第5話 肉うどん

 初めてアニメを連続で12話見た。1話目で引き込まれた僕と四宮さんは、タブレットに映るアニメ夢中になり途中で「「次次」」と言う様になっていた。


 アニメを見終わって牧城さんは誇らしげで、四宮さんはサイトで今日見たアニメの小説版を全巻購入していた。


「良かったよ、牧城さん」

「良い発見ができたわ、奈々未」

「洋もリンリンもオタク道を歩き出した」


 四宮さんは牧城さんを奈々未と読んでいたが、こんな短期間で仲良くなれる彼女達を見て少し微笑ましく思った。ギスギスしていない空間は僕にとっても心地良かった。


「暗くなってきたから、私は夜ご飯作るから奈々未はお風呂入れてくれない?」

「ラジャー」


 牧城さんは命令を受けてタブレットの電源を切ってお風呂場に向かった。四宮さんは台所に向かったので、


「僕も手伝うよ」

「え..........それじゃあお願いしよっかな。夜ご飯はうどんだよ」

「分かった」


 僕も台所に行き、四宮さんが湯をフライパンで沸かしてくれているから、僕は言われた通りに冷凍庫からうどんを取り出し、冷蔵庫からお肉とネギを持って行った。


「それじゃあ始めるね」

「「お願いします」」

「ん?」


 僕の横にはお風呂場から帰って来た牧城さんが居て、料理を手伝う感じらしい。流石に三人は台所が狭くなるので、


「牧城さんはテレビ見てていいよ」

「ダメ、手伝う」


 僕のTシャツをまた少し掴んで可愛い駄々をこねていたので、「分かったよ」っと言って僕達は、四宮料理教室の門下生となった。


「洋君はネギを安全に切ってくれる?奈々未はお肉を食べやすく手で分けてくれる?」

「「はい」」


 実家時代は母さんが居ない時に一人前程度は自分で作る時もあったので、包丁などは意外と大丈夫、横の牧城さんはずっと肉をツンツンしており、


「どうしたの?」

「生のお肉初めて触るから緊張して」

「大丈夫?」

「......!!、洋、手貸して」


 よく分からなかったが、包丁を置いて右手を牧城さんに貸した。すると、お肉を持っている手を僕の手に置いて、間にお肉を入れた握手になった。...........???、


「もううどんは大丈夫だから後は汁.....!!」


 分かっていましたよ。今握手をしているが、料理をする人からしたら遊んでいると見られても何も言えない。だから僕は、


「ごめんなさ」

「私も握手したい、奈々未だけズルい」


 謝ると同時に左手を握って来た四宮さん、怒っていたのは仲間外れにされた寂しさからだったんだな、でも今の状態は両手で女子と握手している。


「「「.............」」」


 沈黙が続いて少し手汗も出てきたので、僕は少し無理矢理握手を解いて、ネギを切る事に集中した。


「(暖かくて気持ちいい)」

「(肉どこいった?)」


 両者は料理に戻って、しばらくして肉うどんが完成した。初めての共同作業は意外と楽しくできたので1日目としては最高だった。


「「「頂きます」」」


 僕達は肉うどんを無言ですすった。美味しさのあまり、言葉すら忘れてしまう程に手が止まらなかった。特に出汁が美味しかった。


「「「..........」」」


「ご馳走様」


「「え」」


 時間にして数分程度、牧城さんが食べ終えた。汁まで全部飲み干し、こっちの器を見ている気がした。


「洋.......一口」

「ダメ」

「ケチ........リンリン一口」

「別に良いけど」


 良いんだ?....四宮さんは自分の器を渡して牧城さんはしっかり一口すすって返却した。四宮さんは今日会ってクールで料理上手で面倒見が良くて.......好感が持てる人だったが、優しいも加える事になった。


「「「ご馳走様でした」」」


 僕達は食べ終わり、洗い物は月曜日当番の四宮さんがする事になった。


 料理、洗い物、掃除は曜日別に分けて月、火、水曜日を四宮さん、木、金曜日にを僕、土、日曜日を牧城さんにして、手が空いてるなら他の人も手伝う事にしていた。


「洋君はお風呂入っていいよ」

「え....男が先って嫌じゃない?」

「全然良いよ。それに私は洗い物で奈々未にも手伝って貰うから先に良いよ」

「ならお言葉に甘えて」


 僕は部屋に行ってキャリーケースからTシャツ半パン、靴下、パンツを持って風呂場に向かった。そして、脱衣所に入って服を脱ぎ、風呂場に入った。


「まずは」


 シャワーで体や頭を洗い、さっそく湯船につかった。慣れない湯船だがこれから慣れていく為に少し長く入った。


「ふぅ.......」


 僕は脱衣所に出て服装を整えてリビングに向かった。すると、仲良く洗い物をしてる二人を見て又しても和んでしまった。


「「あ、出て来た」」


 二人は僕を発見すると、近くに寄って来て、顔を近づけてきた。初めての体験だったので少し冷や汗が出てしまった。


「その....ごめんね。これが私の夢の一つだったから」

「夢?」

「男子の風呂後の匂いを嗅ぐのが」

「良き匂い、洋ナイス」


 二人とも親指を立てていたが、少し恥ずかしかった。こんな美少女達に匂いを嗅がれてこれは夢だろうか.........貞操逆転世界も夢みたいな物か、


「もう大丈夫、それより二人も入ってきたら」

「分かった、それじゃあ洋、リンリン」


「待っっっっっっって、奈々未」


 四宮さんはヘットロック気味に牧城さんを捕まえて、自分が先に風呂に行くんだ.....みたいな感じでいた。


「二人とも喧嘩しない」

「ごめんなさい」

「..................え!私被害者」

「あ、ごめん」


 話し合いをして仲良く二人で風呂に入る事になった。提案は僕がしたが、二人とも悩んで妥協的な感じなったが、受け入れてくれた。二人が去ったリビングが少し広かった。



「(よよよよよよよよよよよよ洋君の液)」

「(...............眠たい)」




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