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 レイラは浅い意識の中、身体が大きく揺れている違和感をぼんやりと思考していた。


「起きろ。 レイラ、起きろ」


 煩く飛び込んでくる声に、眠っていたのだと自覚しつつ、頭痛がして耳を塞ぎたくなる。だが、鼻腔をくすぐられる匂いに釣られて目を開いた。


「よく寝てたな。 後で寝れなくなるぞ。 もうじき晩御飯できるから、シャワーして来たらどうだ」


「何時? 寝過ぎて頭痛い」


 泣いたからというのも、もちろんあるだろうが、変な時間に熟睡したせいで、こめかみ付近が締め付けられているように痛み、人差し指でこめかみを力いっぱい押した。


「十九時すぎ。 五時間も寝すぎだ」


 料理をしながら、意地悪く絢翔あやとは笑う。


「だめだ頭痛いよ。 鎮痛剤下さい、絢翔あやとさまー」


 勢いよく枕に顔を埋めて、ぐずっていると、暫くしてチェストを漁る音が聞こえてくる。


「ほら、持ってきたから飲めよ。 最近、鎮痛剤飲み過ぎだ。 物資は限られてるんだから我慢出来るならしないとな」


「……口煩い」


 レイラは口の中で囁いたが聞こえていたようで、思いきり頬を抓られ、声にならない声が漏れた。たぶん赤くなっているだろう。これ以上、絢翔あやとの機嫌を損ねない様にと、水で薬を流し込み、足早にシャワーブースへ向かった。

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