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 ゲノスとは、突如として湧いた、突然変異の人間のことであり、はみ出しものとして塔区とうくの外に町や村をつくり、生活している人類のことであるが、ゲノスについてはいまだ詳しくはわからずじまいである。


 軍が立ち入り制限区域から撤退した後は、ゲノスや、浮浪者による資源漁りが更に悪化し、増えた。死体を見るのは珍しくもない、日常茶飯事である。


「もういいか。 後はドライヤー使うから、待ってろ」


 絢翔あやとはレイラの髪を拭き終えると、ベッドから降り、発電機へ向かう。


「いいよ、勿体ないんだから。 シアグル貯めとかないと。 メーターが動かないからって、せっかく今日はランタンで過ごしたのに」


「メーターが動かないのも納得の濁り具合いだったな。 粉塵が凄かった。 だけどレイラが濡れた髪のまま寝て、風邪ひく方が困るからな」


 シアグル集粒フィルターの外部接続部の部分破損と粉塵のせいで、粒子がなかなか貯まらない。シアグル粒子が集まらないと、シアグル粒子を電気エネルギーに変換して蓄電する蓄電池も貯まらない。

 レイラはドライヤーはいつも不要だと言うが、絢翔あやとのこだわりかドライヤーを欠かさない。


 今の地球は、冬は厳寒げんかんで、節約しても蓄電池を大量に使うから、レイラが夏は控えたいと常々言っているのにだ。


 天井のライトに明かりが灯ると、ドライヤーの音がレイラの耳元で鳴った。シアグル粒子さまさまだが、いつ外部接続部分が壊れるともしれない懸念は拭えない。キャンプ地に置いてある小型発電機を持ってくることも、視野に入れておこうと本気でレイラは思った。

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