第9話 ハンバーグ
貞操逆転世界のスーパーは僕の常識が通じなかった。僕達は今、誰も居ない場所を通っていた。そう、誰も、
「...........あの.........安すぎません?」
「「.......うん」」
最寄りのスーパーに来た時に、店長らしき人に無理矢理案内されて僕達は裏口から入って、男子専用スーパーで買い物をしていた。
「卵が10個で100円、鶏肉1kg500円、惣菜基本無料、お菓子は10個まで無料」
「「........」」
四宮さんは食品売り場で目を輝かせており、牧城さんはお菓子売り場でカゴを満タンにしていた。少し気になったので、
「店長さん?大丈夫ですか?」
「はい、売り上げは男子が側にいる効果で跳ねるように売れていきますので、その対価としてこの場所を安く提供できています」
「.......そうですか」
若そうな店長は笑顔で答えてくれたが、僕達からしてみれば安くてありがたいが、定価で買わないという罪悪感が少しある。
「その...もし僕が本来の入り口から入ったら」
「はい、多分襲われる事は無いですけど、婚姻届と通帳を大勢から渡されると思いますよ」
学校を出て歩道を歩いている時に、数人の女子から見られている感じがしたが、二人が怖い顔で守ってくれたので、何も起こらなかったが、
「一人だったら」
「はい、私でも監禁しちゃいそうです」
「ですよね」
「はい、良いんですか?」
「ダメですよね?洋君?」
冷たい声がしたので、振り返ったら四宮さんが満帆のカゴを両手で持ちながら怒っていた。普段なら落ち着かせるが、
「......大丈夫ですか?」
「大丈夫ではないです」
店長が少しずつ近づき、手を握ろうとしてくる。それを見てカゴを静かに置き、
「店長さん、私〇〇〇〇です」
「............少し、用事ができたので失礼します。お会計は奥にあるのでそこにお越しください」
店長は四宮さんと少し話して冷や汗をかきながら去って行った。声は聞こえなかったが、顔は笑っていた......四宮さん、
「洋洋洋、これ美味しいよ」
「ん?、グミ?」
「これ今日のおやつ」
「良かったね」
最近、褒められるのが好きな牧城さんは何か発見したら頭を僕に向けてナデナデを要求してくる。今日で言えば、消しゴムを忘れた僕に真っ先に渡してくれた牧城さんはお礼にナデナデを要求した。
「美味しそうだね」
「うんうん.....一緒に食べよ」
「分かった」
「.....................お菓子見つけただけだよね」
牧城さんの頭を撫でるデメリットは四宮さんが目を虚にして諭してくる事だ。
「ごめん」
「別に怒ってないよ。ただ、奈々未に何かした時は........................ね!」
四宮さんは頭を下げてナデナデを要求してきたので、僕はそれに答えてナデナデした。みるみる笑顔になっていく四宮さんは結構可愛いかった。
「それじゃあ、お会計行こっか?」
「「うん、ラジャー」」
僕達は店長の言葉通り奥に行き、一台のセルフレジを見つけてお会計を済ませた。食品関係は四宮さん、お菓子や雑貨関係は牧城さん、僕は............立っていただけ、あれ?やばくない、
「やっぱり安かったね」
「合計....3000円」
全員が荷物を持つ量になってしまったが、安い物を買う幸福度は結構良かった。重い荷物は僕が持ち、その他を二人に任せた。
「今日はハンバーグかな」
「お肉お肉お肉」
「僕の好物だ」
「「本当!!!」」
二人は一瞬で顔をこっちに向けてハンバーグについて聞いてきた。好きな形や焼き加減、付属の野菜や調味料など、
「リンリン......私も手伝いたい」
「大丈夫?」
「うん」
料理はあまりにしないと言っていたが、これからは料理当番を行うので、勉強の為に四宮さんにお願いする姿に、感動した。
僕達は何事もなく寮に戻り、部屋に入り買った物を冷蔵庫や棚に入れた。まだ15時くらいだったので、牧城さんが買ったお菓子を食べながら皆んなでアニメを見た。
「......やっぱり、爽快ね」
「同感」
アニメを数話見て、二人は料理に移った。僕は力仕事に向けて手を洗った。四宮さんが、挽き肉を捏ねてほしいと頼まれたので、僕は常備していたボールに挽き肉を入れて捏ねた。四宮さんが常備している皿や料理道具などを全て昨日、洗っていたので少し手伝い今がある。
「奈々未、玉ねぎは少し大きめのみじん切りね」
「うん」
まるで二人は親子の様だった。四宮さんは牧城さんが気になってか、ずっと牧城さんを見ており、本人は真剣そのものだった。
挽き肉を捏ねて卵などを入れて焼いた微塵切り玉ねぎを入れ、焼くのは四宮さんに任せた。その間に僕は風呂掃除と風呂を沸かして、牧城さんは食事の準備をしていた。
「できた......頑張ったね奈々未」
「うん...リンリン」
二人は笑顔でハグし合い両者を褒めていた。そして、僕達は食卓を囲んでハンバーグを食べた。やはり、自分達で作った料理は倍以上に美味しかった。何の倍かって?知りません。
「(..............洋君が想いを込めて捏ねた肉)」
「(ジュワジュワ、美味しい.......お肉)」
僕達は食事を談笑しながら楽しんだ。母さんは今何してるんだろうな?ふと好物のハンバーグを食べて母さんの顔が浮かんだ。
有野家
「....................無」
有野志保が食事している机の上にはある紙が綺麗に置いていた。
新山高校....................
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます