか食事に行きたいんですけど。記者に見つかると誤解を招きますからね」

「あ、じゃあ、私の部屋でコーヒーでも飲みますか?」

「え!?」


 僕はパニックになった。仕事柄、辞めておいた方がいい。でも行きたい。


「じゃあ、お言葉に甘えて少しだけお邪魔します」

「はい、是非」

 


 僕は初めてレイナの部屋に入った。







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