第4話 同居人

 今日は入学式だけであり、明日から授業が始まるのだが、僕らの部屋では違う事が始まりそうだった。


 長机に僕と牧城さん、その前に四宮さん。現在この座り位置でいるが、これが争いの元になっていた。


「牧城さん、起きて。そしてこっちに来なさい」

「...........」


 四宮さんの呼びかけにも無視して僕の肩で幸せそうに寝ていた。横を向けばすぐ牧城さんの綺麗な顔があるので少し恥ずかしかった。


「四宮さん、多分寝てる」

「来た時も寝てたし、男子の肩で寝るなんて..............羨ましい」

「最後なんて言ったの?」


「そそれより、今日はゆっくりできるから今後の生活の話しない?」

「一人寝てるけど、それが良いね」


 僕達二人は今後生活する上での決まり事を相談する事にした。しかし全然話が進まない時が突然来てしまった。


「私と牧城さんで全てするから有野君はゆったりしていて」

「それは申し訳ないよ」

「でも..........」

「僕も入って三人で分担しよ」

「うん..........好き」

「ん?」


「何でもないよ」


 決まった事は、料理、洗い物、掃除、は曜日別で担当してその他は自己判断で行う事にした。洗濯物は、


「洗濯などは別々で良いんじゃない?」

「私、洗濯が趣味だから私に任せて」

「え、でも」

「お願い、洗濯物が私の生き甲斐なの」


 必死に頼み込んで来る四宮さんに負けて洗濯物は任せる事にした。その分、僕と牧城さんは違う所で頑張る事で決まった。


「それじゃあ一旦終わって、まだ部屋を見てないから見る?」

「勿論、牧城さん起きて」

「..............」


 全然起きない牧城さんをソファーに寝かせて僕達は部屋を探索した。3LDKの部屋にはトイレが二つ、綺麗な風呂場と洗濯機が一つ、小さな物置部屋が一つ、そして個別の鍵の付いた部屋が三つ、そして僕達が居た長机や台所、ソファーや大きなテレビを置いた大きめのリビングでこの部屋の探索を終えた。


「見終わったからそれぞれ荷物運びましょ」

「分かったよ」


 僕はキャリーケースとリュックを学校関係者が部屋まで持って来てくれていたので、自分の部屋の前に付いていた鍵を取って部屋を開けて入った。


 部屋の中はベットと勉強机や椅子、クローゼットなどがあり、窓の外を覗いてみると綺麗な校舎が見えた。明日からあそこで高校生活を始めるので............緊張してきた。


 少しゆっくりしてスーツを着替えてTシャツと半パンになり終わった時に、



「有野君......終わった?」

「うん、終わったよ」

「なら、私は昼ご飯の準備するから牧城さんの荷物、運んでほしいの?ダメかな」

「全然良いよ。その為の男子だからね」

「(大好き)」


 僕は部屋を出てリビングに来て四宮さんもスーツを脱いでラフな服装になっていた。

 そして、置いていたキャリーケースとリュック、何故かフカフカマットレスが置いてあったのでそれを持って牧城さんの部屋に入り置いた。多分、3部屋全て変わらないのだろう。牧城さんの部屋を見て全部僕と一緒の構成だった。


「終わったよ」

「ありがとう、あの子はまだ寝てるから、今からチャーハン作るから待っていてね」

「食材とかもあるんだね」

「うん、冷蔵庫に予め入っていたからそれで作るよ。それで今後はさっき説明書で読んだんだけど、月々に学校から15万円渡されるから、それで食料や日用品を買うんだよ」


 四宮さんは絶対に頼りになると会ってまだ浅いけどすぐ分かった。料理もできて優しそうで少し怖い時もあるけど良い人だな、


「...................あ、アニメアニメ」


 起きた牧城さんはソファーの周りをウロウロしながら何かを探していたので、


「どうしたの?」

「タブレット」

「ああ、部屋にあるよ」

「一緒に」

「分かったよ。一緒に行こっか?」


 牧城さんは僕のTシャツを少し握りながら歩き出したので僕もそれ連れて一緒に歩いた。 少し気になったのは台所の方で、包丁で何かを切る音がだんだん大きく聞こえてきたので、振り返ったが、笑顔の四宮さんがこっちずっとを見ていた。


「行こ」

「ああ、ごめんね」

「良いよ」


 僕は部屋の鍵を取ってあげ、牧城さんに渡して部屋に一緒に入った。タブレットは多分リュックにあると思うので、リュックを牧城さんに渡して、


「あ、あった。ありがとう.......誰さん?」


 ですよね。あなたはずっと寝ていて部屋の構成やみんなの名前を知らないよね。


「僕は有野洋だよ。そしてもう一人の女子が四宮凛花さんだよ」

「洋ね、覚えた」


 名前で呼ばれるのは母さん以外そんなにいなかったので、少しむず痒かったが、仲が深まるならそれで良い。


「洋洋.......これ観よ」

「ん?」

「異世界系のアニメ」


 僕はアニメには少し疎いので戸惑ったが、牧城さんが一緒に見て欲しそうに目を輝かせていたので、床に座ってタブレットをリュックで立てて一緒に観た。......夢中で観てしまった。




「..........................有野君?!」


 1話目が終わって歌が流れたタイミングで四宮さんがゆっくりドアを開けた。顔を見たが、当然の様に怒っていた。しかし牧城さんにさっき怒っていた時とは違い、目が虚でフラフラしながら揺れていた。


「私は喜んで欲しくてチャーハンを作っていたけど、アニメ(牧城さん)の方が大切なんだね」

「違うよ。そんな事は」

「分かってるけど....................寂しい」


 四宮さんは目を少し濡らしていたので、僕は持っていたハンカチで優しく拭いて、しっかり謝罪した。


「....分かった、ならご飯食べてから一緒に見よ」

「リンリンも見るの?」

「リンリン?」

「洋とリンリン」


 牧城さんは僕と四宮さんを指差してそう言った。


「もう名前呼び...........私も洋君って言ってもいいかな?」


 四宮さんは上目遣いにお願いしてきたので、ここで断る事はしないけど、もし断ったら怖いので、


「良いよ、四宮さん」

「うん、ありがとう」


 ぐぅぅぅぅぅ.......、


「お腹すいたリンリン」

「はいはい、食べましょうか」

「「うん」」


 僕達は四宮さんが作ってくれたチャーハンを美味しく食べて、仲間外れにあった四宮さんへの償いとして、リビングで一緒にダブレットでアニメを観た。


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