第5話 初仕事ゴブリン狩り
俺は依頼を受けさっそくゴブリンを狩りに向かった。
内容は村から程近い山の中にゴブリンが住み着いたので倒して欲しいというもの。村長名での依頼だ。
身体強化魔術を使って街道を走り、依頼主の村に辿り着いた。
その辺にいた村人に場所を聞き、村長の家を訪ねる。少し大きめの普通の家だ。扉をノックする。
扉が開き、中から一人の少女が出てきた。10代半ばぐらいだろうか。赤みがかった髪を三編みにして、ぱっちりした目が可愛らしい。とりあえず、村長には見えない。
「ドグラスと申します。冒険者ギルドへのゴブリン討伐の依頼を受けた者です。ゴブリンの巣の場所について詳細を聞きに来ました。村長はいらっしゃいますか?」
少女はチラッと俺の首から下がる識別票を見て、がっかりしたような顔をする。何だ素人か、と表情が語っている。仕方ないが、少し悲しい。
「村長は出ております。場所なら私が代わりに説明します。しかし、早いですね。今朝から掲示の依頼だと思いますが、馬も連れている様子はないですし」
「ああ、走って来ました」
「そ、それは……体力は期待出来そうですね」
呆れ半分、驚き半分と言った声色だ。強化魔術を使っただけなので体力の問題ではないが、わざわざ説明する必要もあるまい。
「おほん、場所ですが小川に沿って上流に……」
説明を受け、さっそく山に入った俺は小走りで進む。山中行軍の訓練は積んでいる。この程度の低山なら余裕だ。
目印の大きなクスノキを見付け、方向転換、少し進むと大きな洞穴が見えた。
洞窟の前には見張りのゴブリンが2匹いた。
氷結魔術を構築し、放つ。悲鳴一つなく、ゴブリンは凍り付く。
まだ村人が攫われたりはしていないらしいので、火炎魔術で外から焼き殺す手もあるが、万が一旅人とかが捕まっているといけないし、山火事も怖い。突入して倒すのが無難だろう。
俺は防御魔術と発光魔術を発動させ、中に入る。
少し進むと、横穴からゴブリンが飛び出して来た。粗雑な石斧を俺に向かって振り下ろしてくる。無言で襲いかかるとは中々に優秀なゴブリンだ。
しかし、ゴブリンの一撃は防御魔術の障壁にあっさり弾かれる。
ゴブリンは勝利を確信した顔から一転、驚愕に目を見開く。
俺は魔力で刃を構築し、ゴブリンを斬る。「ギュェ」と短い断末魔を叫びゴブリンは倒れる。
断末魔に釣られてか「グルォォォ!!!」「グギィギオ!!」と幾つもの雄叫びと共に奥からゴブリンが飛び出してくる。氷結魔術を構築し、放つ。10体程いたゴブリンは一撃で凍り付く。
うむ。やはり雑魚だ。
洞窟はまだ続いている。俺は足を進める。
すると一際大きな空間に出た。
そして、何かデカいのが居た。
どう見てもゴブリンではない。3メートルを超える巨体に、燃えるような赤い体毛。ハイオーガだ。手には巨大な石の剣を持っている。
ゴブリンなど比べものにならない強力なモンスターである。
爆ぜるような音を立て、ハイオーガが地面を蹴った。巨体に似合わぬ素早さで俺目掛けて突進し、剣を振り下ろしてくる。
風の唸りと共に刃が迫り――あっさりと防御壁に弾かれる。
ハイオーガの渾身の一撃なんて高位魔族の攻撃に比べれば大したことはない。俺にとっては少し豪勢な雑魚だ。
ハイオーガは踵を返し、走り出す。今の攻防で敵わぬと悟り、逃げ出したようだ。判断の早さは素晴らしい。
俺は疑似質量を纏った魔力槍を5本生成し、放つ。ハイオーガは回避を試みるが、周辺空間ごと狙った多弾同時発射だ、そう簡単には躱せない。うち1発が右脚を貫く。
ハイオーガが転倒し、地面と衝突して大きな音を響かせる。
俺は魔力槍を生成し、倒れたハイオーガ目掛けて放つ。胸を直撃し、大きな穴を穿った。何度か痙攣し、ハイオーガは完全に動きを止める。
先に進むと数匹の子ゴブリンがいたので容赦なく氷結魔術で倒す。洞窟はここが最奥のようだ。
これで任務達成かな。
いや、耳を切るんだったか。
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