お気に入りの水平線
dede
お気に入りの水平線
私は水平線が好きで、なので旦那にもどういう水平線が好きかと尋ねてみた。
でもその問いは漁師の旦那には不評だった。
「水平線に好きも嫌いもあるかよ?どれも一緒だって」
「そう?」
「考えてみろよ?俺にとって一番見慣れた光景だぞ?どっちを向いても全部水平線。退屈で仕方がない」
そこからはひたすら旦那の愚痴だ。
陸もない。鳥もいない。船もない。お前もいない。
動くものは波と雲と太陽だけ。
退屈過ぎてネットしちゃうね、と。そこは働いてほしい。
「水平線はどれも一緒。好きとか嫌いとか
結局さ、水平線じゃない別の何かを見てるから好き嫌いが起きるのさ」
それは……そう、かもしれない。
でも私の中に優劣はある。
どうにもこの話において私と旦那の意見は平行線を辿ることになりそうだった。
本当は
『水平線にあなたの船が浮かんでる光景が一番好きで、その船の解像度が徐々に上がっていくのを見てると嬉しくなるんだ』
それだけを言いたかっただけなのだけど、妙にしたり顔で持論を展開してきた旦那を見てるとイラっときたので
「そっか」
と、曖昧な相槌を曖昧な笑顔のまま打つに留めた。
冷やしていたビールとグラスの代わりに発泡酒の缶をテーブルに置く。
「お、サンキュ♪」
お気に入りの水平線 dede @dede2
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます