第6話:祖霊の古墓


 ――ダンジョン。

 それは魔素が濃い場所に発生する異界であり、その中には多くの財宝や力を強化する物が沢山眠っている。そんな特製故かこの世界に存在する冒険者達の主な収入源でもあり、自分を強くするのにうってつけな場所だ。


「……今んとこC、というかそれ以下だなここ」


 そんな事を思い口に出し、スケルトンやゴーストという下位の魔物が倒されるのを俺はただ見ながら進んでいる。


 ダンジョンには難易度を判別するランクという物があり、最低がFで最高が基本的にはS……今んとこそれにそった難易度で考えると、このCだったというダンジョンは明らかにそれより難易度が低かった。


「こんな場所で、Aランクが行方不明か……二人はどう思う?」


「……おかしい思うけど、油断でもしたんとちがう?」


「主、ほんとにAランクのが行方不明なの?」


「流石に委員長のじいさんが嘘伝えると思わないが、それだと奥行くとやばいかもな……リルは出来るだけ索敵頼むわ」


 任せてと……それだけリルが伝えるとこの場に冷気が充満し始めた。

 リルが使える魔力感知、それは広範囲に自分の分身とも言える冷気を放出しその範囲内にいるものを察知することが出来る技だ。

 

 普通と違って魔力を使う必要があるのだが、それに見合った効果はあり……すぐに何かを見つけたのか、リルが口を開いた。


「幽霊ぐらいしかいない、それも無害な奴」


「……じゃあまじで何がいるんだよここ」


 そうぼやいてから適度に湧いてくるアンデットを二人に任せて進んでいき、やってきたのはこの場所の本来の最下層。

 何がおかしいって、ここまで来たのに一切異変が無いことが変だ。

 事前情報を信じるなら、ここではAランクの冒険者が行方不明になってるわけで……今までの難易度を考えるとそれだけは絶対にあり得ない。


 それに、その行方不明になった冒険者の死体らしきものすらなく……リルの気配察知でも何も見えたら無いという状況、既に異変が去ったのかそれか――と、考えていたときだった。


 この奥地とも言える広い空間に一瞬だけ魔力の波を感じ――。

 どろりと泥のように粘り着くさっきに襲われて、次の瞬間には鎌が俺の首元に迫っていた。

 

「主!?」

 

 いち早く気づいたのは、リル……だけど少し離れた場所にいたせいか俺の元には間に合わない。だけど俺は瞬時に屈むことでそれを既の所で避けた。


「おっと。狩れた……と思ったのですが」


 それと同時に、奥から誰かが姿を現した。

 声のした方に目を向ければ、そこには白衣を着た血色が悪そうな男がニヤつき立っていた。血色の悪いそいつの側には六人ほどのアンデットがいて、その頭上には……。


「よく私の最高傑作の攻撃を避けれましたねぇ」


 見たことのない黒いローブ姿の鎌を持った骸骨がいた。

 大方……アレがさっきの攻撃の主だろうが、明らかに見たことない新種の魔物。気配も一級品であり、Aランク以上は確実だ。


「……なぁあんた、そこのアンデット達ここに来た冒険者か?」


 顔や体は腐って無く、死んだばっかりの様子のアンデット達。

 それは俺が貰った捜索願の顔や姿そのもので……この人達はアレにやられたのがなんとか無く想像出来た。


「えぇ、まあはい……私の素晴らしき実験材料ですね――それで、貴方は何者ですか? この子の攻撃は本来なら察知できるものではないのですが……」


「ただのギルマス……で、一つ頼みたいんだがそこの人達解放する気あるか? 俺としては遺品と死体回収できればいいから敵対する気ないんだが……」


「……貴方、頭おかしいんですか?」


「いや、それと戦うの怠いから依頼だけでもって感じだ」


「――嫌ですねぇ。これらは私の実験材料、それにこの子の攻撃を避けるような者など、興味深いですし……貴方達の死体も欲しいのです」


「そうか――なら交渉決裂、頼んだわ二人とも。あ、死体は出来るだけ傷つけない方針で頼む」


 端から要望が通るとは思ってなかったが、これなら仕方ない。

 こういうのが相手なら俺がやるより二人の方が楽だろうし、ここは二人に任せるとしよう。


「ん、了解だよ主」


「少しは楽しめるとえぇわぁ」

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