第6話 初仕事の報告
俺は帰りがけに村に寄りその辺にいた村人に巣は潰したよとだけ告げ、ギルドに報告に向かった。
行きと同じく強化ダッシュしたが、ギルドに付く頃には少し息が上がっていた。何せ荷物が重い。
受付に行き、相変わらず気怠げな女性に話しかける。
「ゴブリンの巣潰して来ました」
受付さんは何やら眉間にシワを寄せる。怪訝な目だ。
「早すぎません?今朝受けてたよね」
昼を大分過ぎ、西日が眩しいぐらいの時間だ。
「魔術で身体強化して街道走って、巣穴潰して真っ直ぐ帰って来たので」
「そ、そう。きちんと指定部位は切って来た?」
なんか困惑している。身体強化ダッシュぐらい辺境伯家では新人魔術師でもやるのだが。
「右耳ですよね。どうぞ」
布袋からバラバラと出す。大小20のゴブリンの耳だ。
「ほんとに切りたての耳だ」
うち一つを指でつまみ、切断面を観察する受付さん。
「あと、これ一応持ってきました。戦闘経験のない新人だと危ないと思うので情報提供です」
俺は大きな布袋をカウンターの上に置く。こいつのお陰で帰り道疲れた。
布を取り払う。中にはハイオーガの頭。
「えっ? えっ? へっ? ハイオーガ? これ何?」
混乱した様子の受付さん、女性には少しグロかったか。申し訳ない。
「ゴブリンの巣穴に居たので倒しました」
「ハイオーガが居たっ!? 倒したっ!?」
驚きの声を上げる受付さん、確かに人里近くにハイオーガは珍しい。とは言え、俺がハイオーガを倒したことにも驚いているように見える。
どうしたのだろう。確かに戦闘の初心者ならハイオーガは逃げることも困難な強敵だ。しかし魔術戦闘の経験を積んだ人間だと伝えたはずだが?
まぁ、大勢と話す仕事だろうし、忘れられてたのかもしれない。
何やら後ろのホールもガヤガヤしている。「ハイオーガ?」「間違いだろ」「あ、生首だ。まじだ」などと声が聞こえる。
「珍しいですよね」
「いや、珍しいというか、珍しいですけど。えーと、報酬の再交渉をご希望ですか?」
「いや、別にそういう趣旨では」
なるほど確かにゴブリンの筈がハイオーガではもう少し貰えてもいいのかもしれない。でもまぁ、そう豊かな村にも見えなかったし、別にたかだかハイオーガだし。
「良いんですか?」
「ええ、魔術を数発追加で使ったぐらいですし」
「ど、どうも。えっと、ではこちら報酬です」
お金の入った革袋を渡される。1月ぐらいは暮らせる金額だ。冒険者業は意外に楽チンだな。まぁ、一回で油断しちゃ駄目だが。
報酬を受け取った俺はギルドの隣の酒場で一杯飲む事にした。些細な仕事とはいえ、初仕事が無事に終わったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます