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 部屋の一番奥にあるシャワーブース、お湯も出る優れものだが、今日はお湯が使えない日である。時々錆混じりで鉄臭いときもあるが、シャワーを浴びられるだけでも有難いことである。文句など言っていられない。


 有難いのは石鹸や洗剤の類いは殆ど揃っていることだ。むしろ贅沢だ。軍の元キャンプ地に沢山残っているもので、時々調達しに行っては、まとめて持って帰ってくるのだ。


 レイラは長く伸びた癖の強い髪を大雑把に洗う。今が夏で良かったとレイラはしみじみ思う。冬ならば、お湯の出ない日にゆっくりシャワーなんて浴びれない程に寒い。


 環境汚染が進み、粉塵が舞い上がっているせいで日が届きにくく、夏でも対して暑くはない。むしろ寒いくらいだ。


絢翔あやと! 上がったよ、タオルー」


 シャワーブースから声を張り上げた。しばらくすると、ゆっくりと歩いてくる靴の音が響くき、シャワーブースにひょいと絢翔あやとが顔を覗かせた。


「いつも入る時に、一式持っていけっていってるだろ、仕方ないな」


 シャワーブースを遮っているカーテンの端からタオルが差し出された。文句を垂れ流しながらも持ってきてくれるからつい優しさに甘えてしまう。


 適当に拭いてからカーテンを勢いよく開けると、絢翔あやとはまだそこにいて、着替えを片手に立っていた。気を利かせて着替えまで持ってきていたらしい。


「……おい。 隠すとかしろよな。俺は...いや、まあいい」


 今度は呆れ顔で見下しながら、まじまじとレイラの裸を採点でもするかのように、上から下まで見ている。


「ば……ばかじゃないの! わざわざそんなに見るなよ」


「だから見られたくないなら隠せ」


 小さい頃から散々見られ慣れてるはずなのに、つい恥ずかしくなってしまうのだ。絢翔あやとの手から着替えを奪い取り、見上げて精一杯に睨んだ。


「はいはい、ご飯できたから早く着替えてこっち来なよ」


 途中から面白がって見ていたくせに、いつもの気の抜けるような優しい笑顔になったり、レイラの前から去っていった。

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