第15話 再会

 二ヶ月後……


 タロン王国第二の都市ターレ。その冒険者ギルドのバーカウンターでショーマは一人酒を飲んでいた。


 今、ショーマの目的地は北西の小国アトラカにある遺跡だ。そこに古代ゴーレムが眠っているという情報を王家の資料から手に入れたのだ。

 そこで、随伴する剣士を募集しているのだが、基準をみたす応募がなかなか来ない。


「赤渡航票を持った剣士をお探しで?」

 と、ある剣士が隣に座ってきた。

「越境するんでね。それが第一条件で……」

 と、ショーマはそこまで言って相手を見た。

「私は紫のやつを持っている。十分だよね? ショーマ」

 そこに座っているのは紛れもなくハイヤードだった。魔王と戦った後、彼は倒れてしまったので、それ以来の再会である。


「ハイヤード! どうしてここに?! 聖剣はどうした?」

 ハイヤードが持っているのは何の変哲もない直剣だった。

「休暇を取ったんだ。魔王を倒したからね」

「そうなんだ」

 ショーマは場の雰囲気があの『勇者が来た!』という感じではないことに気づいた。

(言ったら悪いが、こうしてみるとハイヤードは普通の剣士に見える。聖剣の御威光がそれだけすごい、ということなのだろう)


「ところで、どうして黙って城を出たんだ? 祝勝会も出ずに」 

 と、自らも酒を注文してハイヤードが聞いた。

「そりゃあ、お前もレフティも倒れて出られない祝勝会なんて気まずいじゃないか」

「そんなこと、気にする人だったんだ……」

「それに、ヒューイは帰ってしまったし。大トレント様を送り返す仕事もあったんだ」

「それこそ、王家に頼めばよかったんだ。祝勝会に出れば受勲して名声も上がったのに」

 ショーマはぐっと酒を飲んだ。

「王家は大トレント様を焼こうとしていた」

「なんだって……」

「まぁ、モンスターの一種だからな。だから助け出して、一緒に王都を抜け出した」

「それは……すまなかった」

「お前があやまる事じゃないよ。確かにあのときは俺も怒って叫んだけど、王都兵士をアクアガイザーで蹴散らしたのは痛快だったから、もういいさ」


「とにかく、私を君の旅に連れて行って欲しい。正直、なにか楽しいことが起こりそうな予感がする」

 と、ハイヤードは爽やかな笑顔で言った。

「それはいいが、アリア姫の方はいいのか? 全快していないんだろう? たしか」

「それは別にいいさ。レフティが診ているから」

「え? なんで?」

 ショーマはキョトンとした顔をした。


「ああ! 知らないのか! レフティはアリア姫の婚約者なんだぞ? うーむ、別に非公開の話じゃないんだけど」

「え? そうなの?」

「魔法庁の大臣を歴代務めるレフティ家の御子息だぞ。地方貴族出身でたまたま勇者の才能があった私とは格が全然ちがうぞ」

「ああ……今度あった時、どんな顔をすれば……」

 それを見てハイヤードは爆笑する。

「普段どおりでいいよ。王都外に出れば、勇者の方が格上と言う決まりなんだ。私が許す」


「ところで、旅はアースゲイザーで行くんだろ? またあれを操縦したい!」

 と、ハイヤードは酔っ払いながら言った。

「いや、普通に馬車を買うのだが」

「なぜだ! あっちのほうが速いじゃないかぁ!」

「ハイヤード。ちょうどいい、お前に祈祷の作法を伝授しよう。いっそゴーレム使いにならないか?」

「いや、それは……めんどくさそうだ……」

「そうと決まったら、早速始めよう。五大精霊のご加護で魔王を倒すことができたんだ。寝る前に五属性の祈祷が出来るようにしよう」

「いや……勘弁してくれ……」


 そしてショーマはハイヤードを引っ張ってギルドを出ていった。

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精霊合体エレメンタルガイザー イータ・タウリ @EtaTauri

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