第4話 偵察

 ここは王都とアリュートアーク山脈の中間にあるダンス荒野。そこにはテーブルのような高台がいくつも存在している。

 三人はアースガイザーに乗って、二日間かけてこの荒野に到着した。


 高台に登ると、王都に向かって進む魔王軍の様子がよく見える。


「なんだありゃ?!」

 と、望遠鏡を覗いたショーマが叫んだ。


「三十ワイドある人型ゴーレムだと聞いたぞ。それが何だ! 確かに高さ三十ワイド・六十メートルのゴーレムには違いない。その姿は白き女神像のようで、とても優雅だ」

 だが、ショーマの声は怒りさえも帯びていた。

「しかし! しかしだ! その足は三本足! 三本足だ!」

 ショーマはゴーレム魔王を指さして喚いている。


「ふつう、巨大人型ゴーレムときたら、一体どうやってバランスを取っているのだろう? どうやって自重を支えているんだろう? 色々と想像して、検証をしてと、楽しいじゃないか! それが三本足! いきなりレベルが落ちるじゃないか!」


「それは、造った人が堅実なんだと思いますよ、ショーマさん」

 とレフティがなだめようとする。


「たしかに素晴らしいゴーレムだよ。鉤爪のある両手を広げての行進は堂々としている。だが、三本足では人型とは言わんじゃないか」


「三本だとだめなんですか?」

「異端すぎるんだよ。あれは古代ゴーレムじゃない。魔王が古代物をまねて造ったオリジナルゴーレムだろう。まさに魔王そのものだな」


「それで、これからどうする? ショーマ」

 と、ハイヤードは腕組みしながら聞いた。


「偵察だ。コアの位置を確認しないと」

 と言って、ショーマは雑嚢から小さな球と丸い兜を取り出した。

 そして球を真上に上げると、それは爆発とともに四枚羽の蜂ゴレームとなった。

 蜂ゴーレムはさらに上空へと飛んでいく。


「ドローンゴーレム! なんで君が持っているんだ?!」

 ハイヤードが驚きの声をあげる。


「じつは、ドローンというのは、俺がタロン王家に売り込んだ物なんだ」

 と、ショーマはあごひげをさすり、自慢げに言う。

「何だって?! 本当なのか?」


「いや正確には、俺の師匠が作った飛行ゴーレムを俺がもっと手軽に、長距離を飛べるように改良したんだ」


「それを王家に……?」

「『伝書、偵察、攻撃につかえますよ』って言ったら、大当たりさ。まぁ王家独占の技術にされるとは思わなかったけどな。大金をもらったから構わないが」


 そして、ショーマは丸い兜をハイヤードに渡した。

「ドローンの底に転眼の水晶玉が付いている。そこから見える風景がこの兜で見れるようになっている。被ってみろ」


 ショーマに言われてハイヤードが兜をかぶってみる。どうやら目当ての裏に水晶版がつけてあるようだ。


「うを!」

 ハイヤードが叫んだ。

「すごい!空に浮いているぞ」


「すごいだろ。これは世界でまだ、俺しか持っていないアイテムだ」

 と、ショーマは言って、ドローンに魔王の方へ向かうよう、杖を振って合図した。


 ドローンの飛行に合わせて、ハイヤードの体がフラフラし始めた。

「本当に飛んでいるみたいだ。下にコブリンやオークがうようよいる」


「魔王の魔素によって生まれたり、集まってきた魔物たちが軍勢となっているんです」

 と、レフティが言う。


 ドローンは魔王上空まで近づいた。


「コアは胸元だ。二ワイドぐらいの大きさがある。ちょっと待った……」

 ハイヤードはごくりと生唾を飲んだ。

「コアにアリア姫が浮き出ている! まるで磔にされているみたいだ。意識はなさそうだが……」


 その時、雷鳴のような音が轟いた。

「うわっ」

 ハイヤードはあわてて、兜を脱ぎ捨てた。

 魔王の雷撃で、ドローンはすうっと落ちて行く。


「あぁ! この兜は一つしかないんだ! 乱暴に扱うな」

 ショーマは兜を抱えてハイヤードに抗議した。

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