第5話 合体
ハイヤードたちはその場でテントを張った。
魔王との対決は明日とし、彼らはその打ち合わせをした。
ショーマが手持ちのスタチューを並べた。
「俺が使えるのはこいつらだ。まずアースガイザー。そして同じ大きさのボルトガイザー」
と言って、サイの置物と雄牛の置物を指差す。
「それから、アクアガイザー。こいつは水蒸気で浮かぶことができる」
と、亀の置物を指した。
そのとなりには、見覚えのある二つのスタチューがある。
「これは人型のフレイムガイザー。そして専用のチャリオット型ゴーレムだ。合体させるとグレート・フレイムガイザーになる」
ショーマは二つのスタチューを組み合わせて、一つの人型スタチューにした。
「ターレで活躍したところを見たか? 今回はアレの二倍のサイズで造る」
「大きく出来るのですか? でしたら、いっそ魔王くらいの大きさにできませんか?」
と、レフティが興味ありげに聞く。
「スタチュー一つで造れるゴーレムの大きさには限界があるんだ。俺は二十メートル、十ワイドまで行けるがな」
と、ショーマは得意げに話した。
(属性がバラバラだな)
ハイヤードはそう思った。サイが土、牛は雷、亀が水、人型は火、チャリオットは木。普通は属性を統一しそうなものなのだが……
(属性は五大精霊が生み出す五つの自然属性と、光と闇の神々が生み出す神聖属性に分かれる。その五大精霊の加護をすべて得ようというのか?)
「大丈夫なのか? とにかく、私を魔王のコアのところに乗せてほしいんだが」
と、ハイヤードはいぶかしげに言った。
「もちろんだ。要するに高さを稼げばいいんだろ? だからゴーレムを組み合わせる。合体するんだ」
「合体って?」
レフティはさらに興味ありげにスタチューを見る。
「まずはアクアガイザー。こいつが土台になる。その上にグレート・フレイムガイザーを固定する」
彼は実際にスタチューを重ねてみせた。
そして、グレート・フレイムガイザーの両腕を横に伸ばす。
「この腕に、アースガイザーとボルトガイザーを新しい腕として取り付ける。これで完成だ」
「大丈夫なのか? 本当に……」
ハイヤードは本当に不安になった。このゴーレムに命をあずけることになるのだ。
「腕になったそれぞれのゴーレムのコックピットが拳の位置になるから、魔王の肩を掴んだときに、そこからコアへ乗り移れば良い」
「崩れたりしないだろうね?」
そんなハイヤードの問いにショーマは呆れたというような顔をした。
「なんだ? いまさら怖気づいたのかい? 無関係なこの俺まで魔王に突撃させようとしているくせに」
「いや、そういうわけでは……」
「大丈夫だよ。僕が耐ショックバフ・レベル3を掛けるから死んだりしないよ」
と、レフティが請け負った。
「そうだな……いや、すまない。君が最善を尽くしているのに、後ろ向きに考えてしまった」
ショーマはそういうハイヤードの肩を叩いた。
「当日は分かれてゴーレムに乗るからな。俺はアクア、ハイヤードはアース、レフティはボルトだ。日が頂点にまで上ったところで仕掛ける。それまでは休んでおけ」
と言って、ショーマはスタチューを袋に入れてテントを出ようとする。
「ショーマはどうするんだ?」
と、ハイヤードはショーマに声をかけた。
「合体用にスタチューを改造する。それから一晩かけて祈祷をするんだよ。マナを稼がないとゴーレムが造れないからな」
そう言い残して、ショーマは出ていった。
◯
正午、作戦開始。
三人は敵群が比較的空いている右後方から突撃した。
先頭右はハイヤードが運転するアースガイザー、先頭左はレフティが運転するボルトガイザーだ。
その後ろにアクアガイザーが地面ギリギリを飛行する。
操縦しているショーマは亀の甲羅にあるコックピットにいる。
さらに後ろには無人のフレイムガイザーがチャリオットに乗って追従している。
一団はオーガなど大型モンスターがいるところは避けつつ、ゴブリンの群れを蹴散らして突き進んだ。
「このまま、魔王と並走する。打ち合わせ通りに行くぞ!」
ショーマが緊張を気合で隠して叫ぶ。ショーマとてこんなに大掛かりな合体は始めてだ。
ハイヤードたちは魔王に追いつく所まで来た。
「魔王! アリア姫を返してもらうぞ!」
ハイヤードも叫んだ。
「ショーマ、今だ! 合体だ!」
ショーマは左右の操縦杖を同時に思いっきり引いた。
アクアガイザーが着地すると、後ろから追いついたチャリオットが甲羅に乗り上がる。
二頭の馬が合わせると、ひっくり返ってショーマがいるコックピットの後ろでロックされた。
さらに、チャリオットとフレイムガイザーが合体。
アースとボルトガイザーは後部から上腕パーツを出してバックし、甲羅に乗り上げてフレイムガイザーの肩に合体する。
アースガイザーが右腕に、ボルトガイザーは左腕になった。
合体完了したところで、アクアガイザーは水蒸気を噴出して浮き上がり、裏に付けていた二本の足を展開して地上に立った。
ショーマが名乗りを上げる。
「魔王よ刮目せよ! これぞ、精霊の力! キング・フレイムガイザー!!」
そのゴーレムは、全長二十四ワイド、四十八メートル。魔王よりも一回り小さいが、それでも今代最大級のゴーレムだ。
普通のゴーレムなら同じ大きさのものを造ってもまず自立できないだろう。だがこのキング・フレイムガイザーは水蒸気を噴射して、自重を相殺しているのである。
「ハハハッ!」
ハイヤードは思わず笑いをこぼした。
(確かに私は『魔王に匹敵するゴーレムを造って、コアの場所まで持ち上げてほしい』と言ったが、それを文字通りやってしまうとは……私の見込みに間違いはなかったな)
魔王が少しづつ、こちらに向き始めている。
(さて、問題はどう近づくかだが……)
しかし、向き直った魔王は、突然間合いを詰めるとキング・フレイムガイザーの肩に掴みかかった。
そして、ゆっくりと押しつぶそうとしてきた!
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