第3幕 盾と成る魔物収集
第15話 モンスター×コレクト
『魔導書ニ捧ゲシ
「未だに、よく分からないんです。
試験が終わった後、叔母の家の空き室で、魔導書を捲る。
この魔導書とは、もう10年というの間柄だけれど、一度も理解できずにいるページが何個かある。
その中でも、特に全てが不明のこのページは、私だけじゃ解決できそうにない。
だから、リリーに訊ねれば何かわからんじゃないかと思い、リリーに攻め込んでいる状態だ。
『魔物収集………?』
「心当たりがありますか?」
『アタシってさ、異世界転生する前に、何か白い空間に飛ばされてたんだよね。
そこで、正体不明の女に何か言われた気がするんだよねぇ。急に突っかかって来たから、何なんだこいつって思ってたら話が終わったけど。
何だったっけなぁ』
「何か聞きませんでしたか?名前とか………」
『………あっ!そうそう。確か、女神エルナース?とかなんたら言ってたわ』
「女神エルナース!?あの世界三大女神の‼聖を貫く慈悲深きエルナース様!?」
女神エルナース、世界三大女神として祟られる中の一人。
その中でもエルナースは、神の中でも有数のエール(神)の意味を持つ女神。
元々天使であったエルナースは、聖を貫く慈悲深さが認められ、女神と昇格した。
昇格したのにも関らず、誰にでも平等たる優しさは、今でも拝められており、
エルナースの人気は、相変わらず最高峰であった。
『………優しいかは別に興味ないけど、正直なんかガキっぽかったわ』
「なッ……何言ってるんですか!もしこれを聞かれたら、エルナースファンに暗殺
されますよ!私まで!」
『いや事実だし?別にいーっしょ』
ま、まあ確かに、リリーは対面したことがあるから説得力があるけど。
『とか言って、アンタも思ってるんでしょ~』
「いいえ。私は生まれた瞬間から女神オルモース様一途なので。他の女神様に
口出しは致しませんよ」
そう。恐縮ながら、私はオルモース様を讃えている一人で………。
女神オルモース様は、エルナース様と同様、世界三大女神の一人で、
平等主義でありながら、好戦的。でも、正々堂々と闘いを申し込む所や、
凛々たる振る舞いが、実に素敵なんですよねぇ~。
貴族社会に反対している私にとって、オルモース様は、私を含む差別に苦しむ人々にとって、讃えられる存在でしかない。
これを言っちゃ、口出しをしないなんて嘘になるけど、私的に、エルモース様は優しすぎる気がする。
罪を犯した者にまで慈悲を与えるというのは、何か違うと思う。
オルモース様は、罪な者には罰を与え、世界を平等へと導いてくださっている。
そこが、薄情だ、なんて思う者も多数いるけれど、怒らないというのは、返っておかしいと思う。
慈悲が増えることで、同時に犯罪が増える。
オルモース様は、そのような優しさがあって、世界を創り出しているんだ。
『………オルモースやらなんちゃらは、一旦置いておいて。で、エルナースがどうしたの?』
「あ、そうなんです。実は私に魔王討伐を託したのが、女神エルナース様なんです。
もしリリーさんがエルナース様と対面したのなら、何か聞き出せるんじゃないかなと思って………」
『あ、それならアタシ、エルナースと会話できるよ』
「え?」
『今までさっぱり忘れてたけど、ここに転生した時、エルナースに貰ったんだよね。小型バッチ?みたいな。これで会話できるから、よろしくつって去ってったわ』
「そういう重要な事は先に言うもんですよね?」
『いや、だから忘れてたんだって!エルナースがガキ過ぎて、内容入ってこなかったんだよ!』
「………分かりました。じゃあ、会話してみてください。何か聞き出せるかもしれないですし」
ジリリリリ
「凄い………特徴的な音ですね」
『あ、そそ。何か色々イジってたら、あっちの世界でアタシが目覚まし時計で使ってた音にできたわけ』
ジリリリリ
〈ハイハーイ!エルナースだよーん★〉
バッチから、場に合わぬ程、テンションの高い声が聞こえた。
『ほらな、言ったろ?どーも女神には見えんわ』
〈そんなこと言わないでよねリリーちゃんっ!異世界に転生させてあげたのは、この私、世界三大女神エルナース様だよ?そこは感謝するところでしょ!〉
「えぇっと………代りました、ユーリ・メルディアです」
〈きゃ~!待ってたよユーリ!中々電話が来ないから、リリーが忘れてるんじゃないかなぁって思って、心配してたんだよホントもう!〉
「流石、世界三大女神のエルナース様は勘が鋭いですね。ご名答です」
〈え、もしやリリーちゃんったら忘れてたの私のコト!?〉
「リリーさんにはいつも振り回されてますよ。私の魔力を使って小動物に変化したら、腕試しなんか言って、戦いを申し込んでくるし………」
『いやそれはユーリだけどな!?』
「あ、そうそう本題に戻るとですね。魔導書に記されてある、
〈あ、それねそれ!実は魔導書に向かって、特定の詠唱を唱えると、できるようになるんだよね!えーっと、詠唱が………〉
■□■⚔■□■
『
「<
煌びやかな光線が魔導書の周りに、炎のように燃え広がる。
魔導書が自力で浮いたと思えば、ページが開かれ、今までなかった紋章が浮かび上がる。
『GET・
その文字が浮かび上がると、魔導書は途端に、地面にぱたりと落ちてしまった。
一回目、エルナース様から魔王討伐を託された時と全く同じ。まるでデジャヴだ。
とはいえ、
まあ、元々それを聞くために、エルナース様に申し掛けたけれど。
〈魔物収集って、どういうものなんですか?〉
〈んーそうね~。魔導書に、魔物の情報をコレクトする感じっ?まあ、一回やって
みれば分かるでしょ!私も仕事で忙しいので、お去らばするね~〉
〈お時間頂き、ありがとうございました〉
〈お構いなく~。あと!ちゃ~んと定期的に連絡してよね!二人の事、慈悲深きエルナース様が心配しちゃうからねっ!〉
プチッ
奇妙な音と同時、通話は途切れた。
『どんな感じだった?』
「確かに………想像とは、少し違かったというか………」
『でしょ!?やっぱ、そこらのガキんんちょと同類だよな!』
「いやそこまでは言ってませんけどね?」
『というかさ、エルナースも実際にやってみろっつってるし、明日にでも
魔物収集始めん?』
「んー………」
『他人に実戦実戦言っといて、自分はやらないって、そんなことはないよね?』
「うぐっ」
『他人に厳しく、自分に甘い、だぁ?』
「とはいえ、これは私の実戦ではないので、リリーさんも対象に含まれますけど。
私は魔物との対面経験がありますので、プレッシャーなどには心配ありませんし。
リリーさんこそ大丈夫なんですか?」
『うっ………』
「そうですね~。リリーさんがそう言うのならば、明日の朝にでもここを出発しましょうかね?この辺りには、魔物がうじゃうじゃといる大森林がありますから」
『…………ハイ』
再度、口論ではユーリに勝てないと悟ったリリーであった。
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