第六話 どこまでが可能で、どこまでが不可能なのか


 かねてより疑問に思っていたことがある。


 軍リベ世界における魔法の限界値は、どのようなレベルに設定されているのか?


 わかりやすい天井として、その存在を確立させている主人公、ゼロス・アルヴィエントは作中にて、このように語っている。


『俺の力はまだ、こんなもんじゃない!』


『皆を守るためなら!』


『俺は、無限に強くなる!』


 これを制作者達のメッセージとして受け取った場合。

 魔法で再現出来るイメージの限界は、設けられていないということではないか?


 つまり。


 発動者当人が、再現可能であると思い込んだのなら。

 いかなる現象であろうとも、再現が出来てしまうのではないか?


 ……そんな仮説に対して、俺は確信を抱きつつある。


 イリア達が持ち帰った戦勝報告も、かなり大きな要因となった。


 もしこの仮説が真実であるのなら。

 詰み確定の状況を、簡単にひっくり返すことが出来るだろう。


 ……さておき。


 イリア達の帰還後、砦を経由するルートを確保した我々は火山へと人を送り、目的の資源……

 大量のと、を確保した。


 それからしばらくして。


 我々はシャーロットの邸宅に集合し、おそらく最後となるであろう作戦会議を開く。


「まずは皆の進捗を教えてほしい。……シャーロットさん、例のブツは?」


「はい、滞りなく。今のところ事故なども起きてはおりませんわ」


 これまでなんの役割も見出せなかったシャーロットだったが、実は危険物に対する扱いが非常に上手かった。


 よって彼女には、ある物の生成を頼んでいたのだ。


 肥料の混ぜ物……硝石。

 この世界においては、どこの家にもある……炭。

 そして今回、火山近辺で入手した資源の一つ……硫黄。


 これらを混ぜ込んだものと言えば、ピンと来る人も多いだろう。


「じゃあ続いて……リーナさん。頼んでた兵器の製造だけど、進捗はどんな感じ?」


「もう全部作り終わったぜっ! 動作確認も勝手にやったけどよぉ、なんっにも問題ねぇ! 全部カンペキだっ!」


 さすがチート職人の一人。

 この人の仕事については、なんの心配もない。


 それは彼女に関しても同じことだった。


「ネフィルさんも、問題ないよね?」


「と~ぜんっ、じゃろがい! 注文された品は確かに、初めて作るようなモンばっかじゃったけどの! けど、やってみたら余裕じゃったわ! やっぱウチって天才じゃのう! ぶははははははははははは!」


 自画自賛しながらデッカい胸を張る、ドワーフの職人(ロリ巨乳)。


 こちらのチート職人に関しても、その仕事を疑うつもりは毛頭ない。


 そういうわけで、次へ。


「では続いて……マリアさん、戦術立案の方は順調かな?」


「はは。当然だとも。今こうしている間も、アイディアが溢れて止まらん」


 彼女は近く勃発するであろう一戦にて、現場指揮を行う予定となっている。


 要するに戦術を決定し、どのような形で敵方を討つのか、その責任の全てを負う立場ということになるのだが……


 どうやらプレッシャーなど感じてはいないようだ。


「まったく、お前という奴は本当に最高だな。こんなにも胸が躍る日々は生まれて初めてだ。敵軍のド肝を抜く瞬間が、今から楽しみでならん」


 未知の兵器と、未知の力を以て、誰も見たことのない戦場を創り出す。


 そんな仕事に彼女は己を昂ぶらせているようだった。


 ……原作をプレイしてたときも思ってたんだけど、けっこうな戦闘狂だよな、この人。


「え~、最後にイリア。君についてはまぁ、体調管理も万全だし、特別な問題はないよな」


「はい。三秒後に敵がやって来ても、余裕で対応出来ます。わたし、最強ですから」


 どやぁっとした顔のイリア。実に可愛い。


 ……さて。


 チート主人公不在の穴は、確実に埋まりつつある。


 ゼロス・アルヴィエント。

 彼がヒロイン達から奪った役割を、彼女達は十全に果たそうとしているのだ。


 シャーロットは危険物を扱いつつ、全体の総司令を担う。


 リーナとネフィルはチート職人としての手腕をいかんなく発揮。


 マリアは戦術家、あるいは戦士として、縦横無尽に戦場を駆け回る。


 そしてイリアはこちらの切り札として、ゼロスに代わりに無双してもらう。


 ……ちなみに、俺の役割だけど。


 部屋に引き籠もって、ガタガタ震えながら、戦勝祈願、


 それだけだ。


「うん。みんな本当にお疲れ様。準備は九割九分、整った」


「……完全に終わったというわけでは、ないのか?」


「まぁ、そこはね、俺個人のやりたいことがまだ終わってないって感じかな」


 この言葉に皆が首を傾げた。


「やりたいこと、とは?」


「ウチの出番かのう!?」


 目をキラめかせながら立ち上がるネフィルさん。


 実のところ、間違ってない。


 件の実験には彼女の協力が必要なのだ。


「火山周辺で採ってきてもらった二つの資源。そのうち、硫黄については今まさに加工してもらってるところだけど――」


「あ、そういえば。銅はいったい、何に使うんです?」


「あんなもん、なんの役に立つのじゃ?」


 イリアとネフィル。二人の問いは皆の総意だったらしい。


 そんな彼女等に、俺は返答する。


 出来るはずがないことを。


 再現不能であろう技術に対する、挑戦を。


「――――をね、作ってみたいと思ってるんだ」






 ~~~~あとがき&お願い~~~~


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 今後の執筆・連載の大きな原動力となりますので、是非!

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