第11話 王都へ
カルフールから王都へのルートを大トレント様を乗せたアクアガイザーが飛ぶ。
もしそれを目にした人がいたら仰天するだろう。なにせ、背中に大樹を乗せた亀が飛んでいるのだ。
その様は古書に描かれた世界想像絵そのものだ。
アクアガイザーは全長十ワイド・二十メートルの亀形ゴーレムだ。甲羅の裏、本来なら足が生えている箇所に蒸気の噴出口があり、ここから蒸気を出すことによって、空を飛ぶことが出来る。
とはいえ、さすがに大トレント様を乗せて完全に飛行するのは難しい。
そこで、大トレント様が木属性魔法である『大気鳴動』を発動し、強い上昇気流を発生させて、アクアガイザーを補助しているのだ。
甲羅の中央にはコックピットがあるのだが、真上に大トレント様が乗っているので、根に覆われて外は見えない。
というわけで、アクアガイザーは無人操縦にしておいて、ハイヤードとレフティは大トレント様の枝の中に登った。
「素晴らしい景色ですね。こんな時じゃなければ楽しめたのに……」
レフティは枝で作ったハンモックに身を預けながら言った。このハンモックの作り方はホビーに習ったものだ。
「風がないのは気持ち悪いですぞ。息が詰まりそうですぞ」
と、同じく小さいハンモックに座っているホビーが呻いた。
「大トレント様をマジックシールドで覆うように言われたからね。飛行性能に差が出るからって。でも少しだけ風が通るようにしてみよう……」
そう言ってレフティは慎重にタクトを振って、マジックシールドに裂け目を入れた。
「おい見ろ! あれはサンリュー砦じゃないか?」
と、見張りをしていたハイヤードが叫んだ。
見ると、山の中腹に建ててあるサンリュー砦から黒煙が出ている。
「ということは、魔王はこのあたりに着地したに違いない」
レフティはサンリュー砦の惨状を空中から念写して資料をつくり、二つのドローンに入れた。
そして、それを王家とカルフールへ向けて飛ばした。
「ホビー! このまま王都まで飛ぶぞ。トレントに伝えろ」
ハイヤードはホビーに命令した。
「やれやれ、精霊使いが荒いですぞ」
と、ホビーは愚痴をこぼした。
◯
アクアガイザーは探照魔法で地上を照らしながら夜空を飛ぶ。
これまでに二つの砦が破壊され、二つの村が焼かれているのを見た。
魔王が単独で進んでいるので、まだ被害が少ない方だ。魔物群が到達すれば目も当てられないことになるだろう。
魔王を倒すことが出来れば、魔物は四散するはずだ。その意味でも、必ず魔王を倒さなくてはならない。
時折り探照魔法にめがけて、王家からの伝書ドローンが飛び込んでくる。
中の伝書によると王立軍は巨体に対して、何もできないまま突破されたそうだ。
他には魔王の侵攻ルートと、勇者を待望する文面が入っていた。
王都側は壁上に大砲を並べて迎え撃つらしいが、魔王三十ワイドに対して都壁の高さは十六ワイド。不利この上ない。
「魔王は私が倒すので、王都は放棄すべし」
と、ハイヤードは伝書を書いて送り返した。
そして、夜が明けはじめた頃、ついにその姿を捉えた。
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