第7話 即決委員長
今日は朝のホームルームを1限目の終わりまで行う予定だったので、僕達は筆記用具を準備して待っていると、
スーツを着た綺麗な人が入って来た。黒髪ショートの少し怖そうな先生だった。少し僕達の方を睨んでいたが、多分牧城さんが机と一体化しているせいであろう。
「..........起きて」
「......ん.....、分かった」
牧城さんも素直に起きてくれたので、一安心と思っていたが、何故か横からの視線が怖かった。
「.....ごほん..、それではホームルームを始める。私は君達の担任であり独身の佐々木涼子だ、まずは自己紹介をしてもらう」
佐々木先生は自分の自己紹介を終えて、周りを見ながら男子の数を数え、
「男子は.......5人か、私も舐められたものだな」
先生はまずクラス名簿を見て毒づいた、
「あの......自己紹介は?」
「ああ、男子だけな。女子は休み時間にでも勝手にしてくれ」
前に居る女子生徒立って佐々木先生の苛立ちを抑える為に、自己紹介を促したが、何故か男子だけが自己紹介をする羽目になった。さっき発言した女子も頷きながら座っているし、
「では.........数藤君からお願い」
「はい、俺の名前は数藤明です。趣味はランニングです」
「おお、先生も毎朝ランニングしているからどうだ...今夜にでも」
数藤君はザ・スポーツ少年見たいな坊主姿の体がゴツい人だったが、佐々木先生の言葉に何も返さず静かに席に座った。次は、
「.............小林雪です。よろしくお願いします」
「うむうむ、守ってやりたい系の美男子だな、先生が24時間パトロールするぞ」
「.......大丈夫です」
少し小柄な小林君は、先生の言う通り守りたくなるよな可愛い少年だった。小林君はこの世界でもモテモテだろうな。
「...........ん!清水と山川はどうした」
後ろから見れば分かっていた事だが、女子が20人ほどに対して男子が当然少なかった。 正直、小林君が挨拶するまでは2人と勘違いしていたが、
「お、先生もうっかりしていた。メールで自主退学の連絡が来ていた........うっかり」
佐々木先生が壇上で自分の頭を小突く姿を僕達は苦笑いで流した。まさか二人も初日で辞めるとは..........恐ろしい世界、
「では最後に.......有野、見せてくれ」
「僕の名前は有野洋です。趣味は読書です。これからみんなと仲良くな」
「「ダメ」」
自己紹介の典型的な終わり文章を四宮さんと牧城さんに止められて、僕は強制的に着席した。
「ダメだよ。仲良くなろうは」
「洋.......離さない」
周りを見れば大半の女子が僕達を見ていた。もしかして自己紹介間違えたかな?
「有野、見込みがあるな。先生が養っ」
「「大丈夫です」」
二人が席を立ち先生にそう言った。
「落ち着け、冗談だ。少し遠回りしたがホームルームに戻る」
何とか二人を席に座らして落ち着かせたが、多分この二人と佐々木先生は相性があまり良くない。
「では、まず1年生は約120名だが今男子と同居できている女子は運が、ずば抜けて良い。3年間男子と暮らせない女子達を私は大勢見てきた」
分かってはいたが、この教室内でも男子は3人しかおらず、女子だけでの寮暮らしも当然出てくる。だが佐々木先生は少し笑っている。
「しかし、チャンスが無い訳ではない。人間には相性がある。相性が違えば......」
「「「「「私のチャンス」」」」」
女子の大半が佐々木先生の言葉に感銘を受けたらしい。しかし、男子と同居できている残りの女子と言えば、
「「小林様.........捨てないで下さい」」
「あわあわあわ......落ち着いて下さい」
小林君の同居人は両方が茶髪ロングの双子っぽい綺麗なお姉さんという感じだ。二人とも小林君に泣きついていた。小林君は慌てながら宥めていた。一方、
「おい、数藤」
「はい」
「私達から逃げないよな」
「勿論です」
「ならいい」
数藤君の同居人は片方が金髪ロングの少し怖い美少女、もう片方が無口だったが怖そうな黒髪ショートの美少女、そしてこの二人も同じく、
「............嫌嫌嫌嫌嫌」
「洋......ご飯楽しかった。まだ一緒に居たい」
僕の同居人は片方が「嫌」を連呼しており、片方は涙を堪えながら制服を掴んでいた。
昨日会って、この二人と一緒に居て楽しかった。それは、僕の本音だ。
「四宮さんは優しくて頼りになるし、牧城さんは僕が居ないと起きれないでしょ」
「洋君」
「洋」
二人とも笑顔に戻ってくれたので一安心だが、この原因となった人は、
「.........幸せ.......食えないな」
僕達を見て苦虫でも噛んだ様な表情をしていた。これが先生で良いのか?と考えたが、面白い人ではあるので、これはこれで良いのかな、
「取り敢えず、ホームルームは係と委員長を決めるが、委員長は有野とペア二人、係は私の方で割り振る」
「いやいや、まだ」
「有野........二人を見ろ」
佐々木先生に抗議しようとしたが、佐々木先生は指を指してその方向を見てみると、小林君は泣く同居人達に手を焼いており、数藤君は............調教されていた。
「分かったな」
「何となくは」
一瞬にして委員長が決まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます